今年3月の訪日外国人旅行者数は、前年同月比9・8%増の220万6千人となった。3月として過去最高、月間で過去3番目の実績だったが、伸び率は2カ月連続で1桁だった。中国、台湾は他の旅行先との競合が影響した可能性もあり、ともに伸び率が1桁にとどまった。欧州や豪州はイースター休暇の時期の移動が3月にはマイナスに働いた。一方で韓国、米国などは好調だった。
日本政府観光局(JNTO)が4月19日に発表した推計値。政府のビジット・ジャパン(訪日旅行促進)事業の重点市場では、フィリピン、豪州、英国、スペインを除く16市場が3月として過去最高。このうち米国は月間の最高値を記録した。
中国は3月として過去最高だったが、50万9千人で伸び率は2・2%増。伸び悩んだ要因の一つとしてJNTOは「欧州や北米、豪州などへ向かう一部航空券の価格が大きく下がり、特に欧州向けツアーと日本向けツアーとの価格差が縮まった」ことを挙げた。
中国の伸び率が鈍化した要因について観光庁の田村明比古長官は、専門紙向け会見で、「欧州向けツアーとの競合が影響していることに加え、中国のアウトバウンド自体も一時期に比べると大幅には伸びていない。パイが限られる中でデスティネーション間の競争も激しくなっている」と指摘した。
台湾は33万9900人で伸び率が3・5%増。復興(トランスアジア)航空の解散、航空機材の小型化などが影響したほか、JNTOは「直近までの台湾のアウトバウンドは他のアジア諸国などへの渡航者数が伸びている状況もあり、動向を注視する必要がある」と指摘した。
昨年3月だったイースター休暇は、今年は4月だったため、キリスト教文化圏の旅行需要に影響。豪州が4・2%減の4万人、英国が9・6%減の3万1400人だったほか、フィリピンもホーリーウイーク(聖週間)を含む連休の移動が影響し、7・0%減の3万4900人だった。
一方で韓国は30・6%増の48万8400人となった。航空座席の供給量増加や九州の魅力を訴求するプロモーションの効果などで高い伸びを示した。月間で過去最高を記録した米国は、各種メディアでの日本の露出増加などで旅行需要が喚起されたとみられ、12・6%増の13万900人だった。
伸び率の高さでは東南アジアが目立った。インドネシアが34・5%増で3万6千人、ベトナムが31・8%増で3万600人、マレーシアが14・3%増で4万3700人などだった。
1~3月累計では前年同期比13・6%増の653万7千人となった。3カ月連続で200万人を超えるなど高水準ではあるが、2、3月はそれぞれ旧正月、イースターの休暇時期の移動の影響もあり、伸び率は1桁だった。台湾の伸び率が昨年夏ごろから鈍っているほか、3月に入って中国の伸び率が1桁にとどまる結果となった。訪日市場の成長の局面に変化もみられる。
訪日旅行の現状について観光庁の田村長官は「2020年の目標(訪日外国人旅行者数4千万人)に向けて今年は正念場。勢いで伸びてきたこれまでと違い、努力して取りにいかなければならないステージに来ている。こうした状況を見越して『明日の日本を支える観光ビジョン』(政府の観光施策の中長期構想)は策定されている。ビジョンに盛り込まれた施策を着実に実施していきたい」と述べた。