観光庁主催のDMO全国会議が9日、東京都千代田区のホールで開かれた。観光庁の登録制度に登録する候補法人を含めたDMOは320法人。DMOの担当者や観光関係者が会場参加とオンライン視聴で参加した。先進事例の発表では、愛媛県大洲市のキタ・マネジメントと、岐阜県下呂市の下呂温泉観光協会が、持続可能な観光への取り組みなどを紹介。パネルディスカッションでは、DMOなどの代表が登壇し、DMOが果たすべき地域での機能や運営財源をテーマに意見交換した。
大洲 城下の街並み 観光で保全、活用
◆事例発表(1)キタ・マネジメント 代表理事 髙岡公三氏
大洲は、かつての伊予大洲藩の城下町で古民家や町家が多く残り、「伊予の小京都」とも呼ばれたが、建物の老朽化が進み、空き家が増加するなど、美しい町並みが失われつつあった。もとより人口減少や地域経済の縮小も課題だった。
大洲市は2017年に観光まちづくり戦略を策定。その実行に向け、市内の地名「喜多」を冠したDMOとして一般社団法人、キタ・マネジメントが18年に発足した。城下町エリアに点在する古民家などをホテルや店舗に改修し、活用していく事業を推進。改修、賃貸、管理を担う不動産会社のKITAも設立された。
事業スキームは、古民家改修による分散型ホテルの先進地として知られる丹波篠山(兵庫県)に学び、その運営企業などとも提携、さらに大洲の多様な関係者が連携する態勢で構築した。古民家のホテル改修など、当面5年間のプロジェクトに必要な資金は約12億円。国の交付金など公的資金として約6億円、地元の伊予銀行などが設立したファンドなどからの民間資金で約6億円を確保した。
22年12月時点の観光まちづくりの成果としては、再生した歴史的建造物が31棟で、宿泊客室32室をはじめ、フロント、レストラン、宴会場などに活用している。飲食や雑貨などの進出事業者数は20社、新規雇用者数は71人。地区住民の90・3%が事業に賛同しているという。
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