国内宿泊旅行が低迷する中、滞在日数の拡大が課題だ。国土交通省は06〜07年度の2カ年、旅館の泊食分離などを主要テーマとする宿泊産業活性化モデル事業を8地域で実施した。参加地域の1つ、長崎県の平戸は、旅館が泊食分離を取り入れることで、観光協会が着地型の旅行商品を造成、地域を挙げた滞在型観光の実証事業に取り組んだ。滞在日数に値する旅行目的の提案と、自由度の高い食事の提示を通じて、3連泊の参加者を集め、滞在型観光の確立に手ごたえをつかんだ。 平戸は、2カ年継続でモデル事業に取り組んだ。07年度事業では、前年度に実施した泊食分離に関する実証実験を発展させ、泊食分離に基づいた3泊4日の滞在型商品を開発。旅行業法の省令改正で業務範囲が拡大されたのを機に、第3種旅行業に登録した平戸観光協会が造成、販売した。 商品名は「名山歩いて、名産食べて、平戸の冬旅」。今年1月17日〜3月20日の期間に催行した。旅行代金は、ガイド付きの山歩きと町内散策、3泊3朝食付きの内容で1万9800円。宿泊施設は、それぞれ100室前後の客室を持つ旅館3軒。3泊とも同じ宿の滞在で、夕食を分離し、宿泊客の好みに応じて宿や飲食店から自由に選択できるようにした。 観光資源に恵まれる平戸でも、3連泊の旅行者を誘致するのは容易ではない。そこで旅行目的を山歩きに絞り込み、福岡エリアの中高年層を狙った。宣伝にも力を入れた結果、7回の催行で92人の参加者を集めた。 平戸観光協会の赤木望事務局長は「平戸に3連泊するプランとしては、まずまずの成果。山歩きをメーンテーマにすることで、滞在期間を満喫してもらえたようだ。3泊以上の滞在には、滞在時間を必要とする明確な目的の提案が欠かせない。泊食分離に基づく滞在型商品づくりに向けて、地域の素材、旅行環境を洗い直したい」と語った。 地域活性化へ 一方、泊食分離に対するアンケートの結果は、食事の分離を「良かった」と答えた参加者が64%を占め、「悪かった」は5%にとどまった。実際に夕食をとった場所は、街の飲食店が61%、宿泊した旅館も39%だった。 泊食分離は参加者におおむね好評だったが、「街の飲食店に関する詳しい情報提供が欲しかった」との指摘があった。また、食事を分離しても約4割は宿の食事も利用したが、「宿の食事は年配者には量が多い。量も、値段も選べるとよい」といったコメントが寄せられた。 受け入れ旅館からは、「食事の分離は時代の流れで必要性を実感している」「選択肢のある宿のメニューを検討したい」などの感想が出た。 モデル事業に参加した国際観光ホテル旗松亭の木下隆靖社長は「泊食分離を考える上で、重要なのはお客さまの嗜好とのミスマッチを解消することだ。選択肢を提示し、料金を明示することは、消費者へのアピールにもつながる」と指摘。泊食分離には宿泊客の欠食による利益率の低下、食事提供の固定費の問題なども指摘されるが、「団体旅行の全盛期とは違い、取り組み方はあるはず。1泊2食付きの形態をなくすわけでもない」と話した。 また、泊食分離というプランは、旅館単独の取り組みでは旅行者の満足度は高まらない。旅館と街の飲食店、旅館と旅館など、地域の特性に応じて宿泊と食事にさまざまな組み合わせが必要。これまで以上に、異業種間、事業者間など地域の連携が重要になってくる。 平戸の場合、モデル事業の推進にあたって、地域の飲食店や観光施設に参画を求めるなど、泊食分離に対する地域の意識づくりにも取り組んだ。「泊食分離により宿泊客が街を歩き、お金を落とすようになれば、まちづくりに対する地域の意欲は高まる。宿は地域観光の“プラットフォーム”であるべき。中長期の視点で観光地全体の発展につなげる発想が重要だ」(木下社長)。 国民1人当たりの国内観光旅行の宿泊日数は、06年度で2.72人泊、前年度から0.17ポイントダウンした。過去4年間でみても3泊に届いたことがない。政府の観光立国推進基本計画に掲げた2010年度の目標値は4泊。泊食分離に基づく滞在型観光は、滞在日数と消費額の拡大を通じて地域を活性化させるアプローチの1つだ。地域を挙げたビジネスモデルづくりが期待されている。
今年5月20日に開港30周年を迎える成田国際空港会社のテレビCMが完成、3月31日、東京都内のホテルで報道関係者に公開された。また、森中小三郎社長が会見し、30周年事業の概要や今後の事業展開を説明した。会見には30周年イメージキャラクターに選ばれた知花くららさん(26)も出席、新たなスタートを切る成田空港への期待を語った。 CMは知花さんとサッカー選手の田中マルクス闘莉王さんが出演し、5日から関東地方で放映される。元準ミスユニバースの知花さんは「ミスユニバース世界大会では、出発する前と帰国の時では気持ちが全然違った。私にとって空港はエキサイティングな場所。ぜひ利用して」と笑顔で呼びかけた。 森中社長は10年に供用開始される2500メートルの平行滑走路や東京・日暮里〜空港間を最短36分で結ぶ成田新高速鉄道(京成電鉄)が10年4月に完成することなどを紹介。 30周年記念事業については、(1)ターミナル内での記念品グッズの配布(2)周辺地域の中学生を対象にした海外体験支援──などを行う。 森中社長は平行滑走路の供用開始などを機に、「(周辺地域の)観光活性化のための需要を取り込みたい」と述べるとともに、上場が実現した際は「地域振興に結びつける空港運営を行いたい」と意欲を示した。
国土交通省は、07年1月から本調査をスタートさせた宿泊旅行統計で、10〜12月分の結果を集計し、07年通期の結果(暫定値)をまとめた。1年間の延べ宿泊者数は3億445万人泊だった。このうち外国人は2191万人泊、全体の約7.2%を占めた。 都道府県別の延べ宿泊者数は、東京都が最多の3436万人泊、2位から5位までは、北海道2496万人泊、大阪府1561万人泊、千葉県1472万人泊、静岡県1261万人泊。上位5都道府県で全国の約3割を占めた。外国人でみると、最多の東京都が720万人泊、2位の大阪府が万244人泊、3位の北海道が185万人泊。上位3都道府県で全国の5割超に達する。 外国人の国籍別の構成比は、韓国19.4%、台湾17.4%、アメリカ13.1%、中国9.8%、香港7.7%、上位5位までで約7割を占める。 ビジット・ジャパン・キャンペーン重点12市場の宿泊者数を都道府県別構成比でみると、韓国は、東京都(27%)、大阪府(14%)に続いて、福岡県(7%)と熊本県(7%)が上位に入ったのが目を引く。台湾は12市場の中で唯一トップシェアが東京都ではなく、北海道だった。欧米豪の各国では、東京都のシェアが高い傾向にある。 10〜12月分の結果は、延べ宿泊者数が7689万人泊で、外国人は全体の7.7%を占める592万人泊だった。
国土交通省は1日、観光部門内に「観光地域づくり相談窓口」を開設した。全国を10エリアに分け、相談員として観光地域振興課と観光資源課の職員を配置した。「観光地域づくりに関して、誰でも気軽に相談してほしい」と呼びかけている。 昨年3月に設置した「観光なんでも相談員」を発展させた窓口。内容に応じてアドバイスするほか、支援メニューなどを紹介する。農林水産省農村振興局や中小企業庁経営支援部など、国交省にとどまらず、他省庁にも“橋渡し”を行う。 首席相談員は、観光地域振興課の石川雄一・観光地域活動支援室長。次席相談員は、同課の武田一寧課長補佐、観光資源課の川島雄一郎課長補佐が務める。 連絡は、国交省の代表電話(TEL03・5253・8111)から、内線番号を伝えて担当者を呼び出す。エリア別の担当者、内線番号は次の通り(敬称略)。 ○北海道=真野(27・254)、渡邊(27・620) ○東北=岩淵(27・256)、前田(27・619) ○関東=塩崎(27・214)、竹本(27・621) ○北陸信越=小菅(27・213)、唯(27・618) ○中部=近藤(27・258)、神村(27・617) ○近畿=貴田(27・253)、前田(27・619) ○中国=寺西(27・259)、唯(27・618) ○四国=寺西(27・259)、水野(27・620) ○九州=武田(27・212)、神村(27・617) ○沖縄=辻畑(27・215)、水野(27・620)