全国修学旅行研究協会(全修協、中西朗理事長)は7月31日、東京のホテルグランドヒル市ヶ谷で創立50周年記念式典を開いた。中西理事長は、協会発足から現在までの半世紀の歴史を振り返るとともに、修学旅行の改善・向上に向け、今後も調査・研究、情報発信などの各種事業を積極的に推し進める姿勢を強調した。
全修協は昭和30年5月、修学旅行団を乗せた船舶「紫雲丸」が衝突事故を起こし、168人の死者を出したことから、当時の大阪府教育委員長だった山本種一氏が修旅の改善・向上を目指す組織の創設を提唱。同年6月の設立ののち、32年11月に文部大臣から財団法人として許可を受けた。
中西理事長は、「初代理事長(山本種一氏)の子どもたちへの愛情、修学旅行への思いは計り知れないものがあったと思う。その思いを多くの人が受け継ぎ、今日を迎えた。教育変革の時、修学旅行は姿を変えたとしても、日本独特の学校行事として残していきたい」とあいさつ。
来賓から、文部科学省の木岡保雅・初等中等教育局児童生徒課課長、全日本中学校長会の草野一紀会長が「創立から一貫して有意義な修学旅行の実現を目指し、実態調査、研究活動を行っていることに敬意を表する」などと祝辞を述べた。
このあと関係団体の近畿日本ツーリスト、輸送を担うJR関係者、理事経験者らに感謝状が贈られた。
「新しい修旅」を提案 全修協が研究大会
式典に続き「第24回全国修学旅行研究大会」(文部科学省、近畿日本ツーリスト協定旅館ホテル連盟、観光経済新聞社など後援)が行われた。全修協から「地域の活性化と修学旅行の役割」を提案したほか、「人と防災未来センター」(神戸市)を運営するひょうご震災記念21世紀研究機構の田村賢一部長が、同センターで行われている防災学習の実態を報告。千葉大学の天笠茂教授が「教育の動向と学校の取り組み」と題して講演した。
全修協の久保行正理事は、国公立中学校と都道府県、政令指定都市に行った修旅に関するアンケート調査の結果を報告。それによると、中学校の98.2%が修旅を「存続したい」、自治体の92.3%が修旅の誘致を「重要」と回答。自治体が修旅誘致に際し力を入れる分野として「新たな学習素材の開発」が26・8%とトップを占めた。
これらの調査結果を踏まえて久保理事は、「学校には積極的な情報収集、受け入れ地域には魅力的な地域資源の開発を一層進めてほしい。互いの協力・理解により、地域と一体となった新しい修学旅行が創造できる」と提言した。 |