全国旅行業協会(ANTA、二階俊博会長)は9月26日、宮城・秋保温泉の篝火の湯緑水亭で、東日本復興支援会議を開いた。会員ら約60人が参加した同会議には、二階会長のほか、溝畑宏観光庁長官らも出席。二階会長が「観光の専門家として今、力を発揮する責任がある」と観光を通しての復興支援へ会員に奮起を求めた。被災地のANTA各支部の出席者が被害状況や復興の進行状況を説明したほか、観光復興支援に関する決議も行った。
同会議には溝畑観光庁長官や若生正博・宮城県副知事はじめ、清谷伸吾・東北運輸局長、佐藤潤・東北経済連合会副会長(ホテル佐勘会長)も来賓として出席した。
会議の冒頭で二階会長は、「若生副知事はじめ多くの来賓の出席があるのは、われわれにいささかでも期待を寄せていただいているということ。しっかりとこたえていかなければならない」と会員を激励。風評の払しょくの重要性を指摘したほか、訪日旅行の復活についても言及し、チャーター機の利用などによる麗水世界博覧会への業界挙げた協力が訪日旅行回復につながると強調した。
また、福島県と和歌山県に縁のある「安珍・清姫伝説」に触れ、「2県を結ぶ伝説にゆかりある碑も震災で被災したと聞くが、どのような状況かは分からない。おそらく復興の中でそのままになっているのではないか。こういう地元に根ざした話を大切に、興していくことが地域と観光活性化には大切だ」と指摘した。
若生副知事は復興会議などの支援への謝意を述べた上で、「震災後の新たな動きとしてボランティア目的で延べ30万人が訪れ、温泉旅館に1泊するなどの支援も行われたのはありがたかった。新幹線も通常ダイヤに戻るなど交通インフラはすでに復活しているので、旅行のプロの皆さんのさまざまなアイデアで新たな旅行需要を生み出し、どんどん旅行客を送りこんでほしい」と要請。
被災地域の各支部からは、「被災県の住民が旅行に行く雰囲気ができるよう、旅行素材の提供への協力を」「他県からの送客が期待できないので、地元のお客さまだけでも動くよう取り組んでいる」などの呼びかけや説明があった。
観光行政のトップとして参加した溝畑長官は、「東北全体の集客力が高まるような仕掛けづくりをしたい」との考えを示したほか、「人の心に“刺さる”ような商品」づくりを訴えた。
ANTAでは被災地の復興支援策としてこれまで風評被害対策の要望文の提出や義援金の取りまとめ、各支部単位での支援ツアーなどを行ってきた。また新たに、東北地方の祭りをあしらったポスターを製作して関係各所に配布し、着地型旅行「地旅」を通した日本の元気復活を呼び掛ける考え。ANTAの各役員の名刺にもポスターデザインをあしらい、運動を後押しする予定だ。
会議の最後には、「東日本大震災からの観光復興支援に関する決議」を行い、(1)正確な情報の収集と旅行者などからの問い合わせへの適切な対応により、観光関連団体と協力して風評の払しょくに最大限努める(2)地域において会員や旅行者へ正確な情報を提供する(3)被災地と被災地の会員を支援するため、復興支援ツアーや被災地での研修会などによる送客支援に努める(4)修学旅行の東北地方への誘致に努める(5)イベントなどでの東北産食材の使用を働きかける──の5項目について、引き続き会員一丸で取り組むことを決めた。
27日には、来年5月から始まる韓国での麗水世界博覧会の説明会も実施し、相互交流の促進のためにANTAとして送客に全力で取り組むことを確認した。
復興支援への奮起を求める二階会長