環境にやさしい交通システムとして注目が高まっている自転車の共同利用サービス「コミュニティサイクル」。外国では普及が進んでおり、国内でも今後、行政と民間が協力して導入事例が増えていくと見られている。観光業界では特に、JTBグループが積極的に同サービスの導入を行政に働きかけている。
コミュニティサイクルは、行政が温室効果ガスの削減や中心市街地の回遊性向上、観光振興を目的に、自家用車から自転車の利用へ転換を促すため、近年導入するケースが増えている。
JTB九州は来年3月、鹿児島市と共同でコミュニティサイクル「かごりん」を開始する。JR鹿児島中央駅や市役所など市内20カ所にサイクルポートを設置、174台の貸し出し用自転車を用意する。どこのサイクルポートでも貸し出し・返却が可能で、利用には基本料金(1日200円、1カ月千円で30分以内の利用は何度でも無料)と追加料金(30分ごとに100円)の合計金額が必要。
利用者は、サイクルポートに設置した端末機に携帯電話番号を入力し、クレジットカードか現金で精算する。同社は、利用者が多く見込まれるサイクルポートにデジタルサイネージ(電子看板)を設置して観光案内情報を掲載したり、スマートフォンによる多言語利用案内サービスを導入したりするなど、観光分野に重点を置いた施策を実施する。
各地のコミュニティサイクル事業にはJTBグループのほか、観光業界以外の他社も参入して激しい競争が続き、採算も厳しいなど課題も多い。
しかし、地球温暖化への懸念から、行政が事業推進に積極的になっているという追い風も続く。東京都も2020年東京五輪・パラリンピック開催に合わせた目玉事業として準備を進めている。
一時は撤退も検討していたJTBグループも、各方面からの強い要請を受けてコスト低減策などを進め、各地で本格導入の働きかけを行っている。