観光地での夕食は宿泊する部屋で食べたい
旅先での食事は大きな楽しみの一つ。旅に関するアンケートでは「食」は常に旅の目的の上位に挙げられる。旅行者は旅先で食事をするとき、どんなものをどのように選んでいるのだろうか。JTBは、「食と旅に関する調査」を実施した。
国内旅行に行くときにどんなことをテーマにするか聞いた。多い順に三つ選んでもらったところ、どの年代も「温泉(64・4%)」が最も多く、「食・グルメ(55・0%)」が続いた。年代別にみてみると、20代、30代では「温泉」より「食・グルメ」の方が高い。地域振興で食をテーマにする場合は、20代、30代に効果が期待できそうだ=図1。
旅行先での「宿泊施設」選びは、食事とどのような関係があるのだろうか。町の中心部で泊まる場合と地方の観光地で泊まる場合に分けて、宿泊施設の決定に重視することを聞いた。
結果はいずれも「価格」が一番だったが、町の中心部の宿泊施設の方が、価格を重視する傾向があり(町の中心部67・3%、地方の観光地58・1%)、「駅に近い(37・4%)」「食事の評判が良い(36・2%)」がこれに続いた=図2。地方の観光地に立地する宿泊施設の場合は、「価格」に続き、「食事の評判がよい(48・5%)」「観光場所に近い(44・7%)」が上位となった=図3。宿泊選びは、地方の観光地で食事の影響はより大きい一方で、価格は多少呑み込む気持ちが強いようだ。
一方、「飲食街に近い」は、町の中心部と地方の観光地ではあまり差がない結果となった。
食のこだわりは「名物料理」
宿泊施設以外での食事はどのように決めているのか。全体では「行き当たりばったり(52・1%)」「出発前に食事をしたいエリアだけ決める(45・5%)」が上位だが、年代別にみると、「エリアだけ決める」は若者に多く、「行き当たりばったり」は60代、70代で多かった=図4。年齢の上昇と共に食への関心の優先順位が下がることに加え、その日の体調によって食事内容を決めたいこともあるのではないだろうか。
次に旅先で「こだわりを持って食べているもの」を聞いたところ、「料理」については、「地元グルメなど名物料理(60・0%)」「訪問する土地の郷土料理(54・5%)」「日常では食べられない料理(35・0%)」が上位だった=図5。年代別では、若くなるほど「自分が日常では食べない豪華な料理」へのこだわりが高く、B級グルメよりこだわる傾向が見られた。また20代、30代女性は「ソフトクリームなど食べ歩きできるもの」も多かった。
食材や調理方法については、「地元の食材を使った料理(41・7%)」「季節限定の旬の食材を使った料理(39・5%)」が多く、場所については、年齢が高くなると、「地元の人に人気の店や老舗に行く」ことや「その土地にしかないレストランでの料理」「観光客や団体向けでないところ」にもこだわりが見られた。
宿泊地で夕食をとる際、食事の内容以外についてどう思っているか。町の中心部の場合は、「宿泊施設周辺の有名な飲食街に出かけたい(27・9%)」「決まった時間ではなく自分の好きな時間に食べたい(25・5%)」「個室の食事処で食事したい(24・1%)」が上位=図6。地方の観光地では、宿泊施設で食事をすることを前提としている様子で、「宿泊する部屋で食事したい(34・7%)」「個室の食事処で食事したい(29・9%)」「浴衣で食事できるのが良い(27・7%)」が上位だった=図7。「宿泊する部屋で食事したい」は、30代、40代でも多く、また30代は「乳幼児や子供向けの設備が整っているとよい」が高く、子育て世代独特の希望が見られる。年齢が上がると「座敷に座るより椅子・テーブルで食事」を望むことも分かった。
旅先での食に関わる体験や交流について「これからやってみたいこと」を聞いたところ、約4割が「ない」の回答だったが、やってみたいことの中では、「果物狩りや野菜の収穫(22・5%)」「地方の郷土料理作り・そばうち体験(22・4%)」「漁師・農家の人と料理をして食べる(20・5%)」が多かった=図8。性・年代別にみると、特に20代で「地方の郷土料理作り・そばうち体験」の希望が高い。「漁師や農家の人と一緒に食事をつくる(20・5%)」は20代、30代、60代、70代に人気が高く、地域間の交流だけではなく、世代間交流として活用することも期待できるかもしれない。