効果の波及、公平感に課題
国内旅行の需要を喚起するGo Toトラベル事業で、一部のオンライン・トラベル・エージェント(OTA)や旅行業者が手元の予算枠の不足から割引や販売を制限し、消費者に混乱が生じた。国土交通省、観光庁は、割引率の35%維持、事業者への予算の追加配分で事態を収拾したが、赤羽一嘉国土交通相は16日、事業者に求めていた旅行目的地ごとの予算配分を事実上撤廃し、当面、地域にかかわらず利用できるよう運用を改めたことを明らかにした。
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一部の旅行・宿泊予約サイトで割引額の上限が設定されるなど、割引率が実質的に引き下げられた問題では、赤羽国交相が割引率35%の維持、予算追加を表明。13日中には各事業者が35%の割引率を回復させた。割引率の引き下げ中に予約、宿泊を行った利用者には差額分を各社のポイントで還元するなどの措置もとられた。
割引率が引き下げられた要因は、10月から東京発着の旅行が対象に加わり、地域共通クーポンの利用も始まったことで、予約・販売が急増し、手元の予算枠がひっ迫したためとみられる。他のOTAや旅行会社でも、同様の状況から一部の旅行先について商品販売を見合わせたり、対象商品の利用回数を制限したりするなどの動きも起きた。
旅行先によって商品販売を見合わせざるを得なくなるのは、国から給付された予算に旅行目的地別の割り当てがあるため。Go Toトラベル事業の効果を特定の地域に集中させず、全国に波及させようと設けられた仕組みだが、実際の商品の予約・販売状況は、人気や需要など市場動向の影響を受け、全てが計画通りにはいかない。
旅行目的地別の予算枠について赤羽国交相は16日の会見で運用を改める方針を示した。「事業者、利用者のニーズに沿って、より柔軟にさまざまな商品を販売してもらえるよう、これまでに事務局から通知した旅行地域別の予算枠にかかわらず、全ての旅行地域向けに機動的に利用できることとした」と説明した。
他方で事業効果の全国波及については、自然災害の被災地などに配慮するほか、事業の利用実績を分析しながら必要に応じて対応していく方針。「極端に著しい偏りが出た場合は、しっかりと検討する。なるべく公平感が残るような形で対応したい」(赤羽国交相)。
Go Toトラベル事業の“公平感”や“公正さ”に関して赤羽国交相は13日の会見で、「利用者にとっての公正さが最優先されるべき」と強調したが、コロナ禍の支援策として地域経済、観光産業の活性化への効果が期待される以上、地域間、旅行・宿泊事業者間にも一定の公平感、公正さが必要だろう。
ただ、事業者に対する予算の配分や追加など、公平感や公正さに配慮した執行管理には難しさもうかがえ、赤羽国交相は「どの事業者が努力して販売を増やしたかということまで、コントロールするということはいかがなものかと。売り過ぎではないかということは、お客さまに支持されている以上、なかなか難しい問題ではないかと思う」と見方を示した。