
丸山知事(左から2人目)にガイドブックの完成を報告する勝谷氏(右端)、全旅連の井上会長(右から2人目)、亀岡勇紀専務理事(左端)
「外見から分かりにくい障害」も当事者への取材を通じ対応掲載
島根県旅館ホテル生活衛生同業組合は、同組合オリジナルの障害のある人へのおもてなしガイドブック「やさしさでつなぐおもてなしガイド」をこのほど作成した。視覚障害や肢体不自由など「外見から分かりやすい障害」だけでなく、「外見からは分かりにくい障害」についても、正しい理解と接遇の仕方を当事者や専門家への取材をもとに掲載しているのが特徴だ。同組合の勝谷有史監事(松江しんじ湖温泉・なにわ一水社長)に話を伺った。
――ガイドブックの内容について。
従来のガイドは、視覚障害や肢体不自由など、「外見から分かりやすい障害」のある方への接遇を中心に構成されていた。
今回のガイドでは、これらに加え、嚥下(えんげ)障害や食物アレルギー、内部障害など、「外見からは分かりにくい障害」のある方への接遇も重視している点が特徴だ。
作成に当たっては、地元総合病院の院長や障害に関する専門家、バリアフリーツアーセンターのスタッフ、そして障害のある当事者の方々との座談会やヒアリングを実施した。
当事者からは、「もっとこうしてほしい」「こんなことがあればうれしい」といった要望や、「こんな嫌な経験をした」といった具体的な体験談を聞き、それらをおもてなしガイドに反映させている。
内部障害については、人工ぼうこうや人工肛門の方が入浴する際に必要な配慮、HIVによる免疫機能障害や肝臓機能障害の方への対応など、宿泊施設側が対応に戸惑う可能性のある点についても触れている。医師によると、HIVによる免疫機能障害や肝臓機能障害の方に対しては、通常の接触で感染リスクはなく、正しい知識を持つことが重要である。このガイドを通じて、感染症に対する偏見がなくなることも期待される。
――ガイドをどう周知するか。
2月12日に全旅連の井上善博会長と一緒に島根県の丸山達也知事と、制作に協力いただいた県健康福祉部の関係者を訪問、翌日開催された県組合の例会で完成発表を行った。
冊子として500部を作成し、まず県組合の全施設に配布する。その後データ化し、全旅連のホームページにも掲載して、全国展開を図る予定だ。
――「改正障害者差別解消法」が昨年4月1日に施行され、旅館・ホテルにも障害のある方への「合理的配慮の提供」が義務化された。
どのような対応が適切なのか、経験が少ない施設では判断が難しい場合がある。そのような施設の方々にとって、当事者の声に即したアドバイスを提供できるこのおもてなしガイドは、大いに役立つものと考えている。
丸山知事(左から2人目)にガイドブックの完成を報告する勝谷氏(右端)、全旅連の井上会長(右から2人目)、亀岡勇紀専務理事(左端)