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観光行政 第2423号《2007年6月9日(土)発行》  

国交省が「観光立国推進基本計画案」を公表、数値目標明確化、計画期間は5カ年に

 国土交通省は1日、観光立国推進基本計画案を公表した。計画期間は今年度からの5カ年。観光立国実現への主要目標には、2010年度までに、国内観光旅行の1人当たりの年間宿泊数を06年度推計の2.77泊に対し4泊に、国内の観光旅行消費額を05年度推計の24兆4千億円に対して30兆円とすることなどを盛り込んだ。旅館業に対する施策では、設備投資の資金確保など経営基盤の強化を図り、日本旅館の魅力を向上させることを明記した。交通政策審議会観光分科会に諮った上で、今月中の閣議決定を目指している。

 計画案は、「施策についての基本的な方針」「目標」「総合的・計画的に講ずべき施策」「施策を推進するために必要な事項」の4部で構成。

 目標は施策に応じ数値を含めて掲げているが、観光立国の実現に向けた関係者の取り組みを促進するため、代表的で分かりやすい5項目を「基本的な目標」として設定した。10年度までの目標数値には、国内観光旅行、観光旅行消費額のほか、訪日外客を従来の設定通り年間1千万人とし、将来的には日本人海外旅行者数と同程度にする。また、日本人の海外旅行者数は年間2千万人にする。国際会議の開催件数については、11年度までに5割以上増加させて252件以上とし、アジア最大の開催国を目指すことを盛り込んだ。

 講ずべき施策は、(1)国際競争力の高い魅力ある観光地の形成(2)観光産業の国際競争力の強化と観光の振興に寄与する人材の育成(3)国際観光の振興(4)観光旅行の促進のための環境の整備──の4テーマで示した。

 観光旅行を促進するための環境整備では、休暇の取得促進・分散化、公共施設などのバリアフリー化、ニューツーリズムの創出・流通の促進などの施策を挙げている。

 旅館・ホテルなど宿泊産業に対する施策も4テーマの中でそれぞれ示した。旅館業界の懸案である金融問題に関連する施策では、「我が国の伝統と文化を守り『おもてなしの心』で内外の旅行者を受け入れるという重要な役割を担っている旅館業について、新たな旅行者ニーズに対応した設備投資のための資金の確保など、その経営基盤の強化・確立を図り、日本旅館の魅力の向上を促進する」と明記した。

 宿泊産業のサービスや流通への施策では、実証実験などを通じて「泊食分離」といった新たなサービス提供を推進するとともに、宿泊に関する情報提供の充実や販売方法の改善などに取り組む。



観光立国推進戦略会議、地域活性化へ3施策を提言
地域重視の提言をまとめた戦略会議


 有識者でつくる観光立国推進戦略会議(座長・牛尾治朗ウシオ電機会長)は1日、「地域が輝く『美しい国、日本』の観光立国戦略」として地域活性化の視点を重視した提言をまとめた。提言では、(1)地域固有の宝を生かした、個性豊かな地域づくり(2)システム改革による観光消費の拡大(3)「美しい国、日本」の実現とその戦略的情報発信──の3テーマから取り組みを求めている。

 提言はこれまで検討内容を基に具体的な取り組みを求めたもの。1日に首相官邸で開かれた第9回会合で報告された。

 「地域固有の宝を生かした、個性豊かな地域づくり」では、地域の魅力を最大化することに主眼を置いた。具体的な提言として、地域固有の観光資源を保全・活用するための取り組みの奨励、観光まちづくりを全体で支える持続的地域経営モデルの創出などを挙げた。

 この中では、旅館、町家、産業遺産などの観光資源の活用に向けて、資金協力を含めた企業や市民の参加を奨励することも求めている。

 「システム改革による観光消費の拡大」では、観光産業の生産性向上、旅行を促す環境整備として、(1)観光産業の事業運営の効率化とともに、多様なニーズに応えたサービスの提供・顧客満足度の向上への取り組みを推進(2)消費者の多様な選択を支援する旅行商品情報提供システムやITなどを活用した流通システムの高度化(3)休暇・働き方の多様化の促進を通じた観光需要・消費の拡大──などを示した。ニューツーリズム商品の創出に向け異業種間や産学官の連携も訴えた。

 「『美しい国、日本』の実現とその戦略的情報発信」では、訪日外客の誘致に向けた日本ブランドの海外発信のほか、国際会議などの誘致・開催に向けて国家戦略の策定、実行を求めている。



青森県が観光創業を支援、県あげて観光産業活性化に取り組む

 青森県は今年度、東北新幹線の延伸をにらみ、観光産業の振興策に積極的に取り組む。今年度新たに、ベンチャービジネスなど、商業振興を担当する部署が観光産業に特化した創業支援を行う。県観光局の取り組みとあわせ、全県あげて観光産業の活性化に取り組む構えだ。

 県が新たに実施するのは、観光ビジネスワークショップとフォーラムのほか、創業希望者の事業プランを練り上げ、より実践的なプランにするためのブラッシュアップセミナーと創業補助金の交付事業の4つ。ベンチャービジネスを担当する経営支援課が企画した。

 このうちワークショップは1泊2日の日程で観光地を見学、その地域のビジネスのシーズ(種)や観光地としての課題などを参加者とコーディネーターが話し合うもの。7月14、15日に十和田湖で開催するのを皮切りに、9月から10月にかけて下風呂温泉、浅虫温泉、落合温泉(黒石温泉郷)の4カ所で開く。参加者にビジネスのイメージをふくらませてもらうのが狙い。

 プラッシュアップセミナーの後、11月には創業補助金の申請を受け付ける予定。1件あたり50万円を限度に補助を行う。5件程度への助成を見込んでいる。

 経営支援課では「10年の新幹線青森延伸に向け、県内の観光産業の活性化は必須課題。この事業をきっかけに、創業した事業者が各観光地の空き店舗などに入居し、活性化に一役買ってくれれば」と期待する。



ツアーバス事業者、8割が法令違反──国交省調べで判明

 国土交通省は1日、貸し切りバス316事業者に対して実施した重点監査の結果を発表した。それによると、204事業者(64.6%)が法令違反(道路運送車両法違反)し、ツアーバス事業者については対象84事業者のうち68事業者(81%)で違反が見つかった。同省は違反事業者に改善指導を行うとともに「厳正に行政処分する」(自動車交通局)としている。

 重点監査は4月に実施した。ツアーバス事業者のほか、00年2月以降に新規参入し、監査を実施していない155事業者などに対して行った。

 ツアーバス事業者について見ると、40事業者で過労防止義務違反が確認された。違反件数は224件に達し、中でも拘束時間違反(123件)、連続運転時間違反(71件)が多い。また、31事業者が運行指示書関係違反だった。

 35事業者が運転手の安全や健康状態を確認する点呼を十分にしていない状況も明らかになった。

検討会立ち上げ 国交省
 国土交通省は6日、貸し切りバスの安全対策を考える検討会を立ち上げる。メンバーは次の通り(敬称略)。

 JTB国内企画部長・池田浩▽全国旅行業協会事務局長・小久保正保▽全日本交通運輸産業労働組合協議会事務局次長・坂本榮▽はとバス専務・篠原瑛▽日本バス協会常務理事・野平昭憲▽日本旅行業協会事務局次長・米谷寛美▽同省観光事業課長・花角英世▽同安全監査室長・江角直樹▽同旅客課長・藤田耕三


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