旅館コンサルタントのリョケン(静岡県熱海市、木村臣男社長)は5日、6日の2日間、伊豆稲取温泉「食べるお宿 浜の湯」で平成19年第2回(通算137回)「旅館大学セミナー」を開いた。全国の旅館・ホテルから130人が参加した。
木村社長は「今回のテーマは『ネット直予約倍増作戦』。定員100人に対して130人以上の申し込みがあり、会場の関係で参加をお断りした方も多い」とあいさつ。ネット直予約に対する宿泊施設の関心の高さを示した。
会場となった浜の湯(鈴木良成社長)は、大手エージェントとは一切取引をせず、リピーターとネット予約で業績を伸ばしている旅館。
鈴木社長は講演で、8月単月の予約比率について「自社ホームぺージ(自社HP)が33%、ネットエージェント経由が10%、中小エージェントからの送客が8%で、残り49%は常連客からの電話予約」と披露。
自社HPからの予約も「半分は常連客からの予約。通信手段が電話から置き換わっただけ」と話した。ネットエージェントには「平日の客室しか出さない」という。中小エージェントとの取引については「常連客と同じように心がある。気に入ればずっと付き合ってくれるありがたい存在」と説明した。
同館は8階建てで全57室。95年から計3回増改築を行い、累計で35.5億円を投資している。02年に露天・内風呂付き客室を8室、今年4月にも露天・内風呂付き客室を7室造った。
4月のリニューアルでは、134平方メートルの露天・内風呂付き客室、119.64平方メートルの屋上大露天風呂、110平方メートルの貸切り風呂など思い切った増改築をした。
リニューアルについて鈴木社長は「常連客にも常にご満足いただけるように、自分が泊まりたくなるような部屋を造った。どこにもまねのできないものを造らなければ投資する意味がない」と熱く語った。
2日目には、滋賀県おごと温泉「湯元舘」の針谷了社長が「旅館のネット予約、旅館業界の課題」と題して講演した。
「米国ではネットエージェントのエクスペディアが宿泊予約市場を席巻している。手数料は25%から50%だ」とした上で「日本でも大手ネットエージェントが急伸している。現在の伸び率が続けば、3年以内に予約人泊数の1位と2位がネットエージェントになる可能性がある」と指摘。続けて「そのとき彼らは宿に対する手数料率を大幅に上げてくる可能性が高い」と警鐘を鳴らした。
針谷社長はさらに「価格決定の主導権を既存旅行会社やネットエージェントに取られてはだめ。(直予約の取れる)インターネットは、宿にとって千載一遇のチャンスだ」と強調した。
自社HPでの予約を増やす具体的手法も公開した。湯元舘の場合、ヤフージャパンでの検索結果に、自社ホームページを上位表示させる検索連動型広告を積極的に活用している。ヤフージャパンでの露出を増やした結果、自社HPからの予約比率は全体の11%になった。
また「平日の売れ残り客室をネットで年間1億2千万円売っている」「自社HPを見ながらの電話予約もこの1.5倍から2倍はあるのではないか」と自社HPの有用性を説いた。
自社HPでの予約成立1件に対して支払ったインターネット広告費用を算出すると平均で1千円程度。これは同館の1件あたりの平均売上金額6万5千円の約1.5%に相当する。針谷社長は「1.5%の手数料と考えれば最も効率が良い販売手法」と解説した。
リョケンの佐野洋一本部長は「リアル広告とネット広告のミックスで販売促進を効果的、効率的、計画的に行うことが大事」と補足した。
今回のセミナーでは他に、全国公募で1281人の応募者の中から選ばれ、稲取温泉観光協会の事務局長に4月から就任した渡邉法子氏が「稲取温泉観光協会の取り組み」について講演した。 |