コンサルタントのリョケンはこのほど、全国の旅館を対象に四半期ごとに実施している短期観測アンケートの、06年12月分の結果を公表した。それによると、06年秋(9~11月)の自館の基本宿泊単価が「上昇傾向」とする施設の割合は40.2%で、前年調査の21.5%を大幅に上回った。回答旅館から「単価アップの施策で利益確保を図った」との意見が多く上がった。ただ、客数は「減少傾向」とする施設が前年に比べ大きく増えた。 調査は昨年12月、全国の旅館678軒を対象に実施した。回答施設は97軒で、回答率14.3%。 昨年秋の基本宿泊単価は「上昇傾向」40.2%、「横ばい傾向」49.5%、「下降傾向」10.3%の回答率だった。前年に比べ、「上昇─」が18.7ポイントと大幅に上回ったほか、「横ばい─」が前年の55.9%から6.4ポイント減少。「下降─」は前年の22.6%から12.3ポイントと大幅に減少した。 総宿泊単価でも「上昇─」が前年の20.4%を大きく上回る35.1%を記録。「横ばい─」は前年の54.8%から微減の49.5%、「下降─」も前年の24.7%を下回る15.5%だった。 「客室・ダイニング・大浴場などのリニューアルの実施や高価格商品の開発、低価格の団体・低価格商品の見直しなど、単価アップの施策により収益確保を図っているという意見が多くあった」(リョケン)。 一方、自館の客数傾向は、「増加傾向」34.0%、「横ばい傾向」27.8%、「減少傾向」38.1%の回答。前年に比べ、「増加─」が13.3ポイントの大幅減、「減少─」が20.9ポイントの大幅増だった。 客数減、単価増の傾向が続く冬の見込み 今冬(1~3月)の見込みを12月時点で聞いたところ、基本宿泊単価で「上昇傾向」19.8%、「横ばい傾向」70.8%、「下降傾向」9.4%の回答率。「横ばい─」が多数を占めるが、例年に比べ「上昇─」の割合が増加、「下降─」の割合が減少した。 自館の客数は「増加傾向」16.7%、「横ばい傾向」52.1%、「減少傾向」31.3%。前年に比べ、「減少─」が約10ポイント増加している。団体1組当たりの人員の減少や、低料金団体の見直しなどの影響が出ているものとみられる。 ここ2~3年続いた予約の間際化に困惑する声が今回なかった。「間際化の状況はすでに当たり前のものとなり、ネット販売の強化など、直前集客施策が日常化した結果といえる」とリョケンでは指摘している。 客単価、客数とも下降傾向が微増 忘新年会の見通し 忘新年会の見通しを12月時点で聞いたところ、客単価(料理価格本位で調査)は「上昇傾向」11.6%、「横ばい傾向」68.4%、「下降傾向」20.0%。前年に比べ「上昇─」が微減、「下降─」が微増だった。 客数も同様の傾向。減少要因として、公的団体の減少、旅館以外での忘新年会の実施の増加などが挙げられる。
全国旅館生活衛生同業組合連合会(全旅連、小原健史会長=佐賀県・和多屋別荘)は1月23日、大阪府池田市の不死王閣で「女性経営者の会.大阪オープンセミナー」を開いた。滋賀県雄琴温泉.湯元舘の針谷了社長が「実学・旅館経営」をテーマに、自館が経営の現場で実際に取り組んでいる事例を中心に講演した。旅館経営者、協賛企業など約70人が参加した。 針谷氏は旅館経営には「心が積極的であることが大切」と指摘。経営力の向上を図るには経営理念、方針、目標を明確にし、料理の盛り付け一つについても全社統一のルールに則り社員が行動するべきとした。 また、今ある経営資源の見直しも必要と、過去に旅館の近くの名庭園を開放してもらい、年間2万人の利用者を超えるヒット企画が誕生した事例を紹介した。 さらに「人の差は教育の差」とし、研修時に使用する研修日報と新入社員研修報告書を紹介。そのほか、全社員で実践している各現場での問題点と対策法を記入した「改善メモ」や、社員同士で感謝の気持ちを表す「ありがとうカード」を紹介。「ありがとうカード」は、記入した人には月に千円を限度に1枚に付き100円、された人には一枚に付き100円を支給するユニークなもの。 その他、「勘経営」からの脱却を図るために「損益計算書より賃借対照表を重視すべき」「毎月在庫確認をし、月次決算を行う」など、さまざまな提言を行った。 第2部では全旅連の小原健史会長から全旅連の活動報告が行われ、各旅館の経営者が活発な意見交換を展開した。 全旅連の女性経営者の会(略称=JKK)は、女性経営者ならではの悩みを解決する場として、04年に有志で発足。今回はオープンセミナーとして、男性を含めて会員以外も参加できるセミナーとした。