日本政府観光局(JNTO)が19日に発表した5月の訪日外客数(推計値)は、中国を除く東アジア、東南アジアが好調だったほか、欧米豪の主な市場も2ケタの増加率を示し、前年同月比31.2%増の87万5千人となった。5月としては過去最高。円高の緩和や航空座席の供給量拡大、国や地方のプロモーションなどが訪日旅行の需要を喚起した。
5月としては08年の73万6千人を上回り、初めて80万人台にのせた。市場別では、台湾、香港、タイ、シンガポール、マレーシア、インドネシア、ベトナム、米国、ロシア、インドが5月の過去最高を記録した。
東アジアでは、韓国が前年同月比45.5%増の22万9千人、台湾が同61.7%増の19万6千人、香港が同82.2%増の5万9千人と好調。JNTOは、台湾の動向として「北海道や沖縄への新規就航が示すように、地方への旅行の人気を背景に、高い需要が継続」と指摘。円高の緩和で台湾、香港ではショッピングを目的とした旅行も人気になっている。
一方で中国は同27.2%減の8万2千人。日中関係の冷え込みで引き続き団体観光客が低調。ただ、観光庁やJNTOではプロモーションを継続的に実施している。「運休していた一部の路線で運航再開が検討されており、こうした機会を捉え、プロモーションを強化する」(JNTO)。
東南アジアは、タイが同67.8%増の4万人、シンガポールが同24.5%増の1万6千人、マレーシアが同17.8%増の1万5千人など。タイに対しては、国だけでなく、地方自治体が積極的な誘客事業を展開し、現地メディアで訪日旅行が取り上げられる機会も増えているという。
欧米豪の市場は、米国が同13.5%増の7万4千人、豪州が同21.8%増の1万6千人、英国が同14.0%増の1万5千人、フランスが同29.3%増の1万3千人など。原発事故に伴う放射能汚染への懸念も薄れつつある。
訪日外客数の今年1〜5月累計は405万4千人となり、前年の同じ期間に比べて20.9%増加した。このまま前年に対して20%以上の伸びを継続できれば、政府が今年の目標に掲げる1千万人に到達する。
東南ア向けビザ 7月中に緩和へ
政府は1千万人を確実にしようと、東南アジアの5カ国を対象に訪日観光の査証(ビザ)を緩和する。観光庁の井手憲文長官は20日の定例会見で、「7月中に緩和を実施できるメドが立った」と明らかにした。
緩和の内容は、(1)タイとマレーシアはビザを免除する(現在は両国ともに数次ビザ)(2)ベトナム、フィリピンに数次ビザを発給する(現在は両国ともに1次ビザ)(3)インドネシアには数次ビザの滞在期間を延長する(現在は滞在期間が15日)。
観光庁では、ビザ緩和の対象国にシンガポールを加えた6カ国の訪日旅行者数を前年比約3割増の100万人にするため、プロモーションを強化している。
日本がビザの免除を予定する両国の2012年の訪日旅行者数は、タイが26万1千人、マレーシアが13万人。一方で韓国は両国に対し1980年代前半にビザの免除を実施しており、12年の訪韓旅行者数はタイが38万7千人、マレーシアが17万8千人。観光庁の井手長官は「ビザだけが要因ではないが、韓国には日本の1.5倍の旅行者が訪れている」と述べ、ビザ緩和の効果に期待した。