政府は15日、2012年度版「観光白書」を公表した。11年の観光の状況として、東日本大震災後の観光の動向を分析。国内旅行では、震災の被害が特に大きかった東北3県(岩手、宮城、福島)の宿泊需要について、復旧・復興関係の需要があったものの、観光を目的とした需要は十分に回復していないと指摘した。東北3県以外にも東日本を中心に宿泊者数が減少したことに触れ、外国人旅行とともに、需要喚起に向けた取り組みの必要性を強調している。
観光白書では、観光庁の宿泊旅行統計調査を基に11年1〜12月の日本人の国内延べ宿泊者数の動向を分析した。
東北3県では、ビジネス客を中心とする業態の宿泊施設に限ってみると、復旧・復興関係者の宿泊、被災者の滞在が影響したとみられ、前年同月に比べて4月が39.0%増、6月が44.2%増となるなど大幅な増加となった。8月以降も20%台の増加で、12月も29.0%増だった。
一方で、東北3県の観光客を中心とする業態の宿泊施設では、震災直後は復旧・復興関係の宿泊需要があったが、被災者の仮設住宅への入居が進んだとみられる夏以降、宿泊者数の低迷が目立った。5月が13.0%増、6月が9.7%増とプラスだったが、7月以降はマイナスに転じ、8月が27.1%減、10月が30.1%減、12月になっても16.5%減だった。
3県以外の東北各県、青森県、秋田県、山形県の動向については、「観光客中心の宿泊施設は、一時的に復旧・復興需要があったと考えられる東北3県(岩手、宮城、福島)に比べ、震災直後から厳しい状況に置かれていた様子がうかがえる」とした。
また、震災の影響が全国に及んだことも記述。「地理的に被災地に近接している関東地方や、ビジネス目的より観光目的が宿泊利用の多くを占めている北海道、沖縄については、震災発生直後に全国平均に比べ宿泊者数が大きく減少している」と指摘した。
観光白書では、訪日外国人旅行者の減少についても合わせて分析した上で、「東北地方には一部に復旧・復興需要は認められるものの、観光需要については十分に回復していないことが分かる」とし、「引き続き、全国的に観光需要を喚起するための取り組みを講じていく必要がある」と強調している。