国土交通省は07年度、ニューツーリズム旅行商品の創出・流通を支援する。対象はヘルスツーリズムやエコツーリズム、長期滞在観光、産業観光など地域密着型の新分野の旅行商品。地域が企画した、一定水準を満たす商品をインターネット上に構築するデータベース(DB)に集積、旅行会社に情報提供する事業を通じて市場の形成を促進する。併せて、地域の商品創出を後押しするため、モニターツアーなどを行う実証事業も実施する。 「ニューツーリズム創出・流通促進事業」の名称で、総合政策局観光部門の07年度予算案に新規事業として8012万3千円が計上されている。観光振興、地域活性化につなげるのが目的だ。 旅行スタイルが個人型、体験型へと転換する中、高い付加価値を持つニューツーリズムへの注目は高まっている。ただ、地域密着型商品の市場は、多品種、小ロットという特性から、供給の仕組みや流通に課題も多い。 そこで国の支援事業として市場の形成、活性化を図る。データベースのイメージは、地域が企画した旅行商品のデータをネット上に構築した「市場」に「上場」してもらう。この情報を旅行会社が検索、利用するというもの。「当面はBtoB(企業間取引)として、商品を造る側の地域と、販売する側の旅行会社との出会いの場とする。次の段階として一般の消費者からの利用も検討したい」(観光事業課)。 商品を創出する地域の側には、観光協会、商工会、NPO法人、旅館・ホテル、観光・交通分野の地元企業などが想定されるが、具体的な「上場」の資格、旅行商品の基準などは今後詰める。07年度の運用の経過をふまえ、次年度へも事業を継続させたい考えだ。 実証事業については、地域からの公募の上、支援事業を決定。モニター旅行者の派遣などでニーズの分析や課題の洗い出しを行い、データベースへの「上場」につなげる。
国土交通省は9日、07年度「観光地域づくり実践プラン」の募集を始めた。地域を選定して、ソフト、ハード、両面の施策から事業の推進を支援する。 「国際競争力のある観光づくり」の推進に向けた施策の1つとして、外客の増加、地域経済の活性化が目的。05年度に始まり、これまでに37地域を選定している。 実践プランの進め方は、市町村や観光協会、NPOなどで地域に協議会を組織、基本構想を作成して応募。選定後は、各事業主体がアクションプログラムを策定し事業を推進、これを国交省が総合的に支援する。 案件登録は3月9日まで、応募締め切りは4月5日。6月下旬以降、地域を選定する。応募書類は国交省ホームページから入手できる。
国土交通省は、「旅館業に係る金融に関する研究会」を発足させ、14日、旅館団体の会員などを委員に初会合を開いた。旅行形態が変化する中、旅館業はニーズに対応した施設の整備や更新をせまられているが、金融機関からの資金調達には困難も多い。研究会では、問題点や施策のあり方などを検討し、08年度の制度改正要望につなげていく。 国交省の花角英世観光事業課長は「観光客受け入れの顔である旅館の経営がきびしい。地域の活性化からも、観光立国の推進からも重要な問題。ともに知恵を出し合いたい」とあいさつ。委員からは現状について報告があった。6月までに計4~5回の開催を予定。テーマに応じて金融庁や中小企業庁、中小企業金融公庫などの担当者とも意見交換する考えだ。 旅館業界は、団体客から個人客への移行といった旅行形態の変化、価格競争の激化、宿泊需要の減少などにさらされ、装置産業であるために過去の借入金も重く、経営面に問題を抱える旅館が少なくない。さらに地方金融機関の不良債権処理、公的金融機関の融資政策など、金融をめぐる環境の変化に設備投資もままならない状況がある。 国交省では07年度制度改正で、旅館団体なども要望した、中小企業金融公庫の特別貸付の融資期間延長について最長20年から25年にするよう求めたが、認められなかった。 委員構成は次の通り。 小原健史(全国旅館生活衛生同業組合連合会会長、和多屋別荘社長)▽岩井美晴(全国旅館生活衛生同業組合連合会経営改善・金融委員長、奥城崎シーサイドホテル社長)▽八木眞一郎(国際観光旅館連盟理事・中部支部副支部長、あわらの宿八木社長)▽尾花朋之(スパークス取締役)▽斎藤源久(日本観光旅館連盟常務理事・東京支部副支部長、ホテルニューショーヘイ社長)▽川野雅之(日本観光旅館連盟企業再建問題専門委員、川野コンサルティング社長)、花角英世(国交省観光事業課長)=敬称略
中央環境審議会は6日、温泉の枯渇を防ぐための指針(ガイドライン)作りや、温泉事業者に温泉成分の定期的な再分析の義務付けを求める報告書をまとめ、若林正俊環境相に答申した。同省はこの答申を踏まえ、温泉法の一部を改正する法案を今国会に提出する。答申は再分析について「10年ごとに行うことが適当」としており、違反すれば罰則が科せられる。また再分析の結果、温泉の条件を満たさなかった場合は、利用許可の失効という事態も生じる。 同審議会は自然環境部会温泉小委員会(委員長・熊谷洋一東京農大教授)で審議を重ねていた。 答申は、(1)温泉資源の保護対策(2)成分にかかる情報提供(3)魅力ある温泉地づくり──を骨子に、現状と対応、支援のあり方を示した。 答申は、都道府県が掘削許可を出す際のガイドラインを国が作成することを求めた。温泉資源や地下水に関する科学的知見、都道府県における対策の優良事例を盛り込み「今後必要な技術的・専門的な検討を行って作成すべき」とし、基本的な考え方として(1)資源への影響が生じる可能性が高い場合には掘削、採取量などを制限する(2)採取開始後におけるモニタリングに基づいて、事後的に管理する手法も活用する──ことなどを挙げた。 具体的には、過去に枯渇現象が発生したり、地域の温泉利用量が限界に達している地域は「特別区域」とし、掘削を原則禁止することや、既存温泉からの距離による規制なども盛り込んだ。 同省は年内にもガイドラインを策定し、自治体に通知する。ガイドラインは資源保護のための条例や要綱を定める際の参考にしてもらう方針だ。 同省調査で、温泉旅館などに掲示されている成分分析の年月日が、10年以上経過しているものが全体の4割近くを占めていることが分かり、温泉利用事業者に対し、定期的な温泉成分の再分析や、その分析結果に基づく掲示を義務付けるようにする。 再分析を行う期間について答申は「10年ごとに行うことが適当」としており、同省もこの線で法改正する考えだ。違反すれば罰金(30万円程度)が科せられ、再分析で温泉でないと判断されれば、看板が掲げられなくなる。 分析機関が限られるため、施行後2年の猶予期間を設ける。 魅力ある温泉地づくりでは、温泉事業者、地域住民、団体などが一体となって取り組むことが必要とした上で、施策を立案・施行する市町村に対しては「入湯税(目的税)の収入を温泉資源保護や観光振興策の推進に重点的に活用されることを望む」と明記、一般財源化の動きをけん制した。 また、答申は「環境への影響等の公益侵害の防止」の中で、侵害例として「温泉の放流による水質悪化などの環境影響」を挙げた。侵害の恐れがある場合は「掘削等の許可に当たり、公益侵害が発生しないような管理手法を許可条件とするなどにより対応」するよう求めた。