記録的だった猛暑の夏も過ぎ、秋の行楽シーズンが始まる。9月からは連休が続き、行楽地も賑わいを見せそうだ。旅行会社や旅館組合などに国内旅行の感触を聞いたところ、「9月の東北、南紀、中四国は人員ベースで2ケタ増」(JTB)、「9〜10月の3連休はほぼ満室状態」(岩手県花巻温泉)といった声が聞かれ、総じて好調に推移しているようだ。
旅行会社
JTBによると、2日現在、9月の国内旅行は人員ベースで前年比112.3%と好調。中でも東北(121.4%)、南紀(170.4%)、中四国(131.1%)の伸びが高い。「東北はJR東日本とのデスティネーションキャンペーン(DC)、中四国は石見銀山ブームがけん引していると思われる」。10月は101.8%。北海道の81.6%を除き、各方面とも順調な動きを見せている。
「メイトは人員ベースで、9月が110%、10月は96%にとどまっているが、11月は111%と盛り返している」とKNT。北海道、九州、沖縄などの遠距離に手ごたえがあるという。宿泊企画商品も同様の傾向で、10月のみが前年割れとなっている。
一方、首都圏メイト事業本部によると、方面別では個人向け商品の品揃えが厚い京都が130%と好調。「風林火山」の放映や信州キャンペーンが効いたのか、信州は現在240%(夏も200%)という高い伸びを示している。
日本旅行の9月は販売ベースで97.3%、10月105.2%、11月128%。「北海道、九州、沖縄のロング商品、JR西日本のディスカバーウェストキャンペーンと連動した中四国方面が好調だ。しかし関東、東北、中部の宿泊商品の不調が目立つ」という。
4日現在の、阪急交通社の9〜11月の国内旅行は前年比約105%。東北、中四国、沖縄方面の出足が好調。
「全般的にはほぼ前年並みといったところ」と言うのはクラブツーリズム。9月はJR利用での関西、中四国方面が好調に推移。また、「10月よりも11月が良く、11月のバス旅行は宿泊商品主体に前年比115%程度と出足が良い」。一方、高額商品の伸びも目立ち、「新幹線グリーン車、デラックス仕様のバス、宿泊場所、食事内容などへのこだわりなど個人型の高品質志向が顕著」ととらえている。
「昨シーズンと比べ若干上回り、微増で推移」はトップツアー。個人旅行では京阪神、沖縄が好調。「団体旅行では近場の慰安旅行の早期受注が目立っている」としている。
JALツアーズの9〜11月の予約状況は「募集型企画旅行は前年に比べて好調、特に沖縄方面が良い」と言う。
業界では秋の行楽シーズンを「秋休み」と位置づけ、キャンペーンを展開しているが、「従来、オフ期である11月が好調ということは、秋休みが認知されてきた印象も受ける」(KNT)、「市場に徐々に浸透してきているようだ」(トップツアー)との感触だ。
温泉・観光地
「9月中下旬が好調」と言うのは浅虫温泉旅館組合(青森)。3連休よりも「スポレクあおもり2007」(22〜25日)効果のようだ。結果、前年並みか、少し上回る程度と見る。9月で終わる北東北DCについては、「期待していたほどの伸びはなかった」とやや渋い表情。10〜11月についてはつかめない。「天候などに左右され、すぐに10〜15%の差が生じるので読みにくい」と言う。
花巻温泉観光協会(岩手)は9月15〜17日、22〜24日、10月6〜8日の3連休について、「大手旅館を中心にほぼ満室状態」という。北東北DC効果や9月の毎週土曜日に実演されている「獅子舞」など、話題性が予約増に結びついているようだ。
「例年よりも秋(9月)は人が動いている感じだ。3連休もその一因で連休前の金曜や土曜は特に動く」と鬼怒川・川治観光協会(栃木)では話している。
草津温泉旅館協同組合(群馬)は「3連休であっても1日だけ集中して埋まっている」と話す。3日連続で埋まってくれれば理想だが、連泊にはなかなか結びつかないようだ。
昼神温泉ガイドセンター(長野)によると、9月22日からの3連休は比較的空いているが、10月6〜8日は満室状態だ。10月20日まで開湯35周年を記念して実施中の「新温泉出湯プレキャンペーン」で、宿泊料金を割り引くプランを打ち出しており、この効果もありそう。
「例年、夏から冬にかけて実施している花火大会は大きな集客効果があり、その前後は特に予約や問い合わせが殺到する。9〜11月は毎月1回、12月は3回予定している」と熱海温泉旅館組合(静岡)。
下呂温泉旅館組合(岐阜)によると、今年は10月から12月にかけて「ぎふDC」が実施されるので、それに向けたキャンペーンが秋の誘客対策になる。
25件の施設が加盟する白浜温泉旅館協同組合(和歌山)。「9月の連休には8月の早い時期から引き合いがあった旅館もあるようだ。ただ、間際にならないと全体の動向はつかめない。夏までは好調に推移しており、秋にも期待している。10〜11月が順調なら、目標の宿泊人数は達成できる」と踏む。
1〜8月の会員旅館の延べ宿泊人数は前年比107%だった。天候に恵まれたほか、町内の動物園アドベンチャーワールドに昨年12月に誕生した双子のパンダの人気などで、京阪神地区を中心に好調な客足だった。
同旅組では白良浜を生かした健康づくりプログラム、高級魚クエを使った食のPRなどで年間を通じて安定した誘客を図りたい考えだ。
「テレビドラマ『佐賀のがばいばあちゃん』のロケ地となったことで、鹿児島、宮崎など近県を中心に入り込みは増えている。宿泊に結びつける難しさはあるが、秋もイベントを実施し、誘客に努めたい」と武雄市観光協会(佐賀)。
沖縄県ホテル旅館生活衛生同業組合(290軒)は「心配は台風だけ。秋も休日を中心に予約は順調なようだ。近年はレンタカーを使った家族旅行が増えている。料金が下がる時期を狙った旅行も多く、オン・オフのシーズンの差は縮まっている」と話している。 |