近畿日本ツーリスト東北(KNT東北)が8月29日から9月1日まで、初めて全社員を対象とした研修会「デスティネーション研究会」を開催した。旅行会社が全社員を集めて泊まり込みで研修を行うことは珍しい。野崎佳政社長は「東北の地域会社として地域を知ること、域内販売の重要性を感じること、普段会うことのない仲間の顔を知ることが目的」と説明する。
対象は、一部の管理職や期間中に業務を離れられない社員、別日程で研修を受ける教育旅行担当者を除く全社員。1泊2日の日程で、前半が秋田県男鹿温泉、後半が福島県会津で開催、それぞれ70人近い社員が参加した。「震災の影響で落ち込みが大きかった秋田と福島を会場に選んだ」(東北仕入販売センターの岡田裕明所長)という。
31日の福島研修初日は、まず「地域を知る」を目的に会津藩校「日新館」(会津若松市)を見学。初めて来た社員も多く、珍しい展示物に興味深く見入っていた。さらに、同市八重の桜プロジェクト対策室長の江川忠氏が来年のNHK大河ドラマを生かした誘客策について講演。県観光物産交流協会教育旅行担当の関根文恵氏が福島県の観光の現状について解説した。
その後、標高1千メートルを超える山中にある「森の旅亭マウント磐梯」(猪苗代町)に場所を移し、個人部門、団体部門に分かれて分科会を開催。
社員らは、「フルーツ」「歴史」「グルメ」など福島の魅力を挙げる一方で、福島の現状について客からの質問に答えられるか自問。旅行会社社員として正確な情報把握が必要なことを再確認した。
さらに、これからの福島に必要な商品について検討に入り、「忘年会や同窓会プランを重点とする」「旅館に絵はがきを置き投函してもらうことが『安全宣言』になる」「豊かな自然を活用したハイキングプランを増やす」などのアイデアが出された。
9月1日は前日とは異なり、野外での体験活動。五色沼散策や観光果樹園での収穫作業など、体を動かして福島の自然を体感した。
野崎社長は「店頭販売、商品企画、仕入れなど、業務の異なる社員同士が意見を交換することが重要。自分の意見が商品造成に反映されたら、その社員の商品への思い入れはこれまでとは違ってくる」と研修の意義を強調。研修で生まれたアイデアを基に企画商品を作る方針を明らかにした。
同社は研究会を来年以降も続ける方針。野崎社長は「3年で東北全県を回ることになる。自分の目で見てリアル体験をすることによって、具体的な企画を作り、ネットに対抗する総合旅行会社として、お客さまに正確な情報をお伝えできる」と話している。
さまざまな意見が交わされた個人旅行事業部門の分科会