国土交通省は4月27日、06年度国土交通白書を発表した。年度ごとのトピックスを掘り下げて施策を提示する第1部と、分野別に動向や施策を示した第2部で構成。観光については、「地域の活力向上」をテーマに掲げた第1部の中で、地域活性化策の4項目の1つとして「地域の交流人口拡大に向けた観光立国の推進」を挙げた。第2部の中では、「観光立国の実現と美しい国づくり」と題し、観光産業の動向、各種の観光振興策を列挙した。 地域活性化策の4項目のうち「地域の交流人口拡大に向けた観光立国の推進」は3番目に挙げた。施策の内容は、(1)魅力ある観光地づくり(観光ルネサンス事業の活用、人材の育成、観光地へのアクセスの強化など)(2)外国人観光客の訪日促進(ビジット・ジャパン・キャンペーン〈VJC〉の高度化、受け入れ環境の整備)(3)ツーリズムの活性化(地域独自の魅力を生かしたニューツーリズムの促進)──を提示した。 分野別の第2部では、「観光立国の実現と美しい国づくり」としてまとめた。観光立国の意義について、経済波及効果の大きさ、国際社会における相互理解への貢献を指摘。各施策の展開では、「国際観光交流の拡大」「魅力ある観光地・観光産業の創出等」「良好な景観形成等美しい国づくり」で括って記述した。 「国際観光交流の拡大」では、VJCの高度化施策、受け入れ態勢の整備策などを列挙した。日中韓の三国間の交流人口を10年までに1700万人以上、日中間を500万人以上、また、主要な国際会議の開催件数を今後5年以内に5割以上増加させる目標などにも触れた。 「魅力ある観光地・観光産業の創出等」では、観光ルネサンス事業などの継続推進をはじめ各種施策を示した。また、旅行業法の省令改正で第3種旅行業者に一定条件下で募集型企画旅行を解禁したことに伴い、地域密着型の旅行商品の創出、流通促進への期待に言及した。 観光施策に加えて、「良好な景観形成等美しい国づくり」として、景観緑三法に基づく施策の推進を挙げたほか、今年4月に有識者会議が提言をまとめた「日本風景街道」の制度化に向けた動きを紹介した。
政府は、「美しい国づくり」プロジェクトの第1弾として、「美しい日本の粋(すい)」を募集している。自然、景観、文化、伝統、芸術、技術、さらには気質や感性など、あらゆるテーマに対象を広げ、“日本らしさ”“日本ならでは”のものを募り、事業の企画立案、政策提言につなげる。内閣官房に設置された「美しい国づくり」推進室では、観光業界からの応募も呼びかけている。公式ホームページ、郵送で受け付け、期間は6月22日まで。 「美しい国」は、安倍首相が著書や所信表明演説などで使ったフレーズで、その理念は(1)文化、伝統、自然、歴史を大切にする国(2)自由な社会を基本とし、規律を知る、凛(りん)とした国(3)未来へ向かって成長するエネルギーを持ち続ける国(4)世界に信頼され、尊敬され、愛される、リーダーシップのある国──の4本柱とされる。 安倍首相は今年1月の施政方針で「わが国の理念、目指すべき方向、日本らしさについて、わが国の英知を集め、日本のみでなく世界中に分かりやすく理解されるよう、戦略的に内外に発信する新たなプロジェクトを立ち上げる」と述べた。 これを受けてプロジェクトがスタート。4月には、日本画家の平山郁夫氏を座長に有識者でつくる「美しい国づくり」企画会議を立ち上げた。メンバーには、内閣官房長官、内閣総理大臣補佐官も加わっている。 今回の募集内容は、(1)日本の“らしさ”“ならでは”である「美しい日本の粋」とは何か(日本語で記入、31字以内)(2)その理由、または、それは日々の暮らしの中でどう表れているか(同、100字以内)──。国籍や年齢などに応募資格はない。 詳しくは、公式ホームページ(http://www.kantei.go.jp/be-nippon)まで。
冬柴鐵三国土交通・観光立国担当相は4月29日~5月2日にインドを訪問し、マンモハン・シン首相をはじめ政府閣僚と会談した。今年の日印観光交流年を契機に、現在16万人の相互交流人口を10年に30万人、15年に50万人に増やすため、観光交流拡大への努力を再確認した。査証発給の手続き緩和も双方が努力することで一致した。 冬柴大臣は、30日にシン首相、ソニ観光・文化大臣、1日にレディ都市開発大臣、プラサド鉄道大臣とそれぞれ会談。30日には、日印観光交流年のオープニング式典に出席し、トップセールスを行った。山本繁太郎・国土交通審議官、柴田耕介・総合観光政策審議官らが同行した。 昨年12月には、シン首相が訪日、安倍首相と会談し、「日印戦略的グローバル・パートナーシップ」に向けた共同声明を発表した。これに関連して人的交流の数値目標も合意していた。
第3種旅行業者が一定の条件下で募集型企画旅行を実施できるよう、旅行業法の施行規則が改正され、5月12日施行された。地域特性を生かした旅行商品を創出、流通を促進し、地域観光を活性化させる狙いがある。既存の第3種旅行業者だけでなく、地域の観光資源を熟知した地元の観光協会、NPO法人、宿泊施設などが、第3種に登録し、この新制度を活用することが期待される。 募集型企画旅行が実施できるよう第3種旅行業の業務範囲を拡大したが、基準資産や営業保証金の額、登録要件は現行のまま。基準資産は300万円、営業保証金は年間取引額が2億円未満ならば300万円。第1種、第2種に比べて登録しやすいため、旅行会社以外の登録も見込まれる。ただし、募集型企画旅行を実施するには、一定の条件が付く。旅行の実施区域の限定と、旅行代金の支払い時期の制限だ。 第3種が実施できる募集型企画旅行の区域は出発地、目的地、宿泊地、帰着地が、自らの営業所が所在する市町村とそれに隣接する市町村の範囲内に収まっている必要がある。この範囲は都道府県をまたぐこともできる。離島を含む区域については定期旅客船の航路などに基づき特定のルールを設けている。 旅行代金については、申込金(代金の20%以内)を除き旅行開始日以降の支払いとなり、開始日より前に受け取ることはできないことにした。 また、この制度改正に伴い、旅行業法施行要領、標準旅行業約款、企画旅行に関する広告の表示基準等の関連項目を改正した。第3種が募集型企画旅行を実施する場合、広告や取引条件説明書面には、実施区域や旅行代金の条件に関する表示基準を新たに設けた。 制度改正により、地域の新たな観光需要の創出、観光を通じた地域の活性化が期待される。国土交通省観光事業課では「地域独自の魅力を生かした旅行商品、多様な旅行目的に対応したきめ細やかで高付加価値な旅行商品の提供が求められている中、地域の観光魅力を熟知した地元観光関係者の主体的な取り組みは不可欠。地元の観光事業者にとっては、1つのビジネスチャンスと言える」と新制度の活用を求めている。