昨年の台風など事例に
全国の外国人向け観光案内所を対象にした研修会が6、7日、東京都内のホテルで開かれた。主催は日本政府観光局(JNTO)。観光庁が定めた指針に基づきJNTOが認定した認定外国人観光案内所から約200人が参加した。東京オリンピック・パラリンピックを控えて、自然災害など非常時の対応などに関する講演が行われた。
JNTO認定の外国人観光案内所は現在1276カ所。機能別の内訳は、多言語対応が可能で全国の情報を提供する態勢を備えた「カテゴリー3」が49カ所、英語対応が可能で広域の案内ができる「カテゴリー2」が315カ所、外国語対応がパートタイムなどで地域の情報を提供する「カテゴリー1」が648カ所。観光案内が専業ではない施設などの「パートナー」が264カ所。
あいさつに立ったJNTOの清野智理事長は「昨年の訪日外国人旅行者数は3188万人で、災害や政治情勢などの影響を受けたが、過去最高となった。これも日本の魅力と同時に、観光案内所の皆さまの献身的な努力によるものだ。認定案内所数はパートナー施設を含めて1500カ所に増やすことを目標にしているが、数と同時に充実した案内ができる中身が大事だ。案内の充実にJNTOも共に取り組んでいきたい」と述べた。
災害時の対応では、観光庁の片山敏宏参事官(外客受入担当)が、2019年10月の台風19号時の事例を紹介した。年中無休で24時間対応のJNTOコールセンター(英、中、韓、日)は10月10~16日の問い合わせが1084件に達した。質問内容は、避難情報や交通機関の状況、宿泊施設の予約変更などに関することが多かったという。
コールセンター以外にも、災害時に外国人への情報提供に役立つツールとして、JNTOの公式観光情報アプリ「Japan Official Travel App」(英・中・韓)、観光庁監修の災害時情報提供アプリ「Safety tips」(11カ国語)、JNTO公式アカウント「@JapanSafeTravel」のツイッター(英語対応)、ウェイボー(中国語対応)、英語チャンネルのNHKワールドJAPANなどを紹介した。
19年の台風15号、19号に関しては、観光案内所2カ所を運営する南房総市観光協会(千葉県)の多田福太朗氏が体験を語った。南房総エリアに大きな被害をもたらした9月の台風15号では、地元の停電が約2週間続いたことで「パソコン、携帯電話、固定電話が使えず、情報から隔離されたことが衝撃的だった」と振り返った。
多田氏自身の自宅、自家用車も損壊し、出勤が困難になったほか、駆け付けた観光案内所もガラスなどが破損した。多田氏は「昨年のJNTO研修会で危機管理の話を聞いたが、自分事になっていなかった。非常時にいかに『いつもの業務』ができるか。平時からの取り組みが大事」と語った。
多田氏は被災体験を通じた外国人観光客などへの災害時対応のポイントに、自家発電機などの設備面の備えに加え、「災害時に必要となる情報の整理」として、ホームページの更新不能に備えてJNTOの情報サイトなどとのリンク▽外国語対応が可能な医療機関のリスト▽外国語による避難所の案内▽自治体などが発信する情報の外国語対応―などを挙げた。
研修会では災害対応のほか、ユニバーサル・ツーリズムやムスリム旅行者、東京オリンピック・パラリンピックへの対応、リピーターやファンを獲得するおもてなしなどをテーマに講演やディスカッションが行われた。
外国人観光案内所を対象にした研修会