ベストセレクション

岩肌を縫って流れる摺上川に沿って建つ吉川屋。一歩踏み入るとゆったりと温かみのある空間が広がっている。ラウンジに憩えば窓枠に切り取られた絵画さながらの絶景に癒される。その眺めを館内随所からも愛でるひとときが基調になる。４館からなる宿、客室の眺めも特徴も異なる。眺望がすばらしいのが紫雲閣で、９階にはハレの日の席など特別予約にも応える貴賓室が３室。新館の凌雲閣４～11階には渓谷を眺める客室と果樹畑を望む客室がある。さらに宿の歴史漂う紫雲閣と紅雲閣は木々が生い茂る岩肌や渓谷に面した和のやすらぎ空間で、客室では対岸の片倉山の四季折々の風景が湯に浸かる醍醐味を増幅してくれる。宿自慢の湯は自家源泉の弱アルカリ性単純泉。老若男女が楽しめる肌に優しい温泉だ。特に広さたっぷりの露天風呂『さるあみの湯』と『かもしかの湯』から眺める対岸はまさに絶景。季節に移ろう岩壁や手つかずの自然景観を心地良い湯とともに眺めるひとときは何にも代え難い。内湯と源泉掛け流しの露天風呂付の女神の貸切風呂『湯野～ＹＵＮＯ～』も美景を独り占めできると人気だ。湯上がりの楽しみといえば食事。プロも絶賛、関西で修業した料理長による素材本来の味を活かした季節感あふれる美食メニューが絶妙のタイミングで運ばれてくる。「温かいものは温かく、冷たいものは冷たいままで」というこだわりが見事なまでに貫かれている。１２６室を数える宿で、それがどれほどむずかしいことなのか。宿の「匠のこころ」が伝わってくる。昨年誕生した『せせらぎの杜ダイニング燈花』も心尽くしの食空間だ。「目配り・気配り・心配り」を胸に笑顔で迎えてくれるスタッフのもてなしも嬉しい。