【テツ旅、バス旅 46】バスEMS 鎌倉 淳


 日本国内で電気バスに乗る機会は、あまりありません。電気バスの普及が進まない理由はいくつかありますが、最大の課題は航続距離と蓄電池でしょう。

 安定したバスの運行には一定の航続距離が必要ですが、そのためには大容量の蓄電池を搭載しなければならず、車両価格が高くなります。蓄電池の寿命の問題なども考慮すれば、ライフサイクルコストはさらに高くなってしまいます。

 この課題を克服する取り組みが始まります。みちのりホールディングスが、電気バス向けエネルギーマネジメントシステム(バス EMS)を開発し、傘下の関東自動車などで実証運行を開始するのです。

 システムの特徴は、日中時間帯の運行の合間に継ぎ足し充電をすることです。これまでの電気バスは、主に夜間に大量充電していましたが、継ぎ足し充電をすることで、必要最小限の充電で済みます。その結果、大容量の蓄電池が不要になり、車両コストが抑えられます。

 充電には、再生可能エネルギーも使います。再エネは昼間に出力のピークを迎え、電力が余剰となりやすいという課題がありますが、電気バスが昼間に充電すれば活用できます。バスを「調整電源」と位置づけ、地域の再エネ利用を促進するわけです。

 こうした仕組みを制御するのがバスEMSで、バスの運行管理と充電管理を同時に行います。エネルギーの需給を見ながらバスの運行を管理し、充電タイミングを自動制御するという、画期的な仕組みです。

 導入する車両は国産のフルフラット車。プロジェクトは東京電力と合同で行います。2024年までに10台程度の電気バスを導入して開発をスタートし、2030年までに関東バスの宇都宮市内の路線をほぼ全て電気バスに入れ替える計画です。同グループの茨城交通や福島交通の一部営業所でも同じ取り組みを行います。最終的には、バスEMSを国内外に広く普及させるのが目標です。

 この取り組みが功を奏せば、日本国内でも、電気バスが広まる可能性がありそうです。

 個人的な希望を言えば、電気バスは静かなので、夜行バスに導入してほしい気もします。しかし、航続距離と充電時間の問題から、長距離路線に電気バスを導入するのは難しく、こちらは当面、ガソリン車が続きそう。将来的に、燃料電池バスの普及に期待したいところです。

 (旅行総合研究所タビリス代表) 

 
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