日本政府観光局(JNTO)が19日に発表した今年9月の訪日外客数(推計値)は66万1千人となり、前年同月に比べて22.6%増加した。東日本大震災や原発事故の発生前の水準である前々年同月との比較では8.0%の減少。震災の影響から回復し好調に推移していた中国からの訪日客数は、尖閣諸島をめぐる問題で落ち込み、前々年同月に比べて約1割の減少となった。
9月の外客数は、震災からの回復が足踏み状態であることに加え、中国からの訪日客の減少で、9月としては2010年の71万8千人、07年の68万9千人に次ぎ、過去3番目の実績だった。1〜9月の累計は632万9千人で前年同期比41.3%増、前々年同期比4.1%減。9月までの累計で11年の年間外客数621万9千人を上回った。
市場別にみると、中国が前々年同月比10.1%減の12万4千人だった。日本が尖閣諸島を国有化した9月11日以降、団体客を中心に訪日旅行のキャンセルが相次ぎ、新規予約が減少した。ただ、個人旅行についてJNTOは、個人観光ビザの発給要件緩和などの効果で「比較的堅調に推移している」と指摘する。
中国は、中秋節の9月30日から10月7日までが今年の国慶節の大型休暇。春節(旧正月)に次ぐ旅行シーズンだが、日中関係が改善していないことから、10月の訪日客数はさらに落ち込みが大きいと予想される。
韓国は同24.9%減の14万6千人だった。竹島をめぐる問題の影響の以前に、放射能汚染への不安、円高による旅行費用の割高感が根強い。秋夕(旧盆)休暇の曜日配列の悪さ、台風なども影響した。台湾は同13.4%増の11万7千人と引き続き順調。香港は同6.9%増の3万6千人で、大型休暇の旅行需要が増加したとみられる。
欧米豪の各市場は円高、または放射能への不安などがマイナス要因となっている。米国が同3.4%減の5万5千人、豪州が同17.9%減の1万9千人、英国が同9.9%減の1万4千人、フランスが同5.0%減の1万1千人など。
9月として過去最高を記録したのは、タイ、マレーシア、ベトナム、インド。タイが同47.1%増の1万9千人、マレーシアが同4.1%増の9千人、ベトナムが同48.9%増の6千人、インドが同16.8%増の6千人だった。
一方で9月の出国日本人数は、前年同月比0.7%減の162万5千人。1〜9月累計では前年同期比13.1%増の1415万3千人となった。