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地域観光 ■第2449号《2007年12月15日(土)発行》  

第21回「にっぽんの温泉100選」、群馬・草津温泉が5年連続1位 本社主催
投票結果を慎重に検討する審査委員会(本社会議室で)


 旅行会社の投票によって消費者に支持されている温泉地を決める第21回「にっぽんの温泉100選」は、草津温泉(群馬県)が1位を維持した。これで5年連続。2位も前回と同じく由布院温泉(大分県)。前回4位だった黒川温泉(熊本県)が3位に上がった。主要な観光団体の後援を得て、観光経済新聞社が主催するこの100選は、まさに"観光業界が認める人気温泉地のランキング"。温泉地同士が競い合い、各温泉地がさらに地域活性化に努めてほしいとの狙いもある。

 にっぽんの温泉100選実行委員会は、観光経済新聞社と日本観光旅館連盟、国際観光旅館連盟、全国旅館生活衛生同業組合連合会、日本温泉協会、日本旅行業協会、全国旅行業協会、日本観光協会国際観光振興機構、財団法人日本交通公社の9後援団体で組織する。5日、投票結果の審査会を東京都台東区の観光経済新聞社本社で開いた。旅行会社が選んだ「人気温泉旅館250選」もこの場で決定した。

 草津温泉は、下呂温泉(岐阜県)、有馬温泉(兵庫県)と並ぶ日本三名泉の1つ。近年は「泉質主義」を宣言している。温泉100選では、選んだ理由を投票者に「雰囲気」「知名度」「泉質」「施設の完備等」の4項目から聞いているが、草津は泉質と知名度で他の温泉地を引き離した。

 2位の由布院温泉、3位の黒川温泉は、雰囲気が高く評価されている。雰囲気では、草津もベスト3に入るが、黒川、有馬の方が上回った。

 黒川と入れ替わって前回3位の登別温泉(北海道)が4位に。10位までを見ると、有馬温泉(兵庫県)が10位から6位へと上昇したことが目立つ。ほかにも順位の上昇、下落はあるが、いずれも1ランクの小幅な動き。前回も大きな波乱はなく、ベスト10の温泉地が固定されつつある。

 審査会では、変動が少なかった第21回にっぽんの温泉100選に関して「主要な温泉地の人気度は根強いと感じた」との声が聞かれた。上位に入る温泉地は「歴史があって、自然環境に恵まれている」「草津の『湯畑』、登別の『地獄谷』、道後の『道後温泉本館』などランドマークがある」という共通項も指摘された。

 投票募集は、JTBやKNTをはじめとする大手・中堅の旅行会社や、じゃらんnetや楽天トラベルなどネットエージェントを対象に7月1日から10月末まで実施した。記載不備や組織票の疑いからハガキ97枚(前回82枚)を除外し、有効ハガキ数は1万1652枚(同8226枚)。1枚のハガキに最大5温泉地の投票が可能で、総投票数は3万6004票(同3万3727票)を数えた。

 近年、にっぽんの温泉100選は、旅行会社の宿泊企画商品にも多々活用されており、その知名度と注目度が年々高まっている。観光業界内だけにとどまらず、一般の雑誌やテレビなどマスコミに取り上げられるケースも増加している。

 07年度の人気温泉旅館250選は、13選が新たな顔。通算5回以上の入選を果たした優秀旅館・ホテルには「5つ星の宿」の称号を贈っており、今回は250選263軒のうち203軒(前回は190軒)だった。新規入選は19軒。(250選では、同一経営者による同一地域内の旅館は別館および系列館などを含めて1選とカウント。5つ星旅館は、施設規模やグレードなど考慮する必要性から、顧客層の異なる別館や系列館などごとに1軒とカウント)

 07年度の入選施設への認定証授与式は来年1月25日に東京の浅草ビューホテルで開く。授与式は9回目。


国際観光施設協会が「観光まちづくり研究会」立ち上げ
 国際観光施設協会(村尾成文会長)は、「観光交流空間のまちづくり研究会」を立ち上げた。宿泊・観光施設の設計や施工、設備などを手がける企業を中心とする会員と、旅館・ホテルの経営者を中心とする地域の観光関係者が参加、情報を共有して観光地づくりを考える新しい試みだ。

 6日、東京都千代田区の九段会館で初会合を開き、各地域から景観づくりや観光資源の活用などで現状や問題点を聴き取った。今後、地域特性を生かした観光地づくりにつなげていく。

 研究会は、施設協会の会員だけでなく、旅館・ホテルの経営者などが名前を連ねる同協会の「マネジメント会員」が加わって発足。地域づくりに関する調査や研究、地域への提言、地域でのフォーラムの開催などを主な活動にする。

 村尾会長は「当団体は、観光のハード分野を担っているが、観光立国の実現には、施設単体ではなく、地域全体のあり方を改善することが不可欠だ。地域づくりに努力されている関係者と連携して取り組みたい」とあいさつした。

 研究会の狙いについては、中山庚一郎副会長(石井建築事務所会長)が「滞在型の観光地づくりが求められている。そのためには自然や歴史、文化などさまざまな『土地の力』を生かし、観光関係者だけでなく、異業種や行政と連携した観光交流空間づくりが必要。国際競争力を備え、持続可能な地域づくりを根付かせたい」と説明した。

 初会合では、新潟県の月岡温泉、長野県の鹿教湯温泉、福岡県の原鶴温泉など約10地域から出席した旅館・ホテルの経営者、観光協会の担当者などが、地域で取り組んでいる事業の展望、成功事例などを紹介。一方で地域からは、「長らく空き地のままだった温泉街の土地を旅館組合で取得したが、どのように活用すべきか」「新旧の建物、一般の住宅などが入り混じる温泉街の景観をどうしたらいいのか」などの悩みも挙げられた。


NHK大河ドラマ「天地人」の主人公PRへ観光ガイド活躍 山形県
合戦について説明する佐藤さん

 09年のNHK大河ドラマ「天地人」の主人公、直江兼続。直江公が一時治めた米沢市や合戦を行った山形市など、ゆかりあるスポットが多い山形県では現在、関連する観光資源の掘り起こしが進む。同時に多くの観光ボランティアガイドが、直江公にまつわるエピソードを観光客に知ってもらおうと奮闘している。

 日本観光協会によると、同県には観光ボランティアガイドの団体が約80団体あり、定年退職した人を中心に1800人ほどが活動している。任意申請での数だが、団体数では全国1位、人数でも全国3位を誇る。「他県と比べ、活動は活発」(県物産観光協会)。

 関ヶ原の戦いと同時に山形市で繰り広げられた「長谷堂(はせどう)合戦」。石田三成側大名の上杉景勝の家老、直江兼続と徳川家康側大名の最上義光(よしあき)が戦った。合戦の背景などに詳しい山形市観光ボランティアガイド協会の佐藤篤会長は「直江公が注目を浴びるが、今の市の原型を作った義光公の方が市民には親しみ深い。市民はドラマで誰が義光公を演じるのかに注目している」とガイドに交えて地元ならではの話を語る。

 米沢市で隠れたスポットを紹介するのもボランティアガイド。「上杉鷹山の政治の土台となる石堤などを整備したのは直江公」と語り、ひっそりと残る「直江堤」を案内するのは米沢市「おしょうしなガイドの会」の登坂精一さん。自ら作ったメモを配り、時折冗談を交えながら、上杉家の御廟所や直江公の墓所などを案内する。

 「愛」の文字で飾った直江公の兜など、同県には直江公にまつわる事物が多く、案内板や観光ルートの整備などが進むが、観光客が歴史上のエピソードなどを深く知るには不十分な面も多い。大河ドラマを契機にした誘客には今後、地域に根ざした案内人たちのさらなる活躍が求められそうだ。

 観光ボランティアガイドに関する問い合わせは、県観光ボランティアガイド連絡協議会(電話023-647-2333)。


 
泊食分離・長期滞在目指し、静岡・舘山寺温泉が実証実験
 静岡県浜松市の舘山寺温泉は、国土交通省の宿泊産業活性化のためのモデル事業を導入、実証実験として、泊食分離・長期滞在型の宿泊プランを販売している。旅館・ホテル9軒が1泊朝食付きの料金を設定、2泊目以降に段階的な割り引きを実施して連泊を促進。地域の飲食店や観光施設、タクシー会社で使える地域通貨も発行し、外食や周辺観光に誘導している。消費者の反応は良く、長期滞在のモデルづくりに成果が期待されている。このモデル事業は、作並温泉(宮城県仙台市)、有馬温泉(兵庫県神戸市)、平戸温泉(長崎県平戸市)も導入しており、同様の狙いの実証実験を近く始める。

 舘山寺温泉の宿泊プランは、「ゆったりゆとりの温泉ステイ」の商品名。10月15日にスタートし、来年2月末まで実施する。分かりやすい料金体系で利用者を増やそうと、参加施設間で協議し、一部例外はあるが、全館共通の宿泊料金を実現させた。料金は1人当たり1泊目が8千円、2泊目が7千円、3泊目が6千円、4泊目以降が5千円となるようにした。

 長期滞在の条件となる周辺観光や泊食分離を促すため、プラン利用者だけが使える地域通貨を発行した。温泉街の飲食店13軒、遊覧船やロープウェイを含む観光施設5カ所、タクシー会社で使える。500円分の地域通貨券を450円に割り引いて販売している。滞在中のモデルコースも示し、日帰りツアーや湯巡りなども推奨している。

 商品の周知は、舘山寺温泉のホームページなどインターネットが中心だが、一部旅行会社の協力を受けて店頭にパンフレットを設置してもらった。

 モデル事業の実施主体となっている協議会のメンバー、遠鉄観光開発の宮津智史・営業企画部長は「宿泊客を囲い込んでは、長期滞在は期待できず、地域の活力を低下させるばかりという危機感がある。温泉街を回遊してもらうことが地域全体の活性化、魅力の向上につながる。モデル事業に対しては、宿泊施設だけでなく、飲食店や観光施設からの期待も大きい」と話している。

 舘山寺温泉をはじめ、作並温泉、有馬温泉、平戸温泉が行う国交省の実証実験は、昨年度からの継続事業。昨年度試みた泊食分離の取り組みを発展させ、長期滞在を通じた宿泊産業の活性化方策を探っていく。

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