観光庁の創設を盛り込んだ国土交通省設置法などの一部改正法案が4月25日、参院本会議で賛成多数で可決、成立し、観光庁の10月1日発足が正式決定した。観光行政が大きく舵を切る契機となったビジット・ジャパン・キャンペーン(VJC)の開始から5年、観光立国推進基本法の施行などを経て、観光業界の念願だった観光庁がいよいよ誕生する。 国交省設置法などの一部改正法案は、観光庁の設置のほか、陸海空の事故原因究明にあたる運輸安全委員会の設置、船員労働委員会の廃止などが主な内容。運輸安全委に関する規定が一部修正されたが、衆院を4月15日に通過。衆参両院ともに、自民、公明、民主などの賛成多数で可決された。 観光庁は、気象庁などと同じ国交省の外局として設置される。国交省設置法には、「観光庁長官」をトップに、「観光立国の実現に向けて、魅力ある観光地の形成、国際観光の振興その他の観光に関する事務行うことを任務とする」と定められた。 人員は現行の観光部門79人から、103人の体制に拡充される。部、課の名称や各業務は、政令として閣議決定が必要になるが、国交省では、長官以下、次長、審議官、参事官を置き、総務課、観光産業課、国際観光政策課、国際交流推進課のほか、観光地域振興部に観光地域振興課と観光資源課を設置する考え。 観光庁創設の狙いは特に次の3点だ。(1)観光立国の数値目標の実現に向けてリーダーシップを発揮、関係省庁への調整、働きかけを強化する(2)政府の窓口を明確化し、「住んでよし、訪れてよしの国づくり」の推進を国民に発信し、地方公共団体、民間の観光地づくりを強力に支援する(3)観光立国の取り組みを海外に発信し、外国政府との交渉を効果的に行う──。 本紙の取材に対し、国交省の本保芳明総合観光政策審議官は「期待にこたえられる観光庁にしなければならない。新しい組織ができるタイミングだからこそ、出てくる知恵や動きを大切にしたい。皆さまからたくさんの良い意見をいただいている。産業界の目から見て、また、国民の目から見て、いかに新しいことができるかが問われている」と語った。 観光関係団体会長連絡会議の議長を務める日本ツーリズム産業団体連合会の舩山龍二会長は「観光庁の設置に尽力された二階俊博先生、愛知和男先生をはじめとする関係議員、国交省、観光関係者の皆さまに感謝の意を表したい」と述べ、「観光庁は、日本のツーリズムの発展に飛躍的な成果をもたらす可能性を秘めている。我々ツーリズム産業も関連14団体が中心になって、より連携を深め、観光立国の実現に向けて総力を挙げて取り組みたい」とコメントした。 行革踏まえた運営を 衆参両委員会が付帯決議 衆参両院の国土交通委員会は、国交省設置法などの一部改正法案の可決に際して、それぞれ付帯決議を行った。観光庁について両委員会は、行政改革の動きの中で誕生する新たな庁として、効率的、効果的な施策の推進に留意するよう求めた。 参院の付帯決議から、観光庁に関する部分を抜き出すと次の通り。衆院の付帯決議は、参院の1つ目とほぼ同じ趣旨の内容になっている。 ▽観光庁は、行政改革の趣旨を踏まえ効率的な施策の推進および組織運営を行うこと ▽観光庁は、観光立国の早期実現に向け、内外の観光ニーズを適確に把握するためのマーケティング、専門性や経験を有する人材の民間からの積極的な登用に努めるほか、特に、外国人旅行者増大のボトルネックとされている交通サービス、旅行者の受入態勢、情報提供サービスについて、早急に具体的な改善措置を講ずること
農林水産省と文部科学省、総務省の3省は4月25日、全国の小学生が農山漁村で1週間程度の自然・集団宿泊体験を行う「子ども農山漁村交流プロジェクト」の全国推進協議会を発足、今年度の受け入れモデル地域50カ所を選んだ。3省は今後選定地域に対し、受け入れのためのソフト整備費用などを一部助成するほか、事業を通してプロジェクトの課題などを集約し、今後の取り組みに役立てたい考えだ。 今回選んだのは、今年度実施する同プロジェクトのモデル事業対象地域となる、「先導型受入モデル地域」14カ所と「体制整備型受入モデル地域」36カ所。 このうち先導型受入地域には、これまでにも体験旅行の受け入れ実績があり、一定規模以上の受け入れが可能な地域を選んだ。特に「周辺地域への波及効果が期待できるような地域」(農林水産省農村振興局)と位置付けた。一方、整備型地域は、すでに体験旅行や民泊などを実施しているものの、受け入れ可能な団体の規模や体験学習の担い手の位置付けなどについて、整備、強化の必要があると判断された地域。 受け入れ規模は、いずれも1学年100人程度を受け入れられることを目安としている。 先進地域には整備費用として50〜100万円、体制整備地域には200〜300万円を補助し、ソフト面での整備に利用してもらう。 体験学習を実施するモデル校も選ぶ。235校中現在171校が決まったが、「すでに新年度が始まっており、これから新たに参加希望校を探すのは難しい面もある」(農水省)。参加希望があれば、今後も継続して選定を行う。 プロジェクトは、5年後までに全国すべての公立小学校2万3千校、1学年あたりおよそ120万人が農山漁村での体験学習を経験できるようにするもの。今後全国500カ所に受け入れ地域を整備するなどの仕組みづくりを行う。初年度にあたる今年は、モデル地域、モデル校を中心に双方の課題や問題点を抽出。今後の拠点整備やプロジェクトの推進のための態勢作りに役立てる。 併せて4月28日から同プロジェクトの愛称を募集する。受付期間は5月9日まで。郵送、ファクス、事務局宛てメール、もしくはシンポジウムホームページ(http://www.ohrai.jp/kodomo/sympo08)で直接受け付ける。TEL03・3548・2718、ファクス03・3276・6771、専用メールアドレスはsympo08@ohrai.jp。 シンポジウムの参加者を募集 農山漁村シンポ プロジェクトの発足を記念し、子ども農山漁村交流プロジェクト全国推進協議会は5月19日、東京渋谷区の国立オリンピック記念青少年総合センター大ホールで記念シンポジウムを開く。 先進事例報告として、宿泊体験活動の紹介や沖縄県伊江村などの活動報告を行う。今回選定したモデル地域の紹介やキックオフ宣言も予定。このほか、同協議会の川勝平太会長が「子ども農山漁村交流プロジェクトを推進する意義」をテーマに講演する。 都道府県や市町村の担当者や受け入れ地域の担当者、学校関係者を含め、広く一般から参加者を募る。参加申し込みはシンポジウム事務局まで。
政府はこのほど、春の褒章、叙勲の受章者を発表した。本社関係の受章者は6氏だった。旅館業務精励では、女将2氏が黄綬褒章を受章した。 受章者は次の通り(敬称略、順不同)。 【旭日双光章】 ◎観光事業功労 近浪廣(74)=日本コンベンションサービス取締役会長・日本コングレンス・コンベンション・ビューロー常任幹事 ◎生活衛生功労 坂井勉(72)=グリーンホテル喜泉・全国旅館生活衛生同業組合連合会副会長・富山県ホテル・旅館生活衛生同業組合理事長、小山榮一郎(74)=丸小ホテル・熊本県旅館生活衛生同業組合理事長・全国旅館生活衛生同業組合連合会常務理事 【黄綬褒章】 ◎業務精励 池田洋子(62)=池仲商事(旅館いけだ)取締役・女将、堀口美知子(63)=ホテル山月取締役・女将、梅崎正利(64)=春日ホテル総料理長
観光庁の発足に向けて、観光政策などについて産業界や有識者から意見を聞く国土交通省の「観光に関する懇談会」(座長=生田正治・商船三井相談役)の第2回会合が4月25日に開かれた。テーマは国際観光の振興、観光地づくり。メンバーからは、外客受け入れ態勢の充実、観光産業や地域づくりを担う人材育成の重要性などで施策の強化を求める声が出た。 国際観光の振興については、民間出身の文化庁長官、青木保氏が「21世紀のアジアの中で日本に求められているのは、徹底したクオリティの追求。観光もそうだ。例えば、本格的な長期滞在のリゾートが必要なのではないか」と指摘した。 また、外客受け入れの現状を踏まえ、由布院玉の湯社長の桑野和泉氏は「温泉地にいても、アジアの旅行者の急増などインバウンドの伸びを強く感じる。しかし、地域全体の受け入れ態勢が整っていない中で、リピーターになってもらえるか、不安だ。急病人が出た場合の医療機関の受け入れなどを含め、早急に対応が必要だ」と訴えた。 観光地づくりでは、観光にかかわる学校教育、人材育成の重要性を指摘する意見が相次いだ。景観や道路など環境整備に携わる関係者にも観光振興に対する共通認識が大切だとする声もあった。 その中で、金沢市長の山出保氏は「その土地の文化に触れたい、そうして人々が街を訪れるようになるのであって、金沢は『観光都市が目標では困る、それは結果でなければ』と言ってきた。極端な商業資本が入ると、大切なものが失われる心配がある。観光にかかわる人たちには、自制の論理がないといけない。広い意味での教育の充実が期待される」と語った。 前回の会合では「観光省」の提言も 観光に関する懇談会は、非公開で進める予定だったが、第2回会合から公開になった。生田座長は、第2回会合の冒頭、前回の内容として、「観光庁を作るなら、いずれは『観光省』にするくらいの意気込みとビジョンをしっかりと持つべきだ」との意見が、民間のメンバーから出たことを紹介した。 同時に、“タテ割り行政”をいましめる意見として、「観光庁が省庁間のヨコの連携を十分にとることができず、本来目的とする総合力を発揮できなければ、新しい庁ができてもまったく意味がない」などの指摘があったことも付け加えた。
国土交通省は4月24日、東京のグランドプリンスホテル赤坂で、観光関係功労者大臣表彰式を行った。表彰式では冬柴鐵三国交相に代わって谷公一政務官が、計36人の受賞者に表彰状を授与した。谷政務官は「きめ細やかなもてなしの心こそ世界に誇る日本ブランドだ。観光立国の実現には受賞者の努力が不可欠。今後も観光振興に尽くして欲しい」と祝辞を述べた。 受賞者の内訳は旅館業21人、ホテル業10人、旅行業3人、観光レストラン1人、その他1人。 旅館業振興で表彰を受けた住友武秀・偕楽園観光社長=写真右=は「今後も精進するとともに後進の育成にも努力したい」と意欲をみせた。また、旅館(女将)業務精励で受賞した近兼早智子・琴平グランドホテル女将は「従業員に助けられ、主人の後ろを付いてきての受賞で、皆さまに感謝しています」と喜びを語った。 表彰式後は、観光関係12団体が主催する祝賀パーティーも行われ、中村徹・日本観光協会会長を始め、平井たくや副大臣、谷政務官、泉信也国家公安委員長、日本観光旅館連盟の佐久間進会長、国際観光旅館連盟の佐藤義正会長ら関係者が多数出席した。 中村会長は「観光業は人と人とのふれあい、平和をもたらす産業で、それを支えているのが受賞者だ。業界発展のために次世代を育てて欲しい」とあいさつした。佐久間会長は祝辞を述べ、乾杯の音頭をとった。