東北運輸局はこのほど「東北観光基本計画」をまとめた。観光立国推進基本計画の中に明記された「広域的な計画の策定」に基づき策定したもので、全国で初めての取り組み。10年までに東北6県への訪日外国人旅行者数を50万人にするといった具体的な数値目標を掲げることで、より効果的で具体性のある計画とし、同地域の観光振興につなげる構えだ。 同計画は基本方針として、(1)観光振興による地域の活性化(2)「東北ならでは」の観光魅力の発揮(3)「連携」の推進(4)常に「先手」を意識した施策の展開(5)世界に開かれた観光交流の展開(6)情報発信の強化──を据え、同地域の抱える課題に取り組むことを明記。 具体的な観光に関する目標として、東北6県において、(1)訪日外国人旅行者数を10年までに50万人にする(2)国際会議の開催件数を11年までに5割以上増やす(3)宿泊者数を10年までに3600万人にする(4)観光旅行消費額を10年までに2.3兆円にする(5)外国語対応が可能な「ビジット・ジャパン案内所」を11年までに39カ所にする──を掲げる。「観光立国推進基本計画の目標年次に合わせて10、11年度の各年度を目標年次とした」(東北地方交通審議会)。 同計画は、観光資源の整備だけでなく接遇の向上や人材育成など多方面について言及。特に東北地域が課題とする入り込みの季節波動の大きさに関しては、自然系資源だけでなく文化系観光資源の活用を提案する。 旅館業の重要性にも触れ、新たな旅行者ニーズに対応できる設備投資のための資金の確保など、経営基盤の強化・確立を図り、日本旅館の魅力を向上を進めるとしている。季節波動に合わせた人材の広域移動やバックヤード業務の共同化による効率化なども生産性・収益性向上のための方策として提案する。 同計画は内藤政彦・東北運輸局長の諮問を受け、「東北地区交通審議会」(会長=幕田圭一・東北経済連合会会長)が答申を行ったもの。同会は、東北6県の知事のほか、JR東日本仙台支社長やバス、タクシーなどの業界団体代表らで構成、昨年10月から3回にわたり基本計画について審議を行っていた。 東北運輸局は、「本計画はあくまでも『チーム東北』としての柱。これを大きな指針として、東北観光推進機構をはじめ各自治体、当該地域住民らが観光振興に生かして欲しい」と期待感を示した。
文化審議会(石沢良昭会長)はこのほど、川湯温泉(和歌山県田辺市)にある亀屋旅館本館など186件の建造物を国の登録有形文化財に指定するよう渡海紀三朗文部科学相に答申した。同文化財の登録数はこれで7010件となる。 亀屋旅館本館は同温泉街のほぼ中央にある。1928年に建てられた木造2階建て、瓦葺きの和風旅館で、大正末期から昭和初期にかけてにぎわった当時の温泉旅館の風格を伝えていることなどが評価された。 また、旅館では千葉県船橋市の玉川旅館本館なども登録対象となった。 主なものを見ると、岩手県遠野市の曲り屋民家として有名な旧佐々木家住宅主屋や旧川前家住宅主屋、長野・旧軽井沢のメーンストリートに建てられた洋風建築「明治四十四年館(旧軽井沢郵便局舎)」などがある。 旧佐々木家住宅主屋は明治期に建てられた上層農民の大型曲り屋。寄棟造の茅葺に入母屋造の土間と馬屋が突きだし、大規模で風格ある外観が評価された。
13日、国土交通省が東京都内で開いた人材育成検討会で、米国セントラルフロリダ大学ローゼン・ホスピタリティ経営学部准教授の原忠之氏が講演、米国の人材育成モデルについて解説した。米国の観光業界が大学の観光系学部に要求する人材水準の高さに触れた上で、「産業界の人材ニーズに大学が留意しないと、構造的なミスマッチが発生する」と指摘。産業界のニーズを大学のカリキュラムに反映させる仕組みなどを紹介した。 原氏は、学生が企業の実務の中で学ぶインターン制度で、米国の観光関連企業が、観光系学部への募集要件に、「投資機会に関する財務分析」「トレンドなどに基づく財務モデルの構築」などの高度なスキルを挙げてくる実例などを紹介した。 「『あいさつができる』『人と接するのが好き』という程度の業界ニーズでは、学生も、学部教員も育たない。産業界が高い水準のインターン学生の要求し、大学がそれにこたえる社会的責任を持つべき。学生と教育機関が成長すれば、恩恵は産業界にもたらされる」(原氏)。 原氏によると、同大ホスピタリティ経営学部2300人のうち650人がインターンを選択している。週16時間、1年半の期間が必修。産業界もインターン制度を幹部候補のリクルートの機会として重視している。このため大学側はインターン学生への企業の評価などを数値化して集計し、カリキュラムに反映させるようにしている。 また、同大学には観光関連企業の経営者から、人材育成について定期的に意見を聴取する委員会が設置されているという。「産業界の御用聞きにとどまらず、ニーズを上回る高い付加価値を持つ人材の育成に努めている」(原氏)。 日本の人材育成の方向性について、原氏は「米国の人材育成モデルが正しいわけではないが、米国の産業界の成長の源であることは否定できない。良い部分は模倣し、悪い部分は改善して、日本独自のモデルを構築してほしい」と期待した。