観光庁は、Go Toトラベル事業の全国停止に伴い、都道府県を対象にした地域観光事業支援を強化している。「県民割」など域内旅行の割引事業への支援では、19日時点で13県に補助金の交付を決定。新型コロナウイルスの感染拡大で県民割事業の実施が難しい地域もあるため、前売り宿泊券・旅行券事業、宿泊施設の感染防止対策への支援も実施する。ゴールデンウイーク(GW)の実績も厳しい見方があることから、観光事業者の経営や雇用を維持する施策の継続なども関係省庁に働き掛けていく。
地域観光事業支援のうち、域内旅行の割引支援に約3千億円を充てる。これまでに22県から交付申請があり、岩手、秋田、栃木、富山、山梨、静岡、島根、山口、高知、長崎、大分、宮崎、鹿児島の13県に補助金の交付が決定した。
割引支援は、8月31日までの予約・販売を条件に12月31日宿泊分までの旅行を対象に補助する。また、感染拡大時に旅行申込者のキャンセル料負担を解消し、事業者に一定額を補填(ほてん)する仕組みも、国のGo Toトラベル事業と同様に実施することを都道府県に認める。
観光庁の蒲生篤実長官は19日の会見で「一定のルールはあるが、都道府県からの要望を受け、地域の実情を踏まえた弾力的な運用ができるようにした。感染状況などに応じて臨機応変に取り組んでもらえる」と述べた。
域内旅行の割引支援は、感染状況がステージ2相当以下であることが条件。感染者数の増加で割引事業の一時停止を強いられる地域が出るなど、感染状況が悪化している都道府県では、観光事業者に国の支援策が届かない。このため複数の都道府県から要望があった前売り宿泊・旅行券への支援も実施する。
感染が落ち着いた後に使える前売り宿泊・旅行券は、宿泊施設や旅行会社が割引価格などで販売。割引分に国の補助金が使える。消費者は前売り券の購入を通じ、代金の一部を前払いする。「人を動かすのは先だが、お金を動かし、宿泊施設、旅行業者にキャッシュを入れることができる」(蒲生長官)。17日時点で12県が実施予定または実施を検討中という。
地域観光事業支援では、都道府県に予算を配分する形で、宿泊事業者の感染防止対策についても支援を行う。予算額は約1千億円。一定の要件を満たした対策については、宿泊事業者が既に支払い済みの費用も補助対象とすることから、当面の経営支援を念頭にした運用も可能という。
ただ、緊急事態宣言の発令やまん延防止等重点措置の適用など、収束が見通せない感染状況を受けて、観光関連事業者の経営は厳しい。Go Toトラベル参加事業者へのアンケートの結果、5月の予約状況が19年同月比で70%以上減少した事業者の割合は、宿泊業で全体の約5割、旅行業では約8割だった。
蒲生長官は「書き入れ時のGWに緊急事態宣言が発令されたのは2年連続で、事業者は非常に厳しい。これまでに雇用調整助成金、無利子・無担保融資などの支援策の拡充、利用の促進に取り組んできたが、Go Toトラベル参加事業者への調査結果などを基に、雇用調整助成金の特例措置の延長などを働きかけていきたい」と述べた。
観光庁の蒲生長官