日本政府観光局(JNTO)が16日に発表した2018年の訪日外国人旅行者数(推計値)は、前年比8.7%増の3119万2千人で過去最高を記録した。日本国内で相次いだ地震、豪雨、台風などの自然災害が東アジアの旅行需要に影響したが、中国が800万人を突破したほか、欧米豪、東南アジアの各エリア累計の伸び率が2桁に達した。欧米豪向けの新たな誘客キャンペーンを含めた訪日プロモーション、アジアを中心とした航空路線の拡充などが訪日需要を喚起した。
政府が訪日旅行の重点市場に定めている20カ国・地域では、香港以外の19カ国・地域が過去最高を更新した。
中国は13.9%増の838万人。全ての国・地域を通じて初めて年間の訪日数で800万人を超えた。自然災害の影響は限定的で、台風被害による関西空港閉鎖の影響を受けた9月を除く各月で過去最高を記録した。
中国市場に対してJNTOは、「FIT化(個人旅行化)が進んでいることから、個々のニーズに沿った多様な日本の魅力を『深度游』(個別テーマ性のある旅行)キャンペーンの実施やインフルエンサーの活用を通じて発信」するとともに、地方都市や内陸都市の旅行会社への訪日商品の造成を支援した。
韓国は5.6%増の753万9千人。外国旅行の需要増加やLCC(格安航空会社)の相次ぐ就航がプラス要因。地震や台風などの自然災害で7~11月は前年同月を下回ったが、12月には前年同月並みに回復。プロモーションではSNSを活用した情報発信で地方誘客を強化した。
台湾は4.2%増の475万7千人。自然災害などで9~11月は前年同月を下回ったが、12月には上回った。航空会社との共同広告で新規就航などを支援するとともに、アウトドアなどの魅力発信でリピーター層の地方分散化に力を入れた。
香港は1.1%減の220万8千人。9月が2割減となるなど、18年後半は自然災害の影響を受けた。ただ、12月は前年同月並みに回復。プロモーションではリラックスや癒やしなどをテーマに地方の魅力を発信した。
欧米豪に向けては、18年2月に観光庁とJNTOが「Enjoy myJapan」グローバルキャンペーンを開始し、日本を旅行先として認知していない層を対象にウェブでの情報発信やデジタル広告、テレビ広告を強化。欧米豪の重点市場9カ国のうち英国、カナダ以外は、2桁の伸び率を記録した。
米国は11.0%増の152万7千人で全ての月で最高値を更新した。豪州は11.6%増の55万2千人で、航空路線の拡充などによって年間で初めて50万人を超えた。英国は7.6%増の33万4千人、フランスは13.5%増の30万5千人、ドイツは10.1%増の21万5千人だった。
JNTOの現地事務所が16年12月~17年3月に開設され、誘客が強化された欧州の3カ国では、イタリアが19.2%増の15万人、スペインが19.1%増の11万9千人、ロシアが22.7%増の9万5千人と増加した。
東南アジアでは、タイが14.7%増の113万2千人。航空路線の新規就航や増便が相次ぎ、東南アジアの市場で初めて年間100万人を突破した。17年2~3月にJNTOの現地事務所が開設された3カ国では、マレーシアが6.5%増の46万8千人、ベトナムが26.0%増の38万9千人、インドが14.7%増の15万4千人。18年10月にJNTO現地事務所が開設されたフィリピンは、航空路線の拡充などで18.8%増の50万4千人となった。
欧米豪が12%増 東南ア14%増に 訪日客のエリア別
18年の訪日外国人旅行者数を重点市場のエリア別に見ると、東アジア(中国、韓国、台湾、香港)の合計が前年比7.5%増の2288万4千人だった。欧米豪(豪州、米国、カナダ、英国、フランス、ドイツ、イタリア、ロシア、スペイン)の合計は同11.5%増の362万7千人。東南アジア・インド(タイ、シンガポール、マレーシア、インドネシア、フィリピン、ベトナム、インド)の合計は同14.1%増の348万2千人。
エリア別構成比は、東アジアが前年比0.8ポイント下降の73.4%、欧米豪が同0.3ポイント上昇の11.6%、東南アジア・インドが同0.6ポイント上昇の11.2%だった。