国土交通省は、来年度予算の概算要求で、国の特別史跡、平城宮跡(奈良県奈良市)を国営公園として整備する費用を計上した。事業費は国営公園関係予算300億円の一部を充てる。2010年に平城遷都から1300年の節目を迎えることをふまえ、奈良県や記念イベントを計画する組織が、国営公園化を国に要望していた。国交省は、歴史的建造物の復元などを含め、文化庁と協議しながら国営公園に整備したい考え。日本の文化、歴史を国内外に発信する観光拠点としても期待される。
国交省都市・地域整備局公園緑地課によると、史跡とその周辺約140メートルを公園化。インフォメーションセンターや広場、駐車場を整備し、歴史的建造物の復元なども文化庁と連携して進めることを構想に入れている。来年度の着工を目指す。整備の完了時期は、「埋蔵物など史跡の保全に配慮する必要があり、未定」(同課)。
国営公園化が決まれば、全国で18番目。そのなかでも都市公園法が「わが国固有の優れた文化的資産の保存及び活用を図る」ために設置する公園としては、国営飛鳥歴史公園(奈良県明日香村)、国営吉野ヶ里歴史公園(佐賀県神埼市、吉野ヶ里町)に次いで3番目となる。平城宮跡は98年、「古都奈良の文化財」として東大寺などとともに世界遺産にも登録されている。
平城宮は、平城京の北端に位置し、天皇の住まいである内裏などがあった。文化庁が1978年に「特別史跡平城宮跡保存整備基本構想」を策定、この構想に基づいて歴史的建造物の復元を進めてきた。これまでに宮内省地区、朱雀門、東院庭園地区の復元整備を完了。平城宮の中核的な建物だった大極殿正殿の復元は、01年度に着手、10年度の完成を予定している。
奈良県と「平城遷都1300年記念事業協会」(会長=秋山喜久・関西経済連合会相談役)では、平城宮跡を「古代の都城文化や日本の歴史文化を体験的に学ぶ場」とするとともに、「文化創造や交流・広域観光ネットワークの拠点」として国営公園に整備するよう国に働きかけてきた。
同協会は、10年を記念イヤーと定め、平城宮跡をメーン会場に、奈良県内外で記念イベントを年間にわたり開催する。記念事業を通じて「奈良全体を国際的な歴史文化観光拠点として発展させ、10年以降の奈良、関西の継続的な観光周遊システムの構築につなげる」などを実施方針に挙げている。 |