冬柴鐵三国土交通相は25日、中国民用航空総局の楊国慶副局長と北京市内で会談し、羽田〜上海・虹橋空港間の国際旅客チャーター便を今年中に調整が可能ならば10月8日ごろにも開設することで合意した。日中双方2便ずつ、1日計4便を定期的に運航する。また来年の北京五輪に合わせて臨時チャーター便を開設することでも合意した。 羽田〜虹橋間のチャーター便就航は、今年4月の日中首脳会談で合意していたが、開始時期や便数が未定だった。都心に近い両空港にチャーター便が就航することで渡航者の利便性が向上、交流の活性化が期待される。 冬柴大臣は、羽田〜虹橋便について「日中間の交流促進の観点から非常に有意義だ。国交正常化35周年の今年内に、しかも国交正常化の共同声明が調印された9月29日に近い10月8日ごろの実現に向けて、双方が努力する運びになったことは喜びにたえない」と述べた。
国際観光振興機構(JNTO)の間宮忠敏理事長=写真=は15日の会見で、日本経団連などがVJC事務局との一元化を提言していることについて、「(インバウンドについては)国土交通省とVJC実施本部、JNTOの3社でやってきた。今後は個人的な意見だが、センターラインをきっちりするのが必要。諸外国の例を見ても政府観光局を立ててしっかりやっている。合理化するのも含め一本化するのが良い」という認識を示した。 また、10年に訪日外客数1千万人達成に向けては「昨年は9%強の伸びだった。今後の4年間は8%強の伸びがあれば達成すると思うが楽観してはいけない」と述べ、「今年と来年の2年間で、10年までに効果が現れるよう、マーケティングやセールス活動を強化していく」と決意を示した。
日本商工会議所(山口信夫会頭)は21日開いた常議員会で「08年度観光振興施策に関する要望」を決議した。要望書は将来の「観光庁」設置をにらみ、関係省庁と民間の観光関係者で構成する産学官連携の連絡調整組織を創設することを強く求めた。 日商は08年度予算概算要求に向け、今後、政府・与党など関係方面に要望内容の実現を働きかけていく。 要望書は、連絡調整組織創設のほか、(1)観光振興による新しいくにづくり・まちづくり(2)インバウンド振興のための諸施策の推進(3)観光振興のための基盤づくり──から成っている。 具体的には、観光立国推進基本計画に「産業観光」や「街道観光」などテーマ別観光を支援することを明記する一方、改正まちづくり3法に沿って中心市街地活性化を進めようとする地域に対しては、各省庁の観光振興施策を優先的に活用できるよう配慮を求めた。 このほか、(1)外国人旅行の健康、衛生、災害対応などのサポートインフラ整備のための支援(2)連続休暇の増加、休暇の分業化──などに取り組む必要性を訴えている。
自然環境の保全と観光活用を両立させるエコツーリズム推進法案が20日の参院本会議で成立した。議員立法で今国会に提出され、衆参ともに全会一致で可決された。施行は来年4月1日。エコツーリズムを推進する市町村は、国の認定を受ければ、動植物の生息地などの指定区域への立ち入りを制限できるようになる。同法成立を受けて環境省と国土交通省は、地域の認定などに関する要件を定めた基本方針の作成に入る。 法の基本理念は、(1)自然環境への配慮(2)観光振興への寄与(3)地域振興への寄与(4)環境教育への活用──。自然との触れ合いや環境問題に関心が高まる中、エコツーリズムは地域活性化、環境学習などの観点でも注目を集めるが、観光利用に伴う自然環境への悪影響が懸念され、地域での保全と活用のルールづくりが課題となっていた。 エコツーリズムを推進しようとする市町村は、観光事業者や有識者、地域住民などで構成する「推進協議会」を設置し、エコツアーの対象となる自然観光資源や区域、実施方法を定めた「全体構想」を策定、国の認定を受ける必要がある。 自然観光資源には、動植物の生息地などのほか、自然環境と密接な関連がある風俗慣習、伝統文化などの観光資源が含まれる。 市町村長は、認定を受けた全体構想に則って、観光利用などで損なわれる懸念がある自然観光資源を「特定自然観光資源」として指定し、その所在区域への立ち入りを制限することができる。 特定自然観光資源を汚染、破壊したり、立ち入り制限に従わない場合、30万円以下の罰金が科せられる。全体構想に応じて市町村が制定する条例に違反した場合も、30万円以下の罰金を科すことができる。 同法の主務大臣は、環境、国土交通、文部科学、農林水産の各省にまたがるが、エコツーリズムの推進に関する基本方針は、環境省と国土交通省が策定し、閣議決定を受ける。基本方針は、エコツーリズムの実施状況をふまえておおむね5年ごとに見直す。
一部報道機関は26日、国土交通省が観光担当部署を統合した「観光庁」を08年度に新設する方針を固めた、または08年度の予算概算要求に新設を求める方向で検討している、などと報じた。国交省観光部門では、「現時点では具体的に決定した事実はない」と報道の一部内容を否定したが、「観光庁」設置を求める衆参両院の付帯決議、観光団体や経済団体からの要望などをふまえ、08年度予算概算要求の提出期限の8月末までにはあらゆる検討を行う考えを示している。「観光庁」設置は、観光業界の長年にわたる“悲願”だけに、観光立国推進基本法の制定、それに伴う基本計画の決定という機運の高まりの中、「観光庁」実現に向けた動きが注目される。 観光経済新聞社の27日の取材に対し、国交省観光政策課の門野秀行課長は「『観光庁』の設置に関しては、現時点で来年度の予算概算要求、組織・定員要求に盛り込むことなどを具体的に決めた事実はない。もちろん、衆参両院の付帯決議や観光・経済団体からの要望もあり、従来から課題としては検討している。来年度の予算概算要求の8月末に向けても、あらゆる面から検討を進めていく」とコメントした。 「観光庁」設置をめぐっては、観光立国推進基本法の国会審議の中で、衆参両院の国土交通委員会が昨年12月、付帯決議として「観光立国の実現に関する施策の遂行に当たっては、各省庁の横断的な英知を結集しながら、総合的、効果的かつ効率的に行い、行政改革の趣旨を踏まえて、観光庁等の設置の実現に努力すること」を決議している。 観光業界は、観光振興の推進、観光立国の実現のため、以前から「観光庁」「観光省」の設置を要望してきた。今年4月には、国交省に提出した観光立国推進基本計画の策定に関する観光12団体の要望書で、「『観光庁』を設置することを明記する(可能であれば将来の観光省設置を視野に入れることを追加する)」ように要望した。 日本経済団体連合会、日本商工会議所も「観光庁」の設置実現に積極的な姿勢を示している。経団連は今年4月の基本計画に関する意見書で「観光庁等の設置のあり方について検討すべき」、日商は6月21日の08年度観光振興施策に関する要望の中で「『観光庁』の新設が必要」と訴えている。 29日に閣議決定が予定されている、国交省が策定した「観光立国推進基本計画」案では、観光立国の推進態勢について「観光立国推進基本法制定時の国会における決議及び付帯決議と、政府を挙げた行政改革の取り組みの趣旨を踏まえつつ、観光立国推進施策の推進体制の強化について検討する」と明記している。 政界でも「観光庁」設置への動きは加速している。観光振興に取り組む自民党の二階俊博国会対策委員長(前経済産業相)は27日、自民、公明両党の与党幹事長に対し、「観光庁」の設置実現に向けた協力を要請した。 「観光庁」の設置は、観光業界の“悲願”とも言えるテーマだ。行財政改革の中で、新たな省庁の新設が容易ではないことは周知されているが、観光振興にかかわる事業、事務が省庁を横断して多岐にわたる中で、その調整を行い、観光立国の実現に向けた施策を強力かつ効果的に講じる推進母体として「観光庁(省)」の設置を求める声は根強い。観光振興を通じた地域活性化、外国人観光客の誘致が急務となっている中で、その機運は日に日に高まっている。「観光庁」設置の早期実現に期待したい。