観光庁は、能登半島地震に伴う観光支援策として、北陸4県を対象に3~4月に「北陸応援割」を実施する。予算額は旅行費用の割引原資や事務局経費を含めて94億4千万円。事務局の設置など実施体制は各県の判断となるが、新型コロナ対策として各県で実施された「全国旅行支援」の枠組みを生かすことが想定されている。被害が甚大な能登地域については、別途、より手厚い支援策を検討し、観光客の受け入れが可能になった段階で実施する方針だ。
「北陸応援割」は、政府が策定した「被災者の生活となりわい支援のためのパッケージ」に盛り込まれた。財源は2023年度予算の予備費が充てられる。石川、富山、福井、新潟の4県が対象で、国内旅行、訪日旅行の旅行・宿泊料金の割引を支援する。具体的な開始日は未定だが、3~4月、ゴールデンウイーク前まで実施する方向だ。
補助率は1人1泊当たり最大50%。補助上限額は、1泊の宿泊または1泊の交通付き旅行商品で2万円、2泊以上の交通付き旅行商品で3万円、宿泊地が2県以上の周遊型旅行商品で3万5千円。日帰り旅行は対象外。
観光庁によると、既存の宿泊・旅行予約に対する割引適用の取り扱いについては検討中だが、新たな観光需要の喚起を目指したい考え。また、「全国旅行支援」などに導入された買い物や飲食に利用できるクーポンの提供などは実施しない。
能登地域については、当面の「北陸応援割」から除外するわけではないが、復旧・復興が進み、観光客の受け入れが可能になった段階で、別途、適切な時期に、さらに手厚い観光需要喚起を実施する方針。割引率70%の適用なども念頭に、観光庁では、復旧・復興の状況を見ながら、具体的な支援策を検討する。
観光支援策では「北陸応援割」以外に、風評被害対策の訪日観光プロモーションに約10億円を計上した。日本政府観光局(JNTO)による情報発信、インフルエンサー招請、航空会社などとの共同広告を実施する。
早期に需要喚起 九州割がモデル
能登半島地震における観光支援策のモデルとなるのが、2016年4月の熊本地震に際して実施された旅行割引「九州ふっこう割」だ。全体事業費は約180億円。直接被害、キャンセルなどの間接被害が大きかった熊本県、大分県だけでなく、周遊旅行への影響から九州7県が対象となった。16年7~9月、10~12月の2期制で、後半には割引率を引き下げた。県ごとにも割引率に差を付け、熊本県、大分県の割引率は最大70%だった。割引支援の早期実施、九州一体のプロモーションによって、風評を払拭し、地域経済への影響を低減させた。