地方銀行などの地域金融機関が、アニメ産業の下支えで期待を集めている。国内外需要が3兆円規模に膨らみ、根幹となる制作スタジオへの支援が求められているためだ。制作本数の増加に伴い受注は好調な一方、人件費や設備投資などが経営の重荷となっている。専門家は「融資だけでなく、補助金申請に必要な書類作成支援や、デジタルトランスフォーメーション(DX)化による効率化支援も必要」と指摘する。
アニメ制作スタジオは、作品のシナリオやデザインのほか、原画、撮影などを担う。日本動画協会の調査では国内には2020年時点で811社。このうち692社が東京都内にある。ただ近年は、地方へ分散する傾向があるという。【記事提供:ニッキン】
背景には、アニメーターなど制作現場の人手不足がある。経験年数が高まるほど、離職する傾向があるためだ。要因として賃金が挙げられる。日本総合研究所によれば、アニメーターなどの時給の中央値は約1300円で、全産業平均の約2400円と比較して低水準にある。賃金の引き上げが喫緊の課題だが、懐事情は厳しい。
「制作スタジオがアニメ作品の知的財産(IP)を保有できていない」。日本総研の安井洋輔主任研究員は理由をこう指摘する。作品のIPは、一般的にビデオ・グッズメーカーやテレビ局などの出資者で構成する「製作委員会」が共同保有している。そのため、制作スタジオは製作委員会からの委託制作費が収入源となる。資金力が高まればIPを共同保有し関連収入を得られるが、現状では難しいという。
政府は、制作スタジオに対する補助金を用意しているが、認知度は低い。また制作スタジオの経営者はアニメーターなどを経た職人気質が多く、バックオフィス業務が弱いという指摘もある。安井氏は、こうした課題の解決支援を地域金融機関に期待。「アニメの舞台となったエリアは訪日観光客も呼び込めるため、地域創生の観点からも重要」と提言する。
地域金融関係者は「アニメ産業が注目されていることは理解しているが、実態がつかめておらず(融資)実績はほぼない」として、取り組みはこれからだという。
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