1~3月は落ち込む
日本政策金融公庫はこのほど、生活衛生関係営業の景気動向等調査の昨年10~12月期分を公表した。同期のホテル・旅館の業況判断DIはマイナス23.2で、前期(昨年7~9月期、マイナス59.8)から36.6ポイント上昇した。Go Toトラベル事業で宿泊客が増えたとの声が挙がる一方、11月中旬からキャンセルが増加し、先行きを懸念するとした声も多く聞かれた。今年1~3月の見通しDIはマイナス51.4と再び落ち込んでいる。
DIは前期比で業況が好転とする企業割合から悪化とする企業割合を引いた値。
コロナ前の2019年10~12月はマイナス28.6。コロナが確認されだした昨年1~3月期はマイナス52.2と大きく落ち込み、同4~6月期はマイナス96.3とさらに落ち込んだ。
その後、Go Toトラベル事業が始まった同7~9月期にマイナス59.8と上昇。10~12月期もさらに上昇した。
飲食、理容、クリーニングなども含めた生活衛生関係営業全体は前期比8.6ポイント増のマイナス53.2。景気の基調判断は「新型コロナウイルス感染症の影響により依然として厳しい状況にある」と、前期の判断を据え置いた。来期の見通しDIは今期比0.2ポイント減のマイナス53.4。
調査は昨年12月上旬、訪問形式で実施。ホテル・旅館は181企業が回答した。
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ホテル・旅館の業況判断理由の主な回答は次の通り。
「Go Toトラベルと鳥取宿泊キャンペーンの効果で、県外観光客だけでなく、県内のファミリー層の宿泊が増え、客単価も昨年を上回っている」(今期、好転、鳥取県)。
「Go Toトラベルの効果で、宿泊客数・金額ともにアップしている。休日前後は満室日が多く、平日も昨年以上の予約の確保ができている」(今期、好転、山口県)。
「Go Toトラベルなどの観光支援事業の効果で満室状態が続いている。県外の小グループの宿泊が中心で、地域共通クーポンの利用も多く、客単価が高くなっている」(今期、好転、佐賀県)。
「Go Toトラベル効果で観光地や温泉地の宿泊施設はにぎわっているが、ビジネス客や工事関係客を相手にする施設には恩恵が少ない。感染者数が増え始めた11月中旬からは、キャンセルが目立つようになった」(今期、悪化、岩手県)。
「Go Toトラベル効果で客室の稼働は少しずつではあるがよくなっているが、忘年会等の宴会は自粛傾向が強く、感染再拡大でキャンセルが増えている」(今期、悪化、滋賀県)。
「コロナ禍の長期化によりイベント、スポーツ関連の団体客が減っている。個人旅行などGo Toトラベルの効果は出ているが、ビジネス目的の適用が制限されていることもあり、回復に至っていない」(今期、悪化、徳島県)。
「11月から感染拡大が続き、Go Toトラベル経由の予約キャンセルが止まらない。年末年始の全国一斉停止措置により、さらに厳しくなる見通し」(来期、悪化、北海道)。
「11月まではGo Toトラベルを利用した宿泊客でにぎわったが、12月に入り感染拡大が続く中、年末年始の一時中断措置が発表されたことで、予約キャンセルが相次いでいる」(来期、悪化、宮城県)。
「全国的な感染拡大が収まらない状況であり、年末年始に中断したGo Toトラベル事業が再開されるか不安。観光客やビジネス客の宿泊需要、イベント等の宴会需要が全く読めず先が読めない」(来期、悪化、埼玉県)。
「ここ数年、スキー宿泊客の減少は著しく、新型コロナウイルスの感染拡大が続く限り、スキー客は一層の冷え込みが懸念される」(来期、悪化、長野県)。