慶雲館は南アルプス、櫛形山系、身延山地に囲まれた山間の宿。身延駅からは宿の送迎バスが用意されているが、宿までは山を分け入りながらさらに1時間余り。川沿いにうねるように続く南アルプス街道沿いにようやくその姿を現す。西暦七〇五年の創業と聞くが、千三百年も昔にこの地に宿があったなどとはとうてい思えない。近代和風建築の建物だが、深山幽谷の風景の中にしっとりと溶け込む姿はまさに老舗宿の感がある。慶雲館はギネス・ワールド・レコーズに「世界で最も歴史ある温泉宿」として登録されている。宿名の「慶雲」は大化の改新の「大化」から数えて5番目の元号にあたり、宿の発祥も藤原鎌足の子息である真人が狩猟の最中に偶然に温泉を発見したことにちなむ。戦国時代には武田信玄公や徳川家康公など数多くの名将も訪れたという。武田二十四将のひとり、穴山梅雪が奉納した銅鑼も家宝として残る。
山懐に抱かれたその「隠し湯」は時を経た今も尽きることなく湧き上がり、人々を癒し続けている。宿に入ってまず目にするのは対岸の渓谷に浮き出た見事な断層、日本列島を横断するフォッサマグナだ。敷地内に湧き上がる湯はこの大地溝帯の裂け目から歳月をかけて涵養されて湧出し続ける天然温泉。それだけで宿は4本の自家源泉を得ていたが、開湯一三〇〇年の記念事業として新たに温泉を掘削し、泉温52度、毎分湧出量一六三〇リットル以上という日本随一の湯量の自家自噴源泉を得た。既存の源泉と併せれば二〇〇〇リットルもの湯量になる。湧出量もギネス級だ。そのすばらしい温泉を宿は自館だけで使用している。浴場はもちろん、部屋風呂、給湯、シャワーに至るまですべてが源泉掛け流しの贅沢さだ。泉温が52度と適温のため、加温・加水はいっさいなし。正真正銘、本物の源泉掛け流し温泉である。飲泉すれば消化器病や便秘などに効果があることから、胃患いの治癒目的にやってくる人も多いそうだ。
自慢の浴場は6つ、内4つが早川の渓流沿いの野天風呂だ。空を遮るような手つかずの森やせせらぎを眺めながらの入浴感はまさに野天の趣がある。人気は独特の香りの高野槙の野天風呂『望渓の湯』と、地元産の白鳳石で造られた渓流野天風呂『白鳳の湯』だ。浸かりながら眺めるのは早瀬に躍る季節折々の風情。木漏れ日や樹々のざわめき、鳥のさえずりに癒される。予約制の貸切野天風呂『川音』『瀬音』ではその名のとおり渓流のせせらぎに包まれながらの湯浴みが叶う。館内最上階には部屋から身近な入浴を叶える展望風呂『石風の湯』と『桧香の湯』。どちらも5年前にリニューアルされ、桧香の湯にはこの地に2千年以上根を張った古代檜が使われている。気に入りの湯殿をめぐり、湯に浸かって出ては肌の熱りを冷ます。そんなひとときがたまらない。客室は和のやすらぎ空間が揃うが、渓流側の源泉掛け流し総檜内風呂付客室、自然景観を宿す源泉掛け流し露天風呂付客室も備えている。料理は平成26年の全日本日本料理コンクール郷土料理部門で国土交通大臣賞を受賞した料理長による至高のオリジナル料理。海のものは一切使わず精魂込めて手作りする「深山会席」を堪能する。一頭買いする甲州牛は8年連続金賞受賞の最高級A5ランクで、9月頃から楽しめる。地元食材と卓越した包丁技を駆使して創作する美味の数々は宿泊客誰もが絶賛する。山深く分け入って憩う歴史の宿。現代人の感性にも合わないはずがない。
慶雲館にご到着された際には、フロントロビーにて柚子と蜂蜜のジュースウェルカムドリンクでおもてなしいたします。一息ついた後は温泉タイム。当館自慢の湯処で、温泉源泉掛け流し、pH値9.36の美肌の湯を存分にお楽しみください。いずれのお風呂も24時間お楽しみいただけます(※清掃時間を除きます)。
住所:〒409-2702 山梨県南巨摩郡早川町湯島825
交通:【電車】JR 身延線身延駅下車、タクシー約60分 【バス】身延駅から奈良田行き約80分、西山温泉バス停下車
【自動車】中部横断道増穂IC から国道52号線約60km 【駐車場】乗用車50台・大型10台
【送迎】身延駅から(要予約、13:40発、1日1回)
TEL:0556-48-2111 FAX: 0556-48-2611
URL:https://www.keiunkan.co.jp/
◆建物/鉄筋4階建 ◆客室/和室35室(内、露天風呂付2) ◆全室バス・シャワートイレ付 ◆食事/夕食・朝食(料金とセット) ◆食事場所/夕食・朝食:客室(4人まで) ◆館内施設/宴会場(7室、15~100人)、食事処、カラオケ(1室)、バー、麺どころ、喫茶、売店 ◆料金/23,000円~40,000円(税別) ◆チェックイン14:00、チェックアウト11:00 ◆Wi-Fi使用可/全館・ロビー・客室・その他