10年の訪日外客数、過去最高も目標届かず


 2010年の訪日外客数は、前年比26.8%増の861万2千人で過去最高を記録した。日本政府観光局(JNTO)が1月26日に発表した。前年に低迷した訪日旅行需要を大幅に回復させ、中国からの誘致も拡大したが、政府が07年に閣議決定した観光立国推進基本計画の目標1千万人は達成できなかった。観光庁は未達成の要因について、円高などの市場環境に加え、プロモーションや受け入れ態勢の不十分さを挙げた。

 外客数はビジット・ジャパン・キャンペーン(VJC)を始めた03年から順調に伸びてきたが、08年秋以降の世界的な景気後退で09年は前年の実績を下回り、679万人に落ち込んだ。しかし、10年は韓国などが大幅に回復、中国が過去最高を記録し、08年の835万1千人を上回った。前年比の伸び幅では大阪万博が開催された1970年の40.4%に次ぐ。

 回復は顕著だったが、円高の大幅な進行、尖閣諸島沖での中国漁船の衝突事件などが伸びを鈍化させた。為替レートは、豪州ドルを除く主要通貨に対し円高基調で推移し、欧米やレートに敏感な香港の旅行者に影響した。中国は国内経済の成長や誘致施策の効果で9月まで毎月過去最高を記録したが、尖閣諸島沖の事件を受けて10月からマイナスに転じた。

 10年までの達成目標1千万人には約139万人及ばなかった。観光立国推進基本法の施行に伴い基本計画を閣議決定したのは07年6月だが、VJC開始以降、官民一体で取り組んできた目標だった。観光庁の溝畑宏長官は1月26日の会見で、「国を挙げてインバウンドを促進する機運は高まったが、目標は達成できなかった。結果は真摯に受け止める」と述べた。

 観光庁は、10年に目標を達成できなかった要因を分析した。その結果、主なマイナス要因である大幅な円高の進行や尖閣諸島沖の事件の影響がなかったとしても、1千万人を約90万人下回る可能性があったと指摘した。円高による減少分は、08年から10年にかけて旅行者数が減った国・地域のうち、円に対する通貨の下落が10%以上だった6つの国・地域が全体平均と同じ伸び率だったと仮定して算出すると約33万人。尖閣事件の影響による減少分は、中国人旅行者の1〜9月の伸び率が10月以降も持続したと仮定して算出すると約16万人と見込んだ。残る90万人分は、国際情勢などが原因ではなく、誘致施策の問題と推測した。

 1千万人未達成の要因のうち誘致施策の問題について観光庁は、プロモーション戦略・態勢などの不十分さ、国内受け入れ環境の整備の遅れを挙げた。観光庁はこれらを課題として、マーケティング手法の見直し、関係省庁とのさらなる連携強化による情報発信、地域や事業者と一体の受け入れ態勢整備などを進めるとしている。

 
新聞ご購読のお申し込み

注目のコンテンツ

第38回「にっぽんの温泉100選」発表!(2024年12月16日号発表)

  • 1位草津、2位道後、3位下呂

2024年度「5つ星の宿」発表!(2024年12月16日号発表)

  • 最新の「人気温泉旅館ホテル250選」「5つ星の宿」「5つ星の宿プラチナ」は?

第38回にっぽんの温泉100選「投票理由別ランキング ベスト100」(2025年1月1日号発表)

  • 「雰囲気」「見所・レジャー&体験」「泉質」「郷土料理・ご当地グルメ」の各カテゴリ別ランキング・ベスト100を発表!

2024年度人気温泉旅館ホテル250選「投票理由別ランキング ベスト100」(2025年1月13日号発表)

  • 「料理」「接客」「温泉・浴場」「施設」「雰囲気」のベスト100軒