HISグループ、雇用調整助成金で「虚偽タイムカード」作成 特別調査委が明かした不正の全容


22社で総額約286億円を受給、不正・不適正受給の実態が判明

 エイチ・アイ・エス(HIS)は21日、同社グループにおける雇用調整助成金の受給に関する特別調査委員会からの調査報告書を受領したと発表した。調査の結果、HISとグループ子会社において不正受給および不適正受給が明らかになった。

 特別調査委員会の調査によると、HISおよびグループ子会社22社が2020年3月から2023年3月までの期間に受給した雇用調整助成金および緊急雇用安定助成金の総額は約286億円に上る。このうち、不正受給があったと認められ、かつ役員による指示があったと認められた会社が2社、不正受給があったと認められたが役員による指示があったとまでは認められなかった会社が1社、不適正受給があったと認められた会社が15社あったことが明らかになった。

 調査は、HISの連結子会社であるナンバーワントラベル渋谷(以下、ナンバーワン)における不正受給の疑いが発覚したことをきっかけに開始された。2024年11月、ナンバーワンの取締役が雇用調整助成金を申請するために実際の勤務実態と異なる内容虚偽の申請用タイムカードを作成していたことを申告し、HISはナンバーワンにおける雇用調整助成金の不正受給の事実を認識した。

 また、HIS本体においても、2024年4月に会計監査人から雇用調整助成金等の不適正受給の疑いがあるとの情報提供を受け、社内調査を実施した結果、勤務実態がある日を特別休業日として申請していたケースがあることが判明した。

 特別調査委員会は、HISおよびグループ子会社における雇用調整助成金等の受給実態の解明に加え、その背景にグループ全体におけるガバナンス上の問題点がないかの検証等も含めた原因分析および再発防止策の提言を行った。

 調査の結果、HISグループにおいて不正受給および不適正受給が発生した主な原因として以下の点が指摘された:

1. コロナ禍による急激な業績悪化と雇用維持の必要性

2. 雇用調整助成金制度に対する理解不足

3. グループガバナンスの不備

4. 内部統制システムの不十分さ

5. コンプライアンス意識の欠如

 特別調査委員会は、これらの問題点を踏まえ、以下のような再発防止策を提言している:

1. グループガバナンスの強化

2. 内部統制システムの改善

3. コンプライアンス教育の徹底

4. 監査体制の強化

5. 適切な情報開示の徹底

 HISは、特別調査委員会の調査結果を真摯に受け止め、再発防止策の提言に沿って具体的な再発防止策を策定し、実行していくとしている。また、関係者の処分等については2025年3月末を目途に公表する予定だ。

 
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