【テツ旅、バス旅 94】伊豆長岡三津シーパラ線 鎌倉 淳


 静岡県沼津市の伊豆三津シーパラダイスは、伊豆箱根鉄道系列の水族館。伊豆長岡駅から「伊豆長岡三津シーパラ線」というバスが出ています。

 息子を連れて、週末に東京から日帰りで訪れてみました。新幹線で三島駅まで40分。駿豆線に乗り換えて15分。伊豆長岡駅で降りるとバスが停まっていて、待つほどもなく出発しました。30分ほど乗ると、終点シーパラダイス。東京から約2時間、スムーズに伊豆の水族館に着けました。

 仮にクルマで出かけたらどうでしょう。順調なら2時間ほどで着けるのは同じですが、週末は高速道路が渋滞します。混んだ道を片道3時間、往復6時間くらいは覚悟しなければならず、子連れで日帰りする気にはなれません。

 そう考えると、地方であっても、観光地の鉄道・バスのアクセスは重要と吹聴したくなります。しかし、現実をみると、その日、伊豆長岡駅から乗ったバスの客のうち、シーパラダイスで降りたのは5、6人。一方、施設の駐車場は混雑していて、観光客の大多数はクルマ利用であることが察せられます。

 シーパラダイスは鉄道会社系列が運営していますので、地方にしては公共交通でアクセスしやすい施設です。それでもクルマの利用が圧倒的なので、鉄道やバスで観光する人がわずかであることを痛感します。

 このバス路線は「地域間幹線系統」といって、補助金を受けて運行しています。その23年度の事業評価を見ると「収支率」と「広域トリップ」が満点評価でした。収支率は78%で赤字ですが、ローカルバスとしては好成績。広域トリップとは、市町村をまたいで利用する人の割合で、31%に達しています。経費などの数字は今ひとつだったものの、全体としては「地域間幹線系統として優れた役割を果たしている」として評価されています。

 評価シートによれば、「観光利用も一定程度あるものの、多くは通勤・通学・通院等の生活交通として利用」されているそうです。沿線には市役所や大学病院があるので、そうした日常利用が多いようす。実際に乗ってみても、途中乗降が多く、観光路線といえど、現実には地域利用で成り立っていることがうかがえました。

 ベースとして地域利用があり、そこに観光利用が加わっている形です。こうした形で維持されていくのは、路線バスのあるべき姿のひとつでしょう。

 (旅行総合研究所タビリス代表)

 
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