Trip.comアジア太平洋地域国際市場担当アシスタントバイスプレジデント ルー・イー氏に聞く 春節の人気旅行先1位は日本


ルー・イー氏

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CSにAIで対応時間短縮 ライブコマース事業を拡大

 ――今年の春節期間中(1月28日~2月4日)、世界中を旅した中国人観光客の数は過去最高を記録した。日本市場での実績は。

 「中国人の海外旅行は、世界全体で増加している。日本市場における、春節期間中の中国人観光客数は前年比90%増、約2倍となった。春節は中国だけでなく、韓国、シンガポール、マレーシアなどでも祝日となるため、これらの市場を含めた日本への観光客数は74%増加した。トリップドットコムのプラットフォームから見ると、春節期間中の中国人観光客の目的地は、1位日本、2位タイ、3位マレーシアだった。日本の観光地では、東京、大阪、名古屋、札幌、京都が人気だ」

 ――日本では春節時期のインバウンドで「オーバーツーリズム」を喧伝(けんでん)するメディアもあった。日本の観光地・宿泊施設は、日本人の休日(週末、祝祭日)に重ならない時期や平日に、集中的にではなく、まんべんなくインバウンド客が来てくれて、需要が分散化されるのがベストだと考えている。

 「確かに、観光客はまず主要都市に集中する。この現状を変えるのは難しいが、トリップドットコムではさまざまな取り組みを行っている。例えば、トリップベストというランキングで地方都市の魅力を発信したり、大型連休に合わせてオフシーズンの旅行を提案したり、地方のホテルの割引を提供したりしている。また、複数の都市を組み合わせた旅行プランを提供することで、ユーザーにメリットを与え、地方への観光客誘致を促進している。空港が主要都市に集中していることも、地方への観光客誘致を難しくしている要因の一つだ」

 ――トリップドットコムは、JTBと宿泊在庫やマーケティングでさまざまな連携をしている。

 「JTBは日本の旅行業界において重要なプレイヤーだ。トリップドットコムはJTBをリスペクトしており、旅行業界全体を盛り上げるために協力している。またJTBだけでなく、さまざまな日本の旅行会社、宿泊施設、観光行政・自治体、旅客運輸会社などと連携し、日本の観光業界の発展、観光振興による地域活性化に積極的に関わらせていただいている」

 ――カスタマーサポート(CS)では、多言語対応はもちろんのこと、AI導入も進んでいると聞いた。CS分野でAIをどのように活用しているのか。

 「トリップドットコムでは、AIをCSに積極的に導入している。AIの活用により、お客さまに必要な情報を迅速かつ正確に提供し、オペレーターの業務効率を向上させることができる。例えば、お客さまからの問い合わせに対して、必要な情報をAIが探し出し、オペレーターに提供することで、対応時間を短縮することができる。また航空券とホテルを同時に予約したお客さまが、航空券の変更を希望された場合に、AIがホテルの予約変更も同時に処理することで、お客さまの手間を省くことができる」

 ――ライブコマースがますます好調だとうかがった。上海だけでなくバンコクにもライブ配信センターをお持ちとか。

 「ライブコマースは、コロナ禍中に始めた取り組みだ。旅行需要が減少した状況下で、お客さまに旅行を提案する有効な手段となった。イメージとしては日本のテレビショッピング。オンラインのライブ配信で旅行商品を紹介し、オンライン即売する。バンコクにライブ配信センターを設立した理由は、中国ではライブコマースを通じて旅行商品を購入することに慣れている人が多く、海外でも同様のニーズがあると考えたためだ。バンコクのライブ配信センターでは、タイのホテルだけでなく、日本や韓国のホテルも販売している。予約変更やキャンセルも無料で対応している。今後は、他の国にもライブ配信センターを設立し、ブランド力を高めていきたいと考えている」

ルー・イー(Ru Yi)氏 トリップドットコム・シンガポール創設メンバーで、リージョナルゼネラルマネージャー兼シンガポールホテル事業部責任者を務めた後、アジアパシフィックリージョン・インターナショナルマーケット・アシスタントバイスプレジデント(現職)。シンガポール、日本、マレーシア、タイなどアジアのトリップドットコムのホテル事業部の戦略的目標を策定し、組織の成長を促進しいる。リゾートワールド・セントーサ、セントーサ・レジャーグループ、ファーイースト・オーガニゼーションで重要職務を歴任後、トリップドットコムに入社。シンガポールマネージメントユニバーシティMBA。

ルー・イー氏ルー・イー氏

【聞き手・kankokeizai.com編集長 江口英一】

 
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