昨今、富裕層をもっと呼んでいこうという流れが加速している。
富裕層旅行の世界的なネットワーク組織ヴァーチュオソによると、富裕層の旅行予約件数が2023年には、19年比で既に152%増で推移しているという。ラグジュアリーマーケットにおける大きな動きは今後も続きそうであると見られている。全体的に活況が続いており、ホテルの予約は19年比で235%増加しており、平均客室単価が過去最高値を更新しているところもあるという。客室単価は上昇し続ける可能性があり、19年比で83%増加する見込みもあるようだ。
また、1人当たりの旅行予算は4万8千ドル(約653万円)と推定され、世帯収入の上位5%程度にあたるこれらの富裕層の動きにはまだまだ注目が必要である。
視点を変えて国内で考えると、野村総合研究所が先日発表した「2021年の日本における純金融資産保有額別の世帯数と資産規模」に注目したい。世帯ごとに保有する金融資産の合計額から不動産購入に伴う借り入れなどの負債を差し引いた「純金融資産保有額」が5億円以上の「超富裕層」は9・0万世帯(全体の0・16%)、1億円以上5億円未満の「富裕層」は139・5万世帯(同2・5%)、5千万円以上1億円未満の「準富裕層」は325・4万世帯(同6・0%)、3千万円以上5千万円未満の「アッパーマス層」は726・3万世帯(同13・4%)、3千万円未満の「マス層」は4213・2万世帯(同77・8%)という数字が出ている。
「超富裕層」「富裕層」の世帯数および純金融資産保有総額は13年以降一貫して増加し続けており、二つのカテゴリーの合計値は、05年86・5万世帯・213兆円から21年は148・5万世帯・364兆円に上昇している。
これらの動向を日本の観光マーケットにおいて考えると、観光庁が進めている地域一体の高付加価値化事業や観光再始動、インバウンド商品造成事業などにおいて、23年度に展開される事業でも富裕層向けのラインアップが充実している。これらにしっかりと対応すれば、さらに多くの富裕層を呼べる可能性も高まるだろう。世界の富裕層が続々と世界各所を動き回る中で、われわれがどの程度その需要に対応できるかが問われている。
コロナ禍の3年間において、これまで海外に出向いていた層が日本国内にも魅力的な場所があることを認識してくれた流れを継続的に展開することがカギとなるだろう。その際、単に富裕層というくくりで捉えるのではなく、それぞれに異なる趣味嗜好を持っており、なぜ日本、そして皆さんの地域を選んだのかを理解する必要がある。
また、他にはない相対的、絶対的な価値がどのようなものなのか定義を明確にして、昨今のサステナブルツーリズムに対応したストーリーや受け入れ体制を整えることでより高い満足度を提供し、継続的な受け入れが実現されることを望んでいる。
(地域ブランディング研究所代表取締役)