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観光行政 ■第2453号《2008年1月26日(土)発行》
国交省、「観光圏」法を制定へ
国土交通省は、2泊3日以上の滞在型観光につながる地域づくりに向けて新法を制定する。「観光圏の整備による観光旅客の来訪及び滞在の促進に関する法律案」(仮称)で、今通常国会に提出、今年夏ごろの施行を目指す。複数の市町村、都道府県が連携して誘客、滞在促進に取り組む地域を「観光圏」と呼び、申請に応じて国が整備計画を認定、補助事業などで総合的に支援する。宿泊施設に対しては、新法に基づく財政投融資の新制度が創設される予定だ。
国内外の観光客による2泊3日以上の滞在を促進するためには、観光地や観光資源を“点”ではなく、“面”で捉えた観光圏の形成が必要になる。新法案では、複数の観光地を結びつけた観光圏を設定し、周遊・体験型の観光メニューの充実、宿泊の魅力向上、移動の快適化などの地域の取り組みを支援する。
観光圏内の行政や観光事業者、NPOなどでつくる法定協議会の立ち上げを受けて、市町村や都道府県が整備計画を策定、実施主体の事業者は共同で実施計画を作成し、国に申請する。認定を受けると、事業費の最大40%が補助される。
従来のルネサンス事業に代わる観光地づくりの主要施策で、来年度予算案では観光圏整備促進事業として2億8千万円を計上。「来年度は10数カ所の観光圏を支援する想定だ。観光圏の支援事業は、ソフト事業が中心だが、連携する形で他の社会資本整備事業、公共交通支援事業などのハード事業も導入できるよう配慮したい」(国交省観光地域振興課)。
観光圏の中には、滞在促進のための事業を重点的に実施する、温泉街などの区域を「滞在促進地区(仮称)」に設定する。来年度の財政投融資には、同地区内の宿泊施設の改修費を対象に、中小企業金融公庫から特別利率で融資が受けられる制度を新設する予定だ。
中小公庫の企業活力強化貸付として、限度額は7億2千万円、貸付期間は20年以内。貸付後5年間は、最優遇金利の「特別利率(3)」(12月12日現在2.10%)が適用される。6年目以降は基準利率(同3.10%)になる。
融資対象は、現行資産の10%以上に相当する新築・増改築で、事業のイメージは、(1)パブリックスペースを地域文化の展示や体験交流の場に活用、開放するための改修(2)景観との統一感を創出するための外壁などの改修(3)従来の団体旅行客から、個人・グループ客に対応するための客室改修──となっている。
このほかにも観光圏を総合的に支援するため、税制の優遇措置として、新法による法定協議会に参加する公益法人が、文化財保護法に基づく登録有形文化財などの家屋、またはその敷地を取得する場合、不動産取得税を課税標準の2分の1に控除する予定だ。
政府は、観光立国推進基本計画で、2010年度までに、国内の観光旅行を1人当たり年間4泊(06年度2.72泊)に、国内の旅行消費額を30兆円(同23兆5千億円)にする目標を掲げている。これを達成するためにも、観光圏の形成を通じた滞在型観光の活性化が重要課題となる。新法を活用した、地域による滞在日数の拡大に向けた取り組みがかぎになりそうだ。
08年度の観光関係予算は2133億、07年度比42億増
国土交通省は、来年度予算案について、各省庁にまたがる観光に関連する予算の総額を集計した。観光振興策をはじめ、交通基盤の整備や文化資源の活用、国際交流などの事業費を合わせた観光関連予算の総額は、07年度予算比42億円増の2133億円となった。
観光立国推進基本計画に掲げた施策テーマ別にみると、「国際競争力の高い魅力ある観光地の形成」に関する予算が同31億円増の1343億円、「観光産業の国際競争力の強化及び観光の振興に寄与する人材の育成」が同2千万円増の1億6千万円、「国際観光の振興」が同6億円増の530億円、「観光旅行の促進のための環境の整備」が同6億円増の239億円。
関連予算には、国交省の整備新幹線事業706億円、経済産業省の広域・総合観光集客サービス支援事業3億7千万円、文化庁の国宝・重要文化財・史跡等の活用370億円などが含まれる。
観光関連予算の総額は、観光立国推進基本法の施行、基本計画の決定などをふまえて、国交省が今年度から算出して発表している。
観光業界、「観光庁」創設に期待
観光関係団体懇談会(26団体で構成、幹事・日本観光協会)主催の新年賀詞交換会が11日、東京のグランドプリンスホテル赤坂で開かれた。昨年末、「観光庁」創設が決まったことを受け、出席者からは「(今年は)観光立国実現への大きな一歩となる」「観光の力で暗い世相を明るくできれば」との声が相次いだ。会場には冬柴鐵三国土交通相、二階俊博自民党総務会長らも駆け付け、観光業界の活躍を期待した。
賀詞交換会には関係者ら約200人が出席。主催者を代表してあいさつした中村徹日観協会長は観光庁創設を歓迎する一方、「地域における観光振興がビジネスとして成立しておらず、地域収入に結びついていない。また、観光事業者がその役割を果たしているとは言い難い。今年はこれらがマッチングするような年にしてほしい。観光業界の未来は明るい。皆さんの努力で実りある発展の年にしていただきたい」と呼びかけた。
乾杯の音頭は日本ツーリズム産業団体連合会の舩山龍二会長がとった。
来賓の二階総務会長=写真=は日中国交正常化35周年を記念して行われた日中交流イベントには両国合わせて3万5千人が参加したことや、観光庁創設について、福田康夫首相が「観光の大きな柱が定まったと喜んでいた」と報告。
また、衆院選をにらみ「観光業界は選挙に弱いというか、選挙応援をやらない(体質がある)。この姿勢を改めなければ業界はこれ以上伸びないし、(政治の)協力も得られない」と厳しい表情で述べ、自公政権維持に向けた選挙への協力を求めた。
やや遅れて駆け付けた冬柴国交相は、「今年10月の観光庁設置を目指し通常国会に法案を提出する。これにより、政府全体として観光(振興)に取り組む推進体制ができる」と述べた。さらに「観光は地域経済活性化の切り札となる。国交省では2泊3日以上の滞在型観光促進のため、観光ゾーンの形成に向け、地域の取り組みを支援する新たな制度を設ける考えだ。観光は21世紀の国づくりの柱だ」と強調し、関係者の一層の奮起を促した。
賀詞交換会には平井たくや国土交通副大臣、愛知和男自民党観光特別委員長らのほか、国交省幹部や旅館・ホテル、旅行会社のトップらが顔をそろえた。
観光庁創設という業界の悲願が今年いよいよ実現するが、出席者からは「創設を機に、観光の重要性をもっと国民にPRしてほしい。業界を取り巻く環境は決して明るくはないのだから」と指摘する声もあった。
福田首相、施政方針演説で観光振興に言及
施政方針演説で観光振興の重要性を説く福田首相(18日)=首相官邸HPから
福田康夫首相は18日、衆参両院本会議で初の施政方針演説を行った。首相は「観光振興は地方活性化の目玉」との認識を示し、取り組みを強化する考えを強調した。
首相は「地方の元気は日本の活力の源」とし、地域重視の姿勢を改めて鮮明にした。地方が取り組む事業の立ち上がりを「地方の元気再生事業として応援する」と述べ、具体例として路面電車導入の取り組み支援などを挙げた。また、「新たに観光庁を設置し地方の自然や文化などを積極的に発信し、国内はもとより、海外からの観光客を呼び込む取り組みを強化する」と述べた。
昨年7~9月の延べ宿泊者は8515万人泊
国土交通省はこのほど、07年7〜9月の宿泊旅行統計調査の結果を発表した。延べ宿泊者数は8515万人泊で、このうち外国人は全体の6.7%に当たる571万人泊となった。定員稼働率は49.5%。回答施設は7533(回収率72.4%)だった。
観光目的の宿泊者が50%以上の施設の延べ宿泊者数は4906万人泊、50%未満の施設は3608万人泊。合計の延べ宿泊者数を月別にみると、7月が2545万人泊、8月が3403万人泊、9月が2567万人泊。
外国人の国籍別の上位は、1位の韓国が117万人泊、2位の台湾が98万人泊、3位のアメリカが73万人泊、4位の中国が64万人泊。
観光目的の宿泊者が50%以上の施設では、外国人延べ宿泊者数が276万人泊、50%未満の施設は295万人泊だった。
月別の定員稼働率は、7月が43.9%、8月が58.7%、9月が45.7%。観光目的の宿泊者が50%以上の施設は、7〜9月が43.3%、月別では7月36.8%、8月54.6%、9月38.3%で推移した。
宿泊統計は昨年1月から本格実施されたが、予備調査のデータを基に前年比を算出すると、新潟県の延べ宿泊者数は7月が4.1%減、8月が6.4%減で、中越沖地震の影響とみられる。また、石川県は7月が12.7%減、8月は13.6%減で、能登半島地震の影響が続いているようだ。
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