アベノミクスの影響か、景気の上向きを感じさせる中、今年のゴールデンウイーク(GW)が終わった。JTBは国内旅行者数について「2000年以降、過去最高となる見通し」としたが、予想通り各地は人出でにぎわった。旅行業者、温泉・観光地の動向を探ったところ、特に目立ったのが東京ディズニーリゾート(TDR)や東京スカイツリーを抱える首都圏の好調さだった。
JTBの国内旅行は全体で前年同期比103%。うち、関東(首都圏、伊豆箱根、北関東を含む)は107%、東北が105%、関西103%で「日並びが悪いにもかかわらず、好調だった昨年をさらに上回った」と手ごたえを強調。
TDRなどのテーマパークや東京スカイツリーの人気が高かった。
「景気への期待感が高まっているというのは感じている」とするが、「GWは日並びの影響もあるので景気への期待感がそのまま反映されているわけではない」と冷静な見方だ。
「今年は首都圏と伊勢志摩、出雲が前年超えと好調だった」というのは近畿日本ツーリスト総務広報部。「首都圏はTDR30周年と、東京スカイツリー開業後初のGWということもあって取り扱いが増えた。伊勢志摩と出雲は遷宮の年であり、関心が高まった」としている。
また、曜日配列の悪さから北海道や沖縄などロングステイへの影響が心配されたが「結果を見ると、前年割れだったものの、そこそこ健闘した」という。
日本旅行の受注状況(人員ベース)は国内が前年同期比107%、海外は85.5%だった。
国内では首都圏(119%)、東北(110%)が2ケタ増と好調。首都圏については「昨年からのスカイツリー効果に沸く都内近郊エリアが、TDR30周年イベントも相乗効果となった。東北は『八重の桜』『あまちゃん』などのドラマ効果も手伝って非常に好調に推移した」という。
このほか、関西、京阪神、中四国なども都内発のJRセット商品が堅調だったとしている。
阪急交通社の取扱実績(人員ベース)は国内旅行が前年同期比110%、海外は85%で「海外から国内へシフトした」と広報課。「中国への旅行が前年に比べて急激に落ち込んでおり、いまのところ回復の兆しが見えない」という。
国内を見ると、北海道、北陸・甲信越、東海、近畿方面が好調で、東北は前年並みで推移。国内が2ケタ増になったとはいえ「旅行に関しては景気回復の影響は感じられない。特に海外に関しては今後過度の円安が懸念される」としており、慎重な見方を崩さない。
「国内旅行は日並びの良さと円安基調から需要は堅調だった。前年同期比110%」というのはジャルパック。「TDR30周年効果もあり、特に関東は約130%で好調だった」とし、ウェブ予約が増加したことも今年の特徴として挙げる。
ANAセールスは「国内旅行は堅調に推移し、前年同期比105%となった」という。方面別に見ると、中国四国が120%、北海道111%、北陸109%、関東、九州が107%、沖縄が102%となっている。
温泉・観光地
前年以上の人出に TVドラマ効果も
群馬県・草津温泉は、GWの宿泊客数が前年同期比で約4%増加した。旅館協同組合によると、前半より後半に集中し、3日以降の客室稼働率は90%を超え、4日は98%に達した。GW直前に新しい共同湯「御座之湯」がオープンし、利用者も多かった。震災で「絆」がクローズアップされ、昨年まではファミリー層が多かったが、今年はカップル客や小グループが目立った。
三重県の伊勢神宮は今年、式年遷宮でにぎわう。日並びの良さと連日の好天に恵まれ、参拝者数は前年比144.6%の大幅な伸びとなった。伊勢志摩地域も入り込み数を大きく伸ばしたと見られる。鳥羽市温泉振興会では「客単価が上がった印象はないが、人員増でカバーしている」と指摘した。
岩国錦帯橋空港が昨年12月に開港した山口県岩国市。岩国観光協会では「天候に恵まれ、錦帯橋は最高の人出」。一方で、オフシーズンを含めて、空港からレンタカーなどを使った周遊観光の促進が集客拡大のかぎとし、広域連携などを今後の課題に挙げている。
別府温泉がある大分県別府市。市観光協会は「国内旅行の好調さが盛んに報道されているが、GWも好調が続いているようだ」。市観光課によると、観光施設(10施設)は天候にも恵まれ、集客数が増加。一方で、旅館・ホテル(30施設)の宿泊客数は減少。「別府は関西や首都圏からの観光客が比較的多い。今年のGWは曜日の配列が悪く、遠方からの客が少なかったと思われる」(市観光課)。
栃木県日光市は、GW全体では昨年並みかそれ以上の集客と見られる。日光地区観光協会連合会では「GW前半は好調。途中平日があったので、後半はどうかと思ってはいたが、昨年並みの集客があった」。また、インバウンドも、円安がプラスに働き、台湾とタイからの旅行者が目立っているという。
東北はGW期間中、雨や冷え込みなど天候に恵まれなかった日があり、桜の開花に影響が出た地域もある。しかし、テレビドラマの舞台となった地域は好調。NHK大河ドラマ「八重の桜」で盛り上がる福島県会津若松市。鶴ヶ城天守閣は4月27日〜5月6日の入場者数が6万9577人に達し前年比125.5%に。NHK連続テレビ小説「あまちゃん」で話題の岩手県久慈市は、主要な観光施設・イベントの入り込みが大幅に増加し、道の駅「やませ土風館」は前年から倍増した。