5月の訪日外客数は東日本大震災の影響を受け、前年同月比50.4%減の35万8千人となった。日本政府観光局(JNTO)が16日に推計値として発表した。各国の渡航自粛勧告などが被災地を除いて緩和され、アジアを中心に訪日観光ツアーが再開されたことで、減少幅は4月の62.5%減からは縮小した。しかし、原発事故への不安感などで大幅な回復とはならなかった。
訪日団体ツアーは4月以降、韓国、中国、台湾、香港をはじめタイ、シンガポール、カナダ、英国、マレーシアで再開されている。ただ、原発事故への懸念もあり、ツアー料金を割安にして集客に努めているケースもみられる。
5月の韓国は58.3%減の8万4100人。旅行商品では九州などに向かうツアーを通常の半額程度で販売する例もある。フェリー利用による九州3泊4日のツアーが7万9千ウォン(5928円相当)という激安商品もあるという。
中国は47.8%減の5万8700人。4月29日に渡航自粛勧告が緩和されたことを受け、被災地などを除き各地への訪日団体ツアーが再開された。大手旅行会社も5月上旬以降、訪日ツアーの広告を再開するようになった。ただ、韓国と同様にツアー料金は震災前の半額程度という。
台湾は40.4%減の6万8千人、香港は71.6%減の1万1600人だった。香港の減少幅が大きいのは、もともと他国に比べてビジネス目的の旅行者の割合が低く、不要不急の観光旅行が控えられた影響が大きいとみられる。
このほか米国が37.8%減の4万800人、フランスが56.9%減の5900人、ドイツが59.8%減の4400人など。特に欧州では、原発事故に対する不安感が大きく影響している。
JNTOの間宮忠敏理事長は17日の記者会見で「訪日客は戻り始めたという感触を得ている。原発事故の収束は不透明であり、震災前の状態に戻すには年単位で考える必要があるが、市場によっては回復のスピードが上がると予測している」との見通しを示した。
また、間宮理事長は「特に韓国、中国の大幅な回復が待たれる」とも述べ、5月下旬に東京で開かれた日中韓首脳会合が広く報道された効果や、7月から中国向けに発給される数次個人観光査証(ビザ)の効果などに期待した。