11月の訪日外客数は前年同月比12.4%増の63万5千人だった。日本政府観光局(JNTO)が12月22日に発表した。総数では13カ月連続の増加となったが、中国、香港からの旅行者が尖閣諸島沖の中国漁船衝突事件の影響を受けて落ち込み、全体の伸びを鈍化させた。
中国は15.9%減の6万9千人。2〜9月は毎月の実績が過去最高を記録したが、9月の漁船衝突事件を経て、10月が1.8%減と9カ月ぶりに減少に転じ、11月はさらに減少幅が拡大した。
中国からの訪日旅行は10月の国慶節休暇以降、申し込みが低調。中国市場の動向について、観光庁の溝畑宏長官は12月22日の記者会見で「12月も同じ状況が続いたとみている。旧正月(2月)でのV字回復を期待したい」と述べた。
香港も2カ月連続の減少で、14.7%減の2万7千人。8月にフィリピンで香港の団体観光客が殺害されるバスジャック事件が起き、海外旅行意欲を減退させた。さらに漁船衝突事件後に「日本で中国人団体観光客を乗せたバスを包囲する妨害行為が発生し、バスジャック事件が覚めやらぬ香港人の間に訪日旅行に対する不安感が広がった」(JNTO)。
韓国は大幅な回復で、51.3%増の19万7千人だった。2010年3月以降、日韓間の航空便が増加しているほか、10月の羽田空港国際化による増便に合わせて、JNTOと日系航空会社で共同広告を展開した効果なども出たとみられる。
台湾は4.8%増の8万9千人。羽田国際化に伴い日台間の航空座席供給量は若干増加したが、一部機材が中国便に割かれ、日本へのチャーター便の機材繰りが難しい状況にあるという。
この他の市場で減少が目立つのは豪州。2カ月連続の減少で、12.1%減の1万5千人だった。航空便の縮小に加え、豪州関係路線への格安航空会社の参入などで航空運賃の割引競争が起き、東南アジア諸国の旅行者誘致の競争が激化。「日本より割安感のある旅行地が選ばれる傾向がみられる」(JNTO)。
ビジット・ジャパン重点15市場のうち、11月として過去最高を記録したのはタイ、シンガポール、マレーシアだった。
訪日外客の総数は1〜11月累計では前年同期比29.2%増の796万3千人。12月の集計を残しているが、観光立国推進基本計画に掲げた年間1千万人に到達しないことは確実。しかし、年間では08年の835万人を更新し、過去最高を記録する見通しだ。
出国日本人は9%の増加に
11月の出国日本人数は、前年同月比8.5%増の138万8千人で、2カ月連続の増加となった。羽田空港の国際化、円高などが海外旅行にプラスに作用したとみられる。
1〜11月累計では前年同期比8.1%増の1531万2千人だった。