2023年10月の業況DI 物価高とコスト増の継続で悪化、先行きも厳しさ続く


 日本商工会議所が毎月公表している早期景気観測(LOBO調査)によると、10月の業況DIは全産業で▲10.5となり前月に比べ1.5ポイント悪化した。エネルギー価格の高騰や最低賃金の上昇等でコスト増が継続する中、これに見合った十分な価格転嫁が行えていない。また、深刻な人手不足に加え、インボイス制度等の諸課題への対応も重なり、中小企業の業況は悪化に転じた。地域別では九州のみが改善し、横ばいは北海道、東北、関東、関西でそれ以外の4地域は悪化した。

 

全産業合計の業況DIは、▲10.5(前月比▲1.5ポイント)
小売業は、物価高で買い控えが続く中、人手不足に伴う人件費の増加等で悪化した。サービス業は、物価高による生活関連サービスの需要停滞で横ばい圏内で留まり、卸売業は、小売・サービス業からの引き合い減少でほぼ横ばいとなった。製造業は、自動車関連が好調な一方、エネルギー価格の高騰によるコスト増が全体を押し下げ、建設業は、公共工事の受注増で改善を示すも力強さを欠いている。【記事提供:ニッキン】

 

先行き見通しDIは、▲14.6(今月比▲4.1ポイント)
インバウンドを含む観光需要拡大への期待感が伺える一方、長引く物価高による一層の買い控えが懸念される。また、最低賃金を含む人件費の増加や円安の伸長等で収益圧迫が続く中、中東情勢の緊迫でさらなるコスト増が危惧される。十分な価格転嫁も行えていない中、働き方改革を含む深刻な人手不足への対応など企業経営の足かせは多く、中小企業の先行きは厳しい状況が続く。

 

 

<トピック>コスト増加分の価格転嫁の動向①
発注側企業との「価格協議の動向」について、「協議を申し込み、話し合いに応じてもらえた」は65.4%、「コスト上昇分の反映の協議を申し込まれた」は9.0%、合計で「協議できている」企業は74.4%と、過去最高を記録した2023年4月調査の78.2%から3.8ポイント減少しているものの、依然7割超と高水準。

 

 「価格協議の動向」を業種別にみると、製造業と卸売業は8割超と高水準だが、小売業とサービス業は6割台にとどまる。また、従業員規模別にみると、従業員10人未満の小規模企業で7割を下回る。

 

 コスト増加分の「価格転嫁の動向」について、「4割以上の価格転嫁」が実施できた企業は55.3%と、2023年4月調査の55.9%から0.6ポイント減少。高騰が続くコストに対して価格転嫁のモメンタムは一定維持されているが、進捗は足踏み。

 

 「価格転嫁の動向」を業種別にみると、卸売業は「4割以上の価格転嫁」が実施できた企業が7割超と高水準だが、サービス業は約3割と低水準。また、従業員規模別にみると、従業員10人未満の小規模企業で平均を下回る。

中小企業の声
 取引先と協議を行っているが、コスト全ての転嫁は難しい。仕入れロットを増やし、単価を下げることでコスト削減を図っているが、在庫過多など別の問題が発生。(白河紙製容器製造業)

 

 価格協議で理解を得られやすいものは原材料価格の上昇、エネルギーコストは理解を得られても企業努力を求められる。ましてや、労務費は困難で、取引打ち切りを覚悟のうえで協議するしかないのが現状。(習志野医薬品製造業)

 

 転注への懸念等から、原材料・エネルギー価格の継続的な上昇を、都度、取引先と協議するのは難しく、年に一度が限界。価格転嫁に時間を要してしまう。(小田原箱根製材木製品製造業)

 

<トピック>コスト増加分の価格転嫁の動向②
コスト増加分のうち労務費増加分の「価格転嫁の動向」について、「4割以上の価格転嫁」が実施できた企業は34.7%と、「コスト全体(前頁参照)」の55.3%を大幅に下回る。また、労務費増加分を全く価格転嫁できていない「0割」の企業も26.7%と3割に迫る。

 

 労務費増加分の「価格転嫁の動向」を業種別にみると、建設業は「4割以上の価格転嫁」が実施できた企業が5割に迫るなど他業種と比較して高水準だが、サービス業は24.4%と3割を下回る。また、従業員規模別にみると、従業員10人未満が最も低水準。

 

 「価格協議を行うにあたり希望する支援策」は、「自社にて対応可能なため支援策は必要ない」が34.1%と最も多いが、「価格協議が実施できていない」企業では約2割まで減少。次に、「労務費の価格転嫁のためのガイドライン」が3割を超え、価格協議が実施できていない企業では4割に迫る。

 

 価格協議の実施有無で「価格転嫁の動向」に大きな格差があり、「協議できている」企業では「4割以上の価格転嫁」が実施できた企業が7割を超えるが、「協議できていない」企業では3割を下回る。

中小企業の声
 エネルギー価格上昇は価格に転嫁しやすいが、労務費、特に賃金上昇を価格に転嫁するのは業界として課題。既存契約の月単価や時間単価を協議することになるが、難色を示す取引先が多い。一方的に仕事を受注するだけの体質から、自ら仕事を創る体質に変化する必要があると感じる。(須賀川情報サービス業)

 

 他メーカーの商材で標準価格があるものは、価格転嫁が比較的容易だが、自社製品には標準価格がなく、長期間価格改定を行っていなかった上に、原材料・エネルギー価格の継続的高騰で、適正な原価計算が難しい状況。(柏輸送用機械器具製造業)

【記事提供:ニッキン

 

 

 

 
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