【韓国現地ルポ】古代日本と深いゆかりー百済の世界遺産巡る 神崎公一


百済文化祭は古代と最新の技術が融合したイベント

秋に歴史文化イベント「大百済展」

 韓国中西部、忠清南道の公州(こんじゅ)市と扶余(ぷよ)郡は、韓国三国時代に高句麗、新羅と覇を競った百済王朝の地。百済は古代日本ともゆかりが深く、歴史好きは訪れてみる価値があるだろう。

 また、両地域を舞台に今年9月23日から10月9日まで、韓国最大の歴史文化イベント「2023大百済典」(百済文化祭)が開催される。この催しは、百済の歴史と文化をデジタルコンテンツで見せようとの企画など、盛りだくさんな内容だ。それに先立ち、公州市と扶余郡にある5カ所の世界遺産を訪ね、古代史に触れてみた。

 

百済文化祭は古代と最新の技術が融合したイベント

 ソウルから高速バスで1時間半の公州市に到着。世界遺産の栄山里古墳群に向かった。ここに百済の武寧王(むりょんわん、在位501~523年)と王妃の眠る墓陵がある。1971年、工事中に偶然見つかり、「世紀の大発見」と注目された。盗掘を免れたため、金製装身具などの副葬品が見つかった。出土した木棺は日本の高野山のコウヤマキである。ちなみに武寧王は日本の大和政権に儒教の五経博士を派遣している。これらの出土品は国立公州博物館に展示されている。

 

公山城前に立つ武寧王像。周辺はカフェ通りとしてにぎわう

 次は、ここも世界遺産である公山城(こんさんそん)を訪ねた。高句麗に追われ、都を現在のソウルから公州に移して造営したのがこの公山城。周囲に城壁をめぐらした王城で、1時間ほどで歩いて回れる。公山城前のロータリーには巨大な武寧王像が睥睨(へいげい)している。歩き疲れた向きには公州の栗を使ったスイーツや菓子を扱うカフェが立ち並び、一息入れることができる。

 さらに世界遺産巡りは続く。韓国仏教1000年の古刹、麻谷寺(まごくさ)。説法を聞く人々の姿が、一面を埋め尽くす麻畑のようだったことから命名されたという。境内はゆっくり巡って約1時間。

 公州市から南下し扶余郡に移動した。百済・日本と新羅・唐の連合軍が衝突した663年の白村江(はくすきのえ)戦いの場だ。滔々(とうとう)と流れる白馬江には遊覧船か水陸両用バスが運航している。戦火に追われた女性たちが崖から身を投げる様子は花が散るようだったことから「落花岩」と呼ばれる岩山が水上から眺められる。

 

定林寺址の五層石塔は街のランドマーク

 扶余郡の世界遺産は官北里遺跡と百済伽藍の典型である定林寺址の2カ所。官北里遺跡は戦火に追われ都を泗泚(さび)(現在の扶余)に移した際の天然の要塞、扶蘇山城(ぷそさんそん)の麓一帯から発掘された。まだ調査が終わっておらず、発掘が続いているが、百済史に関わる多くの遺跡が残る。定林寺址に立つ国宝の五層石塔には侵攻してきた唐による戦勝碑銘が刻まれていて、百済滅亡の歴史を物語っている。

(日本旅行作家協会理事、元旅行読売出版社社長)

 
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