【人手不足の時代に】経営者・識者インタビュー 草津スカイランドホテル女将・小林由美氏に聞く


草津スカイランドホテル女将・小林由美氏

安心して働ける態勢整備が大事

 ――客室数と収容人員はどのくらいですか。

 「30室で112人。現在の客室稼働率は55%ほどです。人手不足で客室を閉める施設さんもあるようですが、当館では素泊まりを受けたり、休館する日もあります」

 ――スタッフは。

 「正社員15人で、うち女性は6人。割と年配の方ですね。パートは3人いますが、客室清掃が中心で、勤務時間は9~13時です。アルバイトは不定期で、忙しい時に頼んでいます」

 ――外国人はいますか。

 「男性3人、女性1人を雇っており、国籍はネパールとスリランカです。年齢は20~30代です。1人は5年務めており、もう1人は2年目。後の2人は8月に来たばかりです」

 ――どういった経緯で採用されていますか。

 「日本語専門学校の紹介や、前橋にあるNIPPONおもてなし専門学校の卒業生などです。『いい人がいるけどどうだろう』といった具合で紹介され、面接して決めています。いずれも紹介料はとられません。現在は寮と町営住宅に住んでいます」

 ――それでも人手不足ですか。

 「全然足りません。料理は順番に出すようになっており、満館の時は8~9人必要ですがそれを数人で回しているので負担は大きいですね。タイミーで募集したり、おもてなし学校の学生さんが座学と実地体験を兼ねて働いてくれていて、そのおかげで何とか回っているのが実情です。ただ、彼らは2カ月たつと戻るので、また違うグループが2カ月来てくれるという状態です。まさに自転車操業ですが(笑い)、若くて優秀な子ばかりなので、仕事の覚えは早いです」

 ――求人は頻繁にやっている?

 「マイナビやリクナビ、エアワークなどに出しています。応募がありますが、採用まで至らないケースも少なくありません。ぜいたくは言ってられませんが…」

 ――それでも回していかなければならない。

 「特にフロント業務が大変です。現在、私を入れて4人であたっていますが、予約からチェックイン、宿泊費の精算、労務管理、スタッフの配置、清掃まで目を配らなければならないので追いつかない状況です」

 ――人口減少が確実な中、カバーするには外国人に頼らざるを得ない状況です。特定技能制度では、宿泊業は「1号」に区分されており、フロント業務や企画・広報業務、接客業務などに従事することができます。また、在留期間の上限がなく、要件を満たせば家族の帯同もできる「2号」については23年に対象分野が拡大され、宿泊分野も対象となりましたね。

 「2号での外国人材の受け入れが可能になったことは評価しますが、スムーズにいっているかというとそうでもありません。春からネパールの特定技能の人を受け入れる話を進めています。書類等も全て整え提出しているのですが、いまだ実現していません。実際雇おうとしても簡単ではないのです。日本なのか、相手政府の問題なのか、民間レベルでは分かりません。国が本気で動いてくれないと絵に描いた餅になるのでは、という気がしています」

 ――来年から新卒を採るようですね。

 「大卒男子、それも国立大の採用は初めてです。将来の幹部候補生で、大事に育てたいですね」

 「いま働いているネパールの人たちも大学院を出たりしていて、地元ではエリートです。将来は家族を呼んで日本で暮らすのが夢だと言っています。本当に頑張っている外国人が安心して働けるよう、態勢を整えるのが大事だと思います」

 ――観光業界は慢性的な人手不足ですが、なぜ観光業に入って来ないのか、原因は何だと思いますか。

 「観光に興味を持っている人はたくさんいます。ただ、朝が早い、長時間労働、休みがないなど、きつい職場というイメージで捉えられているのではないでしょうか。そうしたイメージを払拭させること、また働きがいを含めて、いろんな楽しみがあることを伝える必要があると思います」

 ――草津温泉では町や観光協会主催による合同入社式がありますね。

 「来草歓迎式ですね。今年5月の式では宿泊施設や飲食店などに入社した45人が出席しました。新入社員を代表してあいさつしたのは旅館で働くタイの子でした」

 「式の後にはバーベキューなどを行い、これをきっかけに横のつながりも生まれるようです。その後も飲み会を開いたりして親睦を深めています。草津で働いて良かったと思われるよう、受け入れ態勢を充実させ来てくれた人をいかに残すか、その視点が欠かせないと思います」

 ――人手不足解消の鍵を握る外国人労働者ですが、こちらも受け入れ態勢の整備が欠かせません。

 「いろいろな制約があって、人文国際のビザでは通訳しかできないとか、旅館業務に精通してもらう上でネックになっている部分もあります。特定技能のビザで入った場合、受入機関が身元を引き受けて会社に渡すので、雇用する際、毎月そこに数万円のお金を払わなければなりません。これでは本人に渡す給料も減ってしまいます。問題はたくさんあると感じています」

【聞き手・内井高弘】


草津スカイランドホテル女将・小林由美氏

 
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