国土交通省は、観光入り込み客数、観光消費額を全国統一の基準でとらえる観光統計を2010年をめどに整備する。宿泊数を全国調査する宿泊旅行統計を今年1月から本格スタートさせたが、入り込み客数や消費額には都道府県別などの地域間で比較ができる統計が整備されていない。都道府県などが独自に行っている現行の調査手法を踏まえた基準づくりなどを課題として、学識経験者や観光団体などを委員とする懇談会などで議論、観光統計の体系化のあり方について今年度末に中間のとりまとめを行い、具体化を進める。 国交省が設置している観光統計の整備に関する検討懇談会(座長・山内弘隆一橋大学大学院商学研究科教授)では、10月に開いた検討会で、宿泊旅行統計分科会に加え、観光入込客統計分科会、観光消費額統計分科会を新設した。国交省では懇談会や分科会での検討を基に、09年に基準を策定、10年から調査を実施したい考えだ。 観光入り込み客数は、都道府県や市町村などがそれぞれに統計調査を実施しているが、調査項目や手法は統一されていない。日本観光協会が全国基準を96年に作成したが、都道府県の導入は10余りにとどまり、導入していても厳密な運用には至っていないケースもあるという。 観光消費額調査も、実施主体がさまざまで地域間の比較可能なデータはない。国では「旅行・観光消費動向調査」として毎年算出しているが、都道府県別の消費額を推計するには標本数が少ない。地域別の消費額が算出できれば、経済効果などが推計でき、地域経済や産業政策を検討するのに有用とされる。 また、訪日外国人旅行者に関しても、入国後の訪問地ごとの入り込み客数や観光消費額などの統計の充実が課題だ。 国交省の本保芳明・総合観光政策審議官は、11月の定例会見で「全国統一の基準が必要だが、都道府県などがこれまで実施してきた統計の土台をまったく無視して新基準を作るのは難しい。だからと言って、すべてを尊重することもできない。統計の技術的な問題を含めて課題を解決していきたい」と説明。統計整備にあたっては「労力を伴う調査に協力してもらうための仕組みづくりも重要だ」と指摘した。 国の承認統計としてスタートした宿泊旅行統計は、過去との比較ができるデータの蓄積はまだないものの、宿泊という定点で観光をとらえられる統計として成果を挙げている。宿泊数、外国人宿泊数、施設の定員稼働率などを四半期ごとに発表。都道府県別のデータを公表している。 ただ、宿泊旅行統計についても調査項目などに新たな要望が上がっている。「旅行者1人当たりが何泊しているのか、都道府県より細かい市町村別や観光地別の数字は出せないのか、といった声がある。分科会などで検討していきたい」(国交省観光経済課)。 宿泊旅行統計の宿泊数は、「延べ宿泊数」での調査で、1人当たりの宿泊数は算出できない。また、調査対象の宿泊施設からの回答率は70%台と高いが、市町村や観光地の単位で宿泊数を出すには標本数が十分ではないという。行政側の課題として集計期間の短縮化なども挙げている。 観光統計については、観光立国推進基本計画の中で、整備を推進することが明記されている。国際間比較ができる観光統計「観光サテライト勘定(TSA)」の本格導入も2010年に向けて検討することになっている。
国土交通省は16日、秋の褒章の伝達式を同省大会議室で開いた。受章者は99人、3団体。観光関係では、黄綬褒章のこまくさホテル代表取締役、日本観光旅館連盟理事の中田英司氏(長野県松本市)が代表で登だん、冬柴鐵三国土交通相から表彰状などを手渡された=写真。 観光関係の受章者は黄綬褒章が9氏、このうち旅館の女将が4氏。代表で登壇した中田氏は「業界の先輩方をはじめ、支えてくれた多くの人たちのおかげ。感謝の気持ちでいっぱいだ。地域の活性化、業界の発展に今後も努力すると同時に、若い世代の活躍を応援していきたい」と語った。 式辞では、冬柴大臣が「各分野で活躍された皆さまの輝かしい功績に深く敬意を表したい」とあいさつした。