前回登場したラタトゥイユに欠かせないのが、パプリカ。フランス語でポワヴロンだが、poivronを辞書で引くと、「ピーマン」となっている。ナゼだろう?
そもそもピーマンは、ナス科トウガラシ属の果菜。トウガラシを品種改良して辛みをなくし、果実を大きくしたモノだそう。その語源は諸説あるが、フランス語で唐辛子を意味する「piment」に由来するという説が有力。元は唐辛子なのだ。他の国ではピーマンを何と呼ぶのか? 英語圏ではsweet pepperやbell pepperで、やはりpepperつまり唐辛子の名が入る。
赤ピーマンと赤パプリカの違いは? トウガラシ属の場合、タカノツメやシシトウは小果種、ピーマンが中果種で、パプリカは大果種に分類されるそうだ。同じ中果種のピーマンと赤ピーマンの違いは、熟す前が緑のピーマンで、完熟したモノが赤ピーマンだ。緑のピーマンは開花後25日前後の未熟果を収穫するが、赤ピーマンは開花後60日程度経過した完熟果を収穫するという。収穫まで日数がかかる上、完熟状態ゆえ日持ちしないため、流通量が少ないらしい。
パプリカもまた、完熟させている。だから糖度が高く、青臭くないのだ。ピーマンは1個あたり30~40グラム程度の重さで、厚みが2~3ミリ程度なのに対し、パプリカは1個あたり100~200グラム程度の重さで、厚みが5~10ミリ程度とかなり肉厚。ジューシーなのも、この厚みのおかげ。だが、これだけ大きな果実を完熟するまで枝に付けておくには、長い時間と高い技術が必要だ。価格が高くなるのもナットクである。
そんなパプリカ、赤と黄色で栄養成分も異なる。赤パプリカをピーマンと比較すると、100グラムあたりのビタミンC含有量は、ピーマン76ミリグラムに対して、赤パプリカが170ミリグラム。β―カロテンもピーマン400マイクログラムに対して赤パプリカは1100マイクログラムと豊富だ。赤い色素カプサンチンによるもので、抗酸化作用で活性酸素を除去し、老化防止効果や免疫力アップが期待できる。
一方黄パプリカは、強い抗酸化作用があるα―カロテンが100グラムあたり71マイクログラム含まれている。ピーマンは6マイクログラム、赤パプリカはゼロというから断トツだ。また、ブルーライトや紫外線から目を保護し、視力の維持に役立つとされる、ゼアキサンチンというカロテノイドが豊富なのが特徴。
実はハンガリー生まれのパプリカ、同国の学者によってパプリカからビタミンCが発見され、発見者はノーベル賞を受賞したそうだ。パプリカパウダーを使ったハンガリー料理も多い。日本には1993年にオランダから初上陸。近年国産も増え、血圧低下効果のあるGABAが含まれる機能性表示食品まで現れた。スゴイぞパプリカ!
生だとフルーティー、加熱すると甘みが増す。パプリカのビタミンCは比較的熱に強く、油で調理するとカロテンの吸収率が上がるから、サッと炒めても。彩りだけじゃない、パプリカ。たくさん食べたいな♪
※宿泊料飲施設ジャーナリスト。数多くの取材経験を生かし、旅館・ホテル、レストランのプロデュースやメニュー開発、ホスピタリティ研修なども手掛ける。