経験豊かなシニアの力で観光産業を活性化しよう──。観光業界のOBや学識経験者などで構成するNPO法人シニア・マイスター・ネットワーク(作古貞義理事長=流通科学大学名誉教授)は12日、創立1周年記念セミナー「美しい国日本の観光を考える」を都内で開いた。宿泊業界を中心に120人が参加した。
基調講演では花角英世・国土交通省総合政策局観光事業課長が「観光政策と課題」と題して観光立国を推進する国交省の観光行政の現状を解説。「観光は幅が広い。いま関係各省が協力しながらオール霞が関で観光行政をすすめている」と力を込めた。
続いて大和証券SMBCプリンシパル・インベストメンツ、ホスピタリティ・ビジネス投資部部長の會田英正氏が課題講演「ホスピタリティ・ビジネス宛投資への取り組み」で登壇。産業再生機構などと連携して行ってきた栃木県の温泉旅館6社の再生支援の内容や、大手ホテルチェーン、グランビスタホテル&リゾート(旧三井観光開発)の経営再建支援の仕組みなどを説明した。「投資後3〜7年程度で投資収益の実現(EXIT=出口)をめざす」(同氏)など、旅館・ホテルに投資するファンド側の立場と行動様式を話した。
シンポジウム「観光業界シニア層の利活用」では、作古理事長をコーディネーターに、パネラーとして村尾成文氏(副理事長=流通科学大学名誉教授、国際観光施設協会会長)、太田進氏(理事=オータパブリケーションズ社長)、小原健史氏(全旅連前会長、和多屋別荘社長)、志賀恵子氏(ブライダル産業新聞社社長)、江口恒明(理事=観光経済新聞社社長)の5人が参加した。
「経験豊かで元気なシニア層の利活用なしに観光立国は成立しえない」(村尾)、「シニア層はマニュアルに書いていないノウハウを持っている。自分の培ったスペシャリティに自信があれば復帰すべき」(志賀)、「欧州のホテルではシニアがサービスの鍵を握っている」(太田)、「年齢を重ねたから技術が上がるというわけではない。大事なのは強い目的意識」(小原)、「団塊の世代が定年を迎えてもまだ若い。あと10年は働ける」(江口)など様々な意見が出され、”シニア層の利活用”を大いに議論した。
シニア・マイスター・ネットワークは、観光関連産業OBのシニア達の能力活用による社会貢献を目的に設立、昨年3月に東京都に認証された特定非営利活動法人(NPO)。
作古理事長