日本政府観光局(JNTO)が17日に発表した2016年1~12月累計の訪日外国人旅行者数(推計値)は、前年比21・8%増の2403万9千人となり、過去最高を記録した。中国が600万人を突破するなど、主要市場のうちロシアを除く19市場がこれまでの最高値を更新。クルーズ船の寄港増加や航空路線の拡充、査証(ビザ)の要件緩和、継続的なプロモーションなどが訪日旅行需要を喚起した。
訪日外国人旅行者数は、03年のビジット・ジャパン(訪日旅行促進)事業の開始で増え始め、07年には800万人を突破。リーマンショックや東日本大震災で一時落ち込んだが、13年に1千万人を超え、15年には1973万7千人に達していた。
16年の年間値のエリア別構成比は、東アジア(4市場)が前年比0・8ポイント増の72・7%、欧米豪(9市場)が同0・4ポイント減の12・3%、東南アジア・インド(7市場)が同増減なしの11・0%、その他が同0・4ポイント減の4・0%となった。
市場別に見ると、中国は27・6%増の637万3千人だった。外国人旅行者数全体の26・5%を占める最大の訪日市場。個人旅行、クルーズ旅行の需要の高まりなどで、すべての月で過去最高を記録した。
韓国は27・2%増の509万人。外国旅行者数の増加傾向やLCC(格安航空会社)の就航などが増加要因。韓国は九州旅行の需要が高く、熊本地震の影響を受けたが、集中的なプロモーションにより回復が進んだ。
台湾は13・3%増の416万7千人。夏ごろまでは順調に推移したが、円高基調やトランスアジア(復興)航空の解散、他の旅行先との競合がマイナス要因。7月以降の伸び率は9月を除き1桁台だった。
香港は20・7%増の183万9千人。リピーターの割合が高い市場のため、四国地方、中国地方の重点的なプロモーションを展開。岡山、高松などに航空路線が就航するなど、旅行者の地方分散に貢献したとみられる。
東南アジアで最大市場のタイは、前国王の崩御(10月)が旅行需要に影響したとみられるが、13・1%増の90万1千人だった。東南アジアの他の市場は、マレーシアが29・1%増の39万4千人、シンガポールが17・2%増の36万2千人、フィリピンが29・6%増の34万8千人など。
欧米豪の各市場もロシアを除き、2桁の伸び率で堅調だった。米国は、各種メディアで日本の露出が増加したことなどで20・3%増の124万3千人。豪州は18・4%増の44万5千人。英国は13・2%増の29万3千人、フランスは18・3%増の25万3千人。フランスは、15年11月にパリ市内で発生したテロなどの影響が懸念されたが、春、夏を中心に好調に推移した。
また、訪日外国人旅行者のうちクルーズ船での旅行者数については、JNTOの統計では公表されていないが、別の統計として国土交通省港湾局が17日に発表した、16年にクルーズ船で入国した外国人旅客数(速報値・概数)は、前年比78・5増の199万2千人だった。