J.D. パワーは21日、「2024年ホテル宿泊客満足度調査」の結果を発表した。
CS(顧客満足度)に関する調査・コンサルティングの国際的な専門機関である株式会社J.D. パワー ジャパン(本社:東京都港区、代表取締役社長:山本浩二、略称:J.D. パワー)は、J.D. パワー 2024年ホテル宿泊客満足度調査℠の結果を発表した。
18回目となる今回調査では、部門定義の見直しを行い、各ホテルグループ・チェーンの最多客室面積帯を基に、最多客室面積が35㎡以上を「アッパーアップスケールホテル部門」、25㎡以上35㎡未満を「アップスケールホテル部門」、20㎡以上25㎡未満を「アッパーミッドスケールホテル部門」、15㎡以上20㎡未満を「ミッドスケールホテル部門」、15㎡未満を「エコノミーホテル部門」として、5つの部門に分けて調査を行った。
宿泊料金は上昇するも、「料飲」とハード面の高評価に支えられ満足度は向上
好調なインバウンド需要に加え、人件費やエネルギー価格などコストの上昇を背景に、ホテル宿泊料金が高騰している。本調査でも、前回調査(2023年11月発表)と比較可能な38ブランドのうち*¹、半数近い18ブランドで宿泊料金の10%以上の上昇が確認された。
しかし、料金上昇が満足度全体に与える影響は限定的であった。前回調査では宿泊料金の大幅な上昇が主因となり、総合的な宿泊客満足度が大きく低下したが、今回調査では38ブランド中12ブランドで10pt以上の満足度向上が見られ、10pt以上低下したのは2ブランドのみだった。
宿泊客満足度を構成するファクター別では、「料金」は13ブランドで10pt以上満足度が低下し料金上昇の影響を避けられなかったものの、それ以外の主要ファクターでは、大半のブランドで前年と同レベル以上だった。特に、朝食を中心とした「料飲」では6割を超える25ブランドで、「客室」では18ブランド、「ホテル施設」では15ブランドと約4割のブランドで向上している。料飲の質向上への積極的な取り組みや、コロナ禍で遅れていた客室や施設のメンテナンスなどハード面での改善に取り組むホテルブランドが多い様子がうかがえる。
*¹ 調査対象ブランド全46ブランド中、前回・今回共に調査対象となり前回との比較が可能なのは38ブランド。
宿泊客のニーズが高い入浴施設や特色ある朝食
本調査ではサービスやアメニティ14項目に対して、ホテルを利用する際の重要度を聴取した。その結果、全ての部門で「温泉・浴場施設」、「地域/地元の食材や特産品を使った朝食」、「健康に配慮された朝食」が上位3位以内に挙がった。
特に「温泉・浴場施設」については、アップスケールホテル部門、エコノミーホテル部門を除く3部門で4割以上の宿泊客が重要と答えている。実際にこれらの施設を利用した宿泊客の割合は、アッパーアップスケールホテル部門とミッドスケールホテル部門でともに37%、アッパーミッドスケール部門で34%と、一定層の宿泊客にとっては魅力的な附帯サービスであると言えよう。
また朝食については、エコノミーホテル部門を除く4部門で、宿泊客の7割近くが「朝食で地域/地元の食材や特産品を使った料理・飲み物の提供があった」と回答している。加えて、前回調査と比較可能な38ブランドのうち半数はこの割合が5pt以上増加しており、こうした朝食内容の充実が、今回調査における「料飲」の満足度向上の一因となったことが推察される。
スマートチェックインサービス、宿泊客のニーズ高いが期待と合致しているか慎重な検討を
「自動チェックイン機」や「スマートチェックイン*²」といったセルフサービス型のチェックインの普及が進んでおり、「スマートチェックイン」は、5部門中4部門で重要だと思うサービスやアメニティの上位5位以内に挙げられている。セルフサービスでのチェックイン利用率(「自動チェックイン機」と「ホテルのアプリを使用したチェックイン」の合計)はエコノミーホテル部門で25%、ミッドスケールホテル部門で17%、アッパーミッドスケールホテル部門で12%となっている。
セルフサービス型と従来の対面型のチェックインの満足度を見ると、エコノミーホテル部門ではセルフサービス型の方が「チェックイン/チェックアウト」での満足度が高い一方、それ以外の部門ではスタッフによるフロントデスクでの対面型のチェックインの方が満足度が高い傾向が見られた。
スマートチェックインは宿泊客からのニーズが高く、業務効率化にもつながるが、満足度の観点からは、宿泊客の期待と合致しているか慎重に検討する必要がある。もしギャップが生じるようであれば、スタッフによるサポート体制などを含めた対応策を整えた上での導入が望ましい。
今回調査では、宿泊料金の上昇にも関わらず、宿泊客満足度の維持・向上が確認された。しかし、今後もインバウンド需要、物価上昇、人員不足といった状況が続く限り、高水準の宿泊料金が継続すると予想される。その中で、各ホテルブランドにおいては、満足度向上とリピート客の獲得に向け、何に注力するか、宿泊客に提供できるブランド独自のベネフィットは何かを見極めた上での効果的な施策の展開が求められる。
*² チェックイン・チェックアウトをスマートフォンのアプリやQRコードなどでできるサービス。
J.D. パワー 2024年ホテル宿泊客満足度満足度No.1を発表
総合満足度ランキングは下記の通り。
【アッパーアップスケールホテル部門】(対象4ブランド)
第1位:オークラ(776ポイント)
「料飲(F&B)」、「客室」、「料金」、「ホテル施設」、「チェックイン/チェックアウト」の5ファクターで最高評価。
第2位:ウェスティン(763ポイント)
第3位:シェラトン(761ポイント)
「ホテルサービス」ファクターで最高評価。
【アップスケールホテル部門】(対象10ブランド)
第1位:インターコンチネンタルホテル/ANAインターコンチネンタルホテル(786ポイント)
「客室」、「料金」、「ホテル施設」、「ホテルサービス」、「チェックイン/チェックアウト」の5ファクターで最高評価。
第2位:ハイアットリージェンシー(779ポイント)
「料飲(F&B)」ファクターで最高評価。
第3位:ニューオータニ(768ポイント)
【アッパーミッドスケールホテル部門】(対象8ブランド)
第1位:ラビスタ(773ポイント)
「料飲(F&B)」、「客室」、「ホテルサービス」の3ファクターで最高評価。
第2位:OMO by 星野リゾート(762ポイント)
「料金」、「ホテル施設」の2ファクターで最高評価。
第3位:ANAクラウンプラザホテル(752ポイント)
「チェックイン/チェックアウト」、「予約」の2ファクターで最高評価。
【ミッドスケールホテル部門】(対象10ブランド)
第1位:リッチモンドホテルズ、ベッセルホテルズ(同点、726ポイント)
リッチモンドホテルズは「客室」、「料飲(F&B)」、「チェックイン/チェックアウト」の3ファクターで最高評価。
ベッセルホテルズは「料金」ファクターで最高評価。
第3位:カンデオホテルズ(721ポイント)
「ホテル施設」ファクターで最高評価。
【エコノミーホテル部門】(対象14ブランド)
第1位:スーパーホテル(712ポイント)
10年連続※の総合満足度第1位。「チェックイン/チェックアウト」、「ホテル施設」、「ホテルサービス」の3ファクターで最高評価。※調査実施年ベース(2020年は調査を実施していない)
第2位:ヴィアインホテル(699ポイント)
「客室」、「料飲(F&B)」の2ファクターで最高評価。
第3位:コンフォート(695ポイント)
《J.D. パワー 2024年ホテル宿泊客満足度調査℠概要》
年に1回、日本全国のホテルグループ・チェーン*³ を対象に、直近1年間に宿泊したホテルに対する満足度を聴取し明らかにする調査。今回で18回目の実施となる。本年より部門の定義の見直しを行い*⁴、各ホテルの最多客室面積帯を基に「アッパーアップスケールホテル部門」、「アップスケールホテル部門」、「アッパーミッドスケールホテル部門」、「ミッドスケールホテル部門」、「エコノミーホテル部門」の5部門に分け、それぞれにおける宿泊客満足度を測定している。
■実施期間:2024年9月中旬~9月下旬 ■調査方法:インターネット調査
■調査対象:直近1年以内にホテルに宿泊した人(20歳~74歳)
■調査回答者数:アッパーアップスケールホテル部門:952人 アップスケールホテル部門:2,107人
アッパーミッドスケールホテル部門:3,208人 ミッドスケールホテル部門:3,407人、
エコノミーホテル部門:6,007人
総合的な顧客満足度に影響を与えるファクターを設定し、各ファクターの詳細評価項目に関するユーザーの評価を基に1,000ポイント満点で総合満足度スコアを算出。総合満足度を構成するファクターは、総合満足度に対する影響度が大きい順に以下の通り(カッコ内は影響度)。
【アッパーアップスケールホテル部門】最多客室面積が35㎡以上
「料飲(F&B)」(20%)、「客室」(19%)、「料金*⁵」(17%)、「ホテル施設」、「ホテルサービス*⁶」(共に15%)、「チェックイン/チェックアウト」(13%)、「予約*⁷」(1%)
【アップスケールホテル部門】最多客室面積が25㎡以上35㎡未満
「料飲(F&B)」(20%)、「客室」(19%)、「料金*⁵」(17%)、「ホテル施設」、「ホテルサービス*⁶」(共に15%)、「チェックイン/チェックアウト」(13%)、「予約*⁷」(1%)
【アッパーミッドスケールホテル部門】最多客室面積が20㎡以上25㎡未満
「料飲(F&B)」(20%)、「客室」(19%)、「料金*⁵」(17%)、「ホテル施設」(16%)、「ホテルサービス*⁶」(14%)、「チェックイン/チェックアウト」(13%)、「予約*⁷」(2%)
【ミッドスケールホテル部門】最多客室面積が15㎡以上20㎡未満
「客室」(21%)、「料金*⁵」、「ホテル施設」(共に18%)、「ホテルサービス*⁶」(16%)、「料飲(F&B)」(14%)、「チェックイン/チェックアウト」(13%)、「予約*⁷」(1%)
【エコノミーホテル部門】最多客室面積が15㎡未満
「料金*⁵」(21%)、「客室」(18%)、「チェックイン/チェックアウト」(16%)、「ホテル施設」(15%)、「ホテルサービス*⁶」(14%)、「料飲(F&B)*⁸」(12%)、「予約*⁷」(4%)
*3 国内で10棟以上を統一ブランド名で運営しているホテルで総客室数が1,500室以上かつ、事前調査により一定水準のサンプル数を満たしたブランド。
*4 前回調査の部門・定義は下記の通り
【アップスケールホテル部門】正規料金の最多価格帯15,000円以上35,000円未満
【ミッドスケールホテル部門】正規料金の最多価格帯9,000円以上15,000円未満、もしくは最多価格帯が9,000円未満かつ最多客室面積が15㎡以上
【エコノミーホテル部門】正規料金の最多価格帯9,000円未満かつ最多客室面積が15㎡未満
*5客室料金、料飲(F&B)料金など滞在中に費やした費用全体の評価。
*6レジャー/フィットネス、温泉・浴場等の施設やインターネット接続等の附帯サービス全体の評価。
*7電話及びウェブサイトを通じホテルもしくはホテルグループ・チェーンに直接行った予約の評価。
*8エコノミーホテル部門では、レストラン・バー・ラウンジ施設を附帯しないホテルブランドを考慮し「朝食」として提供される料理や会場・レストランの評価を採用。
*J.D. パワーが調査結果を公表する全ての調査は、J.D. パワーが第三者機関として自主企画し実施したものです。